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“俺は俺の歌を歌ってるんだ” 柴山一幸、魂が叫んだツアーファイナル-OTOTOYライヴレポ

“俺は俺の歌を歌ってるんだ” 柴山一幸、魂が叫んだツアーファイナル-OTOTOYライヴレポ

11月25日(金)東京・青山の月見ル君想フにて、柴山一幸の〈Fly Fly Fly Release Tour〉ファイナル公演が行われた。

前作から1年半ぶり、6作目となるアルバム『Fly Fly Fly』を引っ提げて名古屋、高知、広島、神戸で行われてきた今回のツアー。この日は名古屋公演に続きバンドセットで行われ、ゲストを迎えて全22曲。感情のすべてをむき出しにしたライヴは3時間近くに及んだ。

オープニングは3ピースバンドThe Uranus(八橋義幸、岩崎なおみ、西野真純)のライヴからスタート。月見ルには初めての出演とのことだが、八橋の歪んだギターを核として奏でられるオルタナティブ・サウンドは大きな月をバックにすることで幻想的な魅力を発揮して、これ以上ない会場とのマッチングの良さを感じさせた。

柴山一幸のライヴは、まず柴山と平田崇(Gt)と森芳樹(Per)の3人によるアンプラグドでアルバムの一曲目「Thank you for me」からゆったりと始まり、残りのバンドメンバー杉浦琢雄(Key) 、加藤ケンタ(Gt)、若山隆行(B)、矢部浩志(Dr)を呼び込んで「uSOTSUKI」から改めてバンドセットで始まった。総勢7人の大編成は、柴山のボーカルの抑揚に合わせて寄り添い、一部の隙も無く息がピッタリ。粘っこいファンク・チューン「見果てた男」、『Fly Fly Fly』からの軽快なポップソング「サーモスタット」等、柴山の輪郭のクッキリしたメロディ、ヴォーカルが真ん中にある分、楽器の押し引きが絶妙でとても気持ち良い。「俺の中の大ヒット曲!」と叫んでからギターがソリッドなイントロを鳴らすとアップテンポな「オマモリ」をハンドマイクで熱唱、ヘヴィな16ビートで踊らせた「ペットサウンド」へと続き観客も手拍子で盛り上がる。ネガティヴを芸にすれば、と言われたけど元々ただのネガティヴだから芸にならない、といった気取らないユーモアたっぷりのMCを挟みながらスルっと始まったメロウな「Welcome!Welcome!」、続く「butterfly」「一つの幸せ」の3曲は情感たっぷりに歌われ、ステージ後方から放たれる放射状の照明も相まって、ノスタルジックな気分にさせられた。

中盤では、ゲストにキンモクセイの伊藤俊吾を迎えてしばしのトークから、父親が亡くしたことからできたという曲「みんなのそら」を伊藤が歌う。歌い終わるとこの日が誕生日だという伊藤にバースデーケーキが贈られ、会場でハッピーバースデーを合唱する場面も。続いて柴山も同じく父親について歌った曲として「たとえばこんなレクイエム」を伊藤と共に披露した。アルバムの中でも一際印象に残るメロディが、伊藤のハーモニーが加わることでさらに輝きを増していた。

後半はたたみかけるように80年代の歌謡ロック的なテイストも感じさせる激しくもキャッチーな「Now is The Time」から、「That’s the way」へ。3776の井出ちよのとプロデューサー石田彰をフィーチャーしたこの曲がディレイの効いたスペーシーなギターリフで始まり柴山が歌いだすと、井出ちよの代わりに(?)キーボードの杉浦が可愛らしくコーラスでかけあいを聴かせて、観客は笑いながらも大盛り上がり。メンバー紹介を挟みながら、ゆっくり体を揺さぶる濃厚なグルーヴをループさせて会場を一体化させた。

アンコールの声に応えると、缶ビール片手にステージへ上がった柴山は「これからどうしたらいいかわからなくて」最近ずっと考えていると心情を吐露。15歳の自分はジョン・レノンになりたかった、でもなれなかった。47歳の今も歌っている自分には15歳の自分に悪いという気持ちがある、でもやめられない。メジャーに対するコンプレックスもある…と赤裸々に胸の内を語り、「みんなの柴山一幸のイメージは中堅アーティストでポール・マッカートニー的な曲を作ってます、みたいな……違うんだよ! 俺は俺の歌を歌ってるんだよ!」とマイクを外して生の声で叫んだ。静まり返る観客たち。「だから、違うユニットを組んでニコ動とかに投稿してみようかなとか思って。俺はピコ太郎になりたい」の一言には思わず脱力したものの、自分の作品を届けられないもどかしさ、歯がゆさを感じさせる魂の叫びには、「Natural Man」を聴きながら深く思いを巡らせるしかなかった。歌い終わると「15の俺、本当にごめん」と涙を拭いうずくまる柴山に拍手が贈られた。「Fly Fly Fly」を歌いステージを後にするも、Wアンコールの声に応え最後にバンドで「万能細胞」を披露。ネガティヴな感情を振り切るように弾けて、2階席にまで駆け上がり盛り上げる柴山。感情の全てを音楽の表現に注ぎこんだかのようなこの日のライヴ。音楽の魅力に憑りつかれた人間の輝きもやり切れなさも両方感じさせた、間違いなく記憶に残る一夜だった。(岡本)

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