建築会社が倒産!? リスクに備える「住宅完成保証制度」って何?

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建築会社が倒産!? リスクに備える「住宅完成保証制度」って何?

憧れの注文住宅。間取りを決めて設備を選び、手付金も払っていざ契約、着工となった後に、「依頼した建築会社が倒産してしまった!」「工事がストップして手付金が戻ってこない!」となったらどうしますか? そうした事態が生じる可能性はけしてゼロではありません。最悪の事態を避けるために、“家づくりの保険”とも言われる「住宅完成保証制度」という仕組みがあることを知っておきましょう。

万一に備える「住宅完成保証制度」で安心を手に入れる

「住宅完成保証制度」とは、注文住宅の建築中に、施工会社の倒産等で工事が継続できなくなった場合に、建て主が最小限の追加負担で住宅を完成できるよう保証する制度のことです。

建築会社が倒産(破産して事業停止)すると、次の悪夢のような事態が生じます。

(1)着手金など支払った金額が返金されない

支払済みの金額が出来高(それまでに掛かった工事費)より多くても、返金されない。支払額が出来高よりも少ない場合は、破産管財人から差額を請求されることも

(2)工事を引き継ぐ会社がなかなか見つからない

別の施工会社が引き継いでも、工事の状況把握をするだけでかなり労力がかかるので、引き受けてくれる会社を見つけるのに苦労する

(3)引き継いだ工事で割り増し工事費が発生する

建築会社や協力会社が現場から撤収しているので、新たに生じる足場費用、建設機械の再契約費用などが追加で生じる。例えば電気配線工事等を別会社が引き継ぐ場合、配線のチェックに手間がかかるなどして、途中まで工事が進んでいてもほとんどの事項で二度手間になり、ゼロから工事するのと同じような費用がかかることも

住宅完成保証制度では、こうした損害に対して、あらかじめ決められた一定額が保証されます。

この制度を提供しているのは、「住宅保証機構 株式会社」(旧・財団法人住宅保証機構)をはじめ、「株式会社 住宅あんしん保証」「株式会社ハウス・デポ・ジャパン(ハウス・デポ)」「株式会社GIR」など数社。

また、リクルート住まいカンパニーでも、2016年5月から「スーモカウンター 完成あんしん保証」のサービス提供を開始しました。

この制度に詳しい住宅保証機構の前田和孝さん、スーモカウンター千葉店の馬場綾乃さんに話を伺いました。

仕組みや保証内容は保証会社によって異なります。

「保証タイプは大きく分けて『保険タイプ』と『エスクロータイプ』の2種類があります」と馬場さん。

「保険タイプ」は支払い済み工事費と出来高の差額、割り増し工事費など損害の一部を補填(ほてん)するもの。

「エスクロー(第三者預託)タイプ」は、建築資金を保証会社が預かり、工事費を出来高に応じて建築会社に支払うことで損害を最小限に留める仕組みになっています。

例として3社の保証内容を簡単に紹介します。

【図1】保証内容の詳細は各社に確認を(図表内容は取材により筆者作成)

【図1】保証内容の詳細は各社に確認を(図表内容は取材により筆者作成)

具体的にいくら保証されるのか、住宅保証機構の「住宅完成保証制度」を例に見てみましょう。

Aタイプでは、追加で発生する工事費分が保証対象となります。

「工事がストップした時点で、それまでの工事の出来高を割り出します。仮に工事請負金額2000万円の物件で400万円分まで工事が終わっていたとしたら、残りの工事費は1600万円。しかし別の建築会社が引き継ぐ場合、1600万円では完成させられないことがほとんどです。発生した追加費用を保証対象としますが、工事請負金額2000万円の2割を上限としているので、400万円までを保証金として支払います」(前田さん)

Bタイプでは、Aタイプの保証に加えて着手金の損害も対象となります。

「仮に手付けで400万円支払ったとして、出来高300万円までしか工事が進んでいなかった場合、不足分の100万円は、倒産企業から返金されることはまずありません。その返ってこない分を保証しています(ただし工事請負金額の2割が上限)」(前田さん)

保証制度を利用したい場合、どうすればいいの?

住宅完成保証制度を利用するには、依頼する建築会社に制度を使いたいと伝えて手続きをしてもらえばいいのですが、この制度は義務ではないので加入していない建築会社も多いようです。制度に加入しているかどうかは、直接工事を依頼する会社に聞くのが一番分かりやすいですが、各保証会社のHPで検索することもできます。

「建築会社にとっても、審査を受けたり参加金を預託したりと手間がかかりハードルが高くなるので、利用する会社数が飛躍的に増えないのかもしれません。審査が通らない会社もありますし、『保証制度を伝えることで“倒産の心配があるのか”とお客様に余計な不安を抱かせてしまうかも』という懸念をおもちの会社もあります」と前田さん。

制度がスタートした1999年から既に17年もたっているのに、住宅完成保証制度があまり認知されていないのは、そうした消極的な理由があるからかもしれません。

「でも逆に、『審査にクリアしたちゃんとした会社であること、万一の保証制度を整えていること』を強みとして営業ツールと考えていただいている会社もあり、さまざまです」とのこと。

建て主が要望すれば加入してくれる会社がなかにはあるかもしれません。

利用時の保証料(※)は建築会社が保証会社に支払うので、基本的に建て主の費用負担はありませんが、「会社によっては、工事費に含まれている場合もあるので、契約時に見積書を確認してみてください」(前田さん)

※例えば住宅保証機構の「Aタイプ」(工事請負金額が2000万円の場合)では保証料は4万3736円。

スーモカウンターでは「こちらで紹介する建築会社はすべて制度の対象となっているので、お客様は保証料を支払う必要はありません」と馬場さん。

倒産しそうな会社を見分ける方法ってあるの?

民間信用調査機構である東京商工リサーチの調査「全国企業倒産状況」によると、昨年2015年の建設業全体の倒産件数は1686件。前年比14.19%減で、ここ10年間のピークだった2008年を境に7年連続の減少となっています。これは業界全体の数字なので、注文住宅の建築会社に限定すれば、もっと少ない数となります。

建設業の倒産数が減少し、注文住宅の建設会社で目立った倒産の話は以前ほど聞かなくなったとはいえ、依頼した会社が倒産してしまう可能性はゼロではありません。

では、「倒産しそうな会社を見極める方法」はあるのでしょうか。

何社もの建築会社を顧客に持つ前田さんですが、そんな専門家から見ても、「倒産しそうな会社の確実な見極め方は残念ながらありません」とのこと。

「上場企業なら決算書類の公開が義務づけられているので誰でも確認できますが、建築会社で上場している企業は一部なので、一般的に経営状況を把握するのは難しいですし、年間施工件数の多寡で会社の良し悪しを判断することもできません。安定経営の会社でも、リフォームに力を入れていて新築の施工件数が少ない場合もありますし、施工能力が高いから経営力も高いかというと別問題で、いい家を建てていても倒産している会社もあります」と前田さん。

建築会社を選ぶ際に、担当営業の対応や施工現場の様子を見て会社の良し悪しを判断する人は少なくないかもしれませんが、その方法で倒産リスクのある会社かどうかまで判断することはできません。

「社員が優秀でも、経営者に問題がある会社もあります。『出社したら勤務先が倒産していた』という話も見聞きします」(前田さん)

過去には、関連会社による会社乗っ取り騒動で経営者が行方不明になって、倒産とは関係なく工事が止まったままという、迷惑な事例もあったそうです。

それでも、「こんな会社は用心したほうがいいというポイント」はないか聞いてみたところ、「多額の着手金を要求する会社は注意すべきだと思います」と前田さん。

過去にあった例では、「手付けで1000万円入れてもらえれば、工事費を2割安くします」と最初に高額な費用を請求し、建て主から着手金を受け取った直後に経営者が行方をくらませるという事件があったそうです。

馬場さんも、「一番大きな被害額としては、工事費の約7割の6000万円を支払った後で建築会社が倒産したという酷いケースがありました。工事費の支払いは3回に分けて支払うのが基本なので、言われるままに支払わないようにしてください」と注意を呼びかけています。

審査を通った会社でも倒産!? 完成保証制度で安心の家づくりを

「当社では、建築会社の財務状況や着工件数などで経営状態を詳細に把握し、信用調査をした上で問題がないと判断した会社にこの制度に加入していただいていますが、そうした一見安心できる会社でも、『ある日突然、倒産』という厳しい現実もあるのです」(前田さん)

例えば、金融機関の判断で突然融資がストップしたため倒産してしまうケースや、関連会社の業績悪化で連鎖倒産してしまうケース。規模の小さい会社などでは、代表者の死亡や病気療養のために工事継続や経営の維持が難しくなる例も考えられるそうです。

倒産リスクの見極めが無理な上に、一定の信用がある会社でも倒産しない可能性はゼロではないのが実状です。自宅の新築という、人生で一番大きな買い物をするのだから、万一の場合のリスクを回避する手段として、住宅完成保証制度の利用を考えてみましょう。

「本来ならこの制度を利用せずに無事に家が完成するのがベストなのですが、『この会社なら絶対大丈夫』とは誰にも言えません。リスクをなるべく減らして、家づくりを進めてほしいですね」と最後に前田さんは語ってくれました。●取材協力

・住宅保証機構「住宅完成保証制度

・スーモカウンター注文住宅「完成あんしん保証」
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