ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

アクセルとブレーキの踏み間違い 事故回避の機能開発が必要

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 高齢ドライバーによる事故が増えている。運転免許の自主返納を促すなど、様々な取り組みが進んでいるが、果たして年齢による杓子定規な制度を定めるだけで事故防止に繋がるのか。高齢者の行動体系を研究する高知大学医学部精神科の上村直人・講師はこう指摘する。

「認知症も原因によって、自分のいる場所がわからなくなる症状が出るものとそうでないものによって違いがあり、進行度によっても差が大きい。それを一括りにして運転能力の判断基準に当てはめるのは、有効とはいえません」

 自動車評論家の国沢光宏氏も検査によるスクリーニングの有効性に疑問を呈す。それにより、「認知症でなければ運転しても大丈夫」という理解になりかねず、むしろ危険な状況を生むリスクがあるからだ。同氏は高齢者の事故は2つに大別することができると話す。

「1つ目は認知症によるもの、2つ目は認知症ではないが年をとることで反射神経や視力などの認知機能が衰えている場合に起こるものです。1つ目の認知症のケースは、免許返納をしてもリスクは残ります。なぜなら認知症が重度に進んでいた場合、免許を返納しているということ事態を忘れてしまう可能性があるからです」

 この問題には、解決法があると国沢氏は語る。

「車の鍵を解除するのに暗証番号を入力しなければ開かない仕組みにすれば良いのです。現在出回っている車にはこの仕組みが施されていませんが、技術開発にお金がかかるようなものではない。国交省や警察庁が真剣に取り組めば、事態は改善するはずだ」

 2つ目のケースでも、免許返納とは違う事故防止アプローチがあると国沢氏は話す。

「認知症でなくとも運転の能力が衰え始めているようなドライバーに多いのはアクセルとブレーキの踏み間違い。これを事故に至らせないようにする車の機能の開発を進めるべきなのです」

 交通事故総合分析センターによると、2013年度の「踏み間違い」による事故は全国で6402件あったと推計している。1日17件のペースで起きているということだ。

 11月12日に東京・立川市の国立病院機構災害医療センター敷地内の駐車場で起きた事故も、そうしたケースの一つと疑われている。この事故では、83歳の女性がアクセルとブレーキを踏み間違えたと思われ、30代男女2人が死亡した。

「前進方向の踏み間違いはすでに各自動車メーカーの最新車種では自動ブレーキが搭載され、かなりの部分を防ぐことができます。アクセルを踏み込んでも急発進はしません。バック方向の踏み間違いについてはメーカーが二の足を踏んできましたが、今月発売されたスバルのインプレッサには『踏み込んでもノロノロにしかバックしない機能』が標準装備された。

 この2つが標準装備されれば死亡事故は大幅に減る可能性がある。国は、この2つを標準装備した車を高齢者の安全装備のセットにして、免許更新の条件にすべきです」(国沢氏)

 前述の横浜市で起きた軽トラック事故では、はじめに別の乗用車に衝突し、そのはずみで歩道に突っ込んでいる。自動ブレーキがあれば追突前に緊急停止することによって被害を最小化できた可能性がある。元個人タクシー運転手で25年間無事故無違反だった高水保三氏(66)も同意する。

「いまは高級で比較的大型の車にしか自動ブレーキが搭載されていない。高齢者がチョイ乗りする軽自動車に搭載されるようになれば、やむにやまれぬ事情で運転しているシルバードライバーにとって非常にありがたい」

 問題解決には様々なアプローチがあるはずだ。シルバードライバー当事者の本音にも耳を傾ける。それもまた不幸な事故を減らす上で、必要なことではないか。

※週刊ポスト2016年12月2日号

【関連記事】
老母の家が認知症でゴミ屋敷化 子が問題解決までを綴った本
発症まで約20年のアルツハイマー型認知症 40代から予防必要
76歳認知症患者の運転事故 家族含め3億円超の損害賠償提訴

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP