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オバマとトランプ 握手に見る力関係と腹の内

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 経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回はアメリカのオバマ大統領とトランプ次期大統領の握手シーンを分析。

 * * *
 アメリカのオバマ大統領が、任期最後の恩赦をホワイトハウスで行った。恩赦されたのは2羽の七面鳥。アメリカでは感謝祭に七面鳥を食べる習慣があり、この恩赦は大統領が毎年行う恒例行事だそう。

 恩赦を受け、台の上で立ち上ろうとする七面鳥にオバマ大統領は小さくガッツポーズ。翼を大きく広げると、自分も両手で羽ばたくような真似をして「自由だ」と笑った。七面鳥の気持ちを代弁したと言われているが、色々なしがらみから離れて自由を満喫したいと思ったのは、オバマ大統領自身なのかも。

 来年1月で退任するオバマ大統領だが、掲げた理想のわりに実現能力が乏しかったなど、政治的手腕への評価は厳しいらしい。国民の熱狂的な支持を得て大統領となって8年。期待が大きかっただけに、裏切られた感も半端ないのだろう。颯爽と現れた庶民派大統領も、今では白髪が目立ち、疲れた顔に…。勢いがあり歯切れのよかった演説も、今ではほとんど聞かれなくなった。

 そこに時期大統領として、批判合戦をした共和党のドナルド・トランプ氏が登場。オバマ大統領の影はますます薄くなるばかりだ。

 トランプ氏勝利の翌日、オバマ大統領は「トランプ氏の成功を応援する」と落ち着いた声で静かにスピーチした。だけど、トランプ氏が決断力やリーダーシップを発揮し大統領として成功していけば、オバマ氏の大統領としての歴史的評価はさらに下がることになるだろう。

 さて、トランプ氏がホワイトハウスの大統領執務室で、大統領と会見した映像は至る所で流された。トランプ氏の行儀の良さや、互いに誉め合い、和やかに、にこやかに握手している様子がクローズアップされたが、それはあくまで表向きのこと。

 あの会見でオバマ大統領とトランプ氏の間に起きていたのは、どちらが優位に立つかという主導権争い、力関係の勝負だ。それが顕著に表れていたのが握手の仕方。

 互いに指を広げ右手を差し出した2人。まっすぐ差し出したと思ったその瞬間、トランプ氏の手の甲がわずかに上を向いた。すると、それを瞬時に捉えたのか、オバマ大統領はグッと奥歯を噛みしめると、差し出した右手の親指をさらに立てた。

 相手より優位に立ちたい、服従させたいという時は、手の甲を上に向けた握手が効果的だ。特に初対面の相手をコントロールしたい場合は、握手の仕方が相手を心理的にねじ伏せるきっかけになる。逆に、手の平を上に向け、下から相手の手を持ち上げるように握手をしてしまうと、相手に主導権を握られてしまう。

 不動産王として成功を収め、次期大統領に上り詰めたトランプ氏にとって、手の甲を上に向けた威圧的な握手が習慣なのだろう。しかし相手は現職大統領。そう簡単に主導権を与えるはずがない。

 上から手をかぶせるように握手しようとするトランプ氏に、オバマ大統領は立てた親指を相手の甲に深くかぶせ、力を入れて握手した。相手より優位に立とうとする2人の握手は、力がぶつかり合い、互いの手の平がほぼ縦になる“対等な握手”の形になった。

 だが次の瞬間、オバマ大統領はその手にギュッと力を込め、トランプ氏の手を振ったのだ。握られているトランプ氏の手の甲が、少しずつ白くなっていく。知り合って間もないうちから、相手を支配しておこうという気持ちが働くと、人は握った手に力を入れるという。

 協力していこうと固く手を握り合った…と思いたいところだが、残念ながらそれは違う。その瞬間、両者は目を合わせず、互いに歯をくいしばっていたのだから、好意的な協力関係が土台にないのが見てとれた。

 まずは握手で心理的優位に立ったが、会見へのマイナス感情やストレスが大きかったのも大統領の方だ。握手している間中、トランプ氏の左手はリラックス。だがオバマ大統領の左手には力が入り、指がしっかり開かれていた。歯をくいしばって、強い苦しみや辛い感情に耐えていると、身体の他の部分にも力が入るもの。大統領として自分の感情を抑えつけていたのだろう。

 さて、とりあえず主導権を握ったものの、退任は間近。その先までは力が及ばないし、信用できない、というところなのだろう。

 最後の外遊先となったリマのアジア太平洋経済協力会議(APEC)。その記者会見で大統領は、トランプ氏の選挙公約への憤りや不満からか唇を噛むと、間をあけ、言葉を選ぶように公約が実現されるかどうかはわからない旨を発言した。

 唇を噛み、間をあけることで、次に言おうとしている言葉が重要であることを、見ている者に印象付けた。そして眉間にしわを寄せると、さらに声を低めて注意を引きつけ、「トランプ氏が現実に直面すれば、多くの問題に対し適応を迫られると確信している」と、トランプ氏をけん制するようなメッセージを述べた。

 だが、破天荒な次期大統領は、もしかすると多くの問題を解決に導くかもしれない。そんな期待と不安が入り混じった気持ちが、交錯したのだろう。大統領は右の耳たぶを触った。これから口にすることへのマイナス感情を、柔らかい耳たぶを触って和らげたのだ。

 いつもは身体を揺らすことなくまっすぐ立ち、冷静と落ち着きをアピールする大統領が、右へ左へ身体の重心をずらして肩を揺らしながら、対外政策や安全保障、雇用など、問題が簡単で単純であったなら、これまでの大統領にもできていたはずと発言し、演台に右ひじをついたのだ。

 そこには、これまでの大統領同様、自分も問題解決できなかった、という本音が垣間見えていた。だけど、そんな本音を露わにすることなく演台に右ひじをつくことでガードし、大統領としてのプライドも支えたのだろう。

 退任後も、トランプ氏の政策が米国の民主主義から外れれば、異議を唱えていくと述べたオバマ大統領。果たして、「自由だ」と手を羽ばたかせて、大声で叫べる日はいつになるのだろうか。

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