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難治性逆流性食道炎に対する新しい内視鏡治療「ARMS」

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 食生活の欧米化などに伴い急増しているのが、胃食道逆流症だ。胃から胃酸が逆流するために食道が炎症を起こし、胸やけやゲップ、声嗄れや喉の違和感などの症状がある。ときには、胸が締め付けられ、狭心症に似た胸や背中の痛みが起こることもある。

 胃食道逆流症は、食道に違和感や症状はあるものの、その食道にびらんがない症例と、びらんがある症例の両方を含む病名だ。ただし、特にびらんがあるものが逆流性食道炎と称される。

 昭和大学江東豊洲病院消化器センターの井上晴洋センター長に話を聞いた。

「胃は胃酸や消化酵素を含んだ胃液を出して、食物を消化しています。このため、胃は強い酸に対抗できる特別な粘膜で保護されています。胃と食道の間のつなぎ目(噴門部)には、下部食道括約筋という筋肉があり、胃液や食物が食道に逆流しない仕組みになっています。逆流性食道炎は、下部食道括約筋が緩んだり、胃酸が増えすぎることで炎症が起こります」

 胃食道逆流症は、脂肪やたんぱく質の摂り過ぎ、肥満、加齢、腰が曲がるなど姿勢の問題が主な原因で起こる。近年、胃にピロリ菌を持っている人は逆流性食道炎が少ないことがわかってきた。ピロリ菌除去を行なう人が増えていることも、胃食道逆流症増加に関連があるのでは、と指摘されている。これらの原因により、現在は中高年以上にとどまらず、若い人にも発症例が増えている。

 治療の第一選択は、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーやPPI(プロトンポンプ阻害剤)での薬物治療だ。薬物の服用で数日程度経過すると症状は減少する。これと並行して、食生活の見直しやダイエットなど生活習慣の改善も行なうことで症状が緩和されていく。

 しかし、薬物治療はあくまでも対症療法で、薬をある程度飲み続ける必要がある。また、一時的に完治しても、再発率が高い。薬を服用しても食後の胸やけやゲップが頻繁に起こり、横になったときに嘔吐や吐き気、胸や喉の痛みなどで日常生活にも支障が出るようになった場合は、根治治療として手術を行なう。

 現在は主として、腹部の小さな孔からアプローチする腹腔鏡下噴門形成術が行なわれている。より低侵襲な治療として井上センター長が開発したのが、経口内視鏡(胃カメラ)を使った噴門粘膜切除術(ARMS)だ。

「経口内視鏡で患部周辺の食道をグルリと1周近く切開し、余剰な粘膜部分を切除します。粘膜切除後の噴門部の形成は、自然の治癒過程により起こります。異物(治療器具)を入れたりはしないので、体にやさしい治療といえます。形成した噴門部の高度な狭窄により、難渋した方はいません」(井上センター長)

 現在までの治療数は66例で、治療後10年経過している症例もあり、好成績を収めている。体に傷をつけずに治療が受けられるのも、患者の負担を減らしている要因だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年12月2日号

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