体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

焚吐 × ササノマリイ対談 ボカロを経由して見えた「歌う」理由

焚吐 × ササノマリイ対談 ボカロを経由して見えた「歌う」理由

2015年12月TVアニメ『ヤング ブラック・ジャック』のEDテーマ「オールカテゴライズ」でデビューを果たした19歳の若きシンガーソングライター・焚吐さん。

そんな彼が10月26日にリリースした新作『トーキョーカオス e.p.』には、カラスヤサボウさん、NeruさんといったボカロPが編曲に携わっており、攻撃的で奔放な楽曲に仕上げられている。

なかでも、収録楽曲である「クライマックス」の編曲を担当したササノマリイさんは、DAOKOさんやぼくのりりっくのぼうよみさん、電波少女のハシシさんなど、破竹の勢いでシーンを開拓しているアーティストらにカバーされ、ニコラップシーンで一世を風靡した楽曲「戯言スピーカー」のねこぼーろとして活躍していた経歴を持つ。

また、11月30日にはTVアニメ『夏目友人帳 伍』のOPテーマにもなっているシングル『タカラバコ』をリリースするなど、その勢いは止まらない。

今回は、焚吐さん自らが編曲者として指名し、初のコラボを果たした2人による対談を実施。

出会いのきっかけとなったVOCALOID(ボカロ)シーンの現状や、アーティストとして人前に立つことの役割。そして歌うことの意味を問うた。

文:吉良和哉 取材:米村智水 写真:稲垣謙一 編集:ふじきりょうすけ

ボカロが結んだ焚吐とササノマリイ

──焚吐さんはいつからササノマリイさんをご存知だったのですか?

焚吐 ササノさんがねこぼーろ名義で2014年に出していた「オノマトペメガネ」を聞いて、そこから過去の楽曲を辿っていたんです。

特に「自傷無色」という曲はすごく詩的で。ちょうど命や人の存在意義みたいのについて考えていた時期に聞いたので、救われました。

【ニコニコ動画】【初音ミク】自傷無色【オリジナル曲/MV】

ササノマリイ 僕は人を気持ちよくさせるような、できる限り綺麗な言葉を歌詞にしたいんです。歌詞を書くのはすごく悩みます。だけど「自傷無色」だけは、最初の1行の歌詞を書いてから一気に書ききっちゃった。

自分のなかでもストレートな言葉を使った曲だから「重すぎないかな」と、いろんな反応を承知の上で出した曲だったんですけど、いい言葉をもらえて良かった。

焚吐 「自分が死んでも世界中の誰も悲しまないけど、死んだことが知られないなら損してるんだ」という歌詞の世界に惹かれていました。

──今回焚吐さんがリリースされた『トーキョーカオス e.p.』で編曲を担当されてるいるのは、すべてボカロを経由されてきた方々ですよね。

焚吐 「週間ボカロランキング※」を追ってるくらいボカロ音楽が好きで、アーティストとしても影響を受けています。自分がつくる音楽にも、ボカロ楽曲が持ってる二次元的な要素を融合していきたい。

だからボカロPの方や、ボカロ音楽を経由してきた方々に編曲を頼むことにしてるんです。

※「週間ボカロランキング」……2007年よりスタートした、ニコニコ動画内のVOCALOIDに関する動画の再生数とマイリスト数、コメント数をポイント換算した集計結果をまとめたランキング動画。正確にはUTAUも含めた「週刊VOCALOIDとUTAUランキング」。

曲の複雑さが生成するボカロらしさ

DSC_3458
ササノマリイ 当初は「初音ミクが動いてるのがいいんでしょ」みたいなオタクの音楽だという偏見もあったボカロですけど、音楽に与えた影響は大きいですよね。

ボカロという枠組みの中にいろんなジャンルの曲があるから、一括りにされちゃう反面、聴いたことないジャンルを知るきっかけにもなってる。

バラードに対して「この曲はボカロなのにゆっくりだ」みたいな(笑)。バラードとメタルを同軸で比較するようなシーンってほかに無いですよね。

焚吐 メタルでもレゲエでも、ダンスミュージックでも良いものは良い。特定のジャンルだからダメだなんて無いじゃないですか。

ボカロである前に音楽だから「ボカロはこうだ」みたいな言い方を見ると、もっと音楽として素直に聴いてもいいんじゃないかなって思います。

ササノマリイ 人が歌っても「ボカロっぽい」って言われる曲がありますよね。僕もそう思うときはあるんですけど、確定的事項が自分の中でもまだわからなくて。

焚吐 僕の曲もよく「ボカロっぽい」と言われるんです。ただ、人によってボカロの見方はまったく変わりますね。

焚吐 「ボカロらしさ」は声の魅力というよりも曲の複雑さ。人が歌うことを前提としてないからメロディー展開が突飛なところじゃないですか?

それに歌詞の世界観も、人間が歌ったらもうものすごいディスの嵐に巻き込まれるような……。失恋ソングはポップスにもあるんですけど、ボカロの場合だと、相手を振ってきれいさっぱりになった曲とか、人間が歌うとものすごい反感を買うことも多くて。

【ニコニコ動画】【初音ミク】ゴーストルール【オリジナル曲】
焚吐 2016年には「ゴーストルール」という曲が爆発的なヒットになって。曲をつくったDECO*27さんは「初音ミクに歌わせることに意味がある」と言っていました。ボカロの受け入れられ方も変化してきていて、歌う意味がある、どんどん身体性を持ち出している現状は面白いです。

1 2 3次のページ
KAI-YOU.netの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。