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井沢元彦氏 日本で水を出しっぱなしにした中国人愛国者へ

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 中国人による反日行動には、どのように対処したらよいのか。作家・井沢元彦氏による週刊ポストの連載「逆説の日本史」より、9月に中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で発覚した、日本のホテルでの水出しっぱなし事件を例に、中国人愛国者たちにどう応じるべきかをお届けする。

 * * *
 中国女子卓球界のかつての大スターであり、シドニー、アテネ、北京オリンピックの金メダリストでもある王楠(ワンナン)元選手の夫で不動産王の郭斌(グオピン)という人物が、満州事変(奉天〈現在の瀋陽〉北方の柳条湖で1931年9月18日に起きた鉄道爆破事件を契機に始まった、日本軍による満州侵略戦争の日本における呼称。軍は政府の方針を無視して満州全土を占領し、翌年満州国を樹立した)の発端となった柳条湖事件85周年の9月18日にちょうど日本に滞在しており、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に次のように投稿したと、朝日新聞は以下のように報じた。

「日本のホテルで水を出しっぱなしにして、うっぷんが晴れた」と書き込んだ。王楠さんも「私も『いいね』を押した。永遠に9月18日を忘れてはならない」と発信した。(朝日新聞9月22日付朝刊)

 二人が投稿した理由は「9. 18を永遠に忘れない」、つまり日本の侵略行為を批判するためだそうだ。このことを明らかにしたのは他ならぬ妻の王楠元選手で、彼女も前記のように夫の行動を全面的に支持し高く評価している。

 ここで私はすべての日本人に提案がある。この中国人夫妻を日本人全体で応援しようではないか、ということだ。冗談ではない、私は本気である。

 まず二人に伝えなければいけない重要な情報は、今後中国の首都北京に入った時は、あらゆる蛇口で水を出しっぱなしにしなければいけない、ということだ。

 なぜなら北京市の水道のかなりの部分が日本の対中ODA(政府開発援助)によって整備されたものだからだ。だから夫妻が愛国心を貫くためには北京市でも水を出しっぱなしにすべきなのである。

 また別の報道によると、夫は「日本に行った時に、家電などいかなる製品も使わなかった」と誇らしげに述べたそうだ。

 なるほど孔子も「渇しても盗泉の水を飲まず(孔子はどんなに喉が渇いても「盗泉」という名の水は飲まなかった。転じて、どんなに困っていても不正には手を出さないことの喩え)」と言っているし、聖人を見習おうということであれば、妻も北京の国際空港を使うべきではないし北京市の地下鉄にも乗るべきではない。

 あの最大限に汚染された北京市の空気は紛れもなく中国製だからいくら吸おうと御自由だが、水道はODAつまり日本の資金援助と技術協力で出来たものだから飲むべきではない。こんな例は北京だけでなく、私の記憶では重慶市のモノレールもそうだし本当に数え切れない。

 なぜなら、ODAには「円借款(低金利かつ長期にわたる返済期間という緩やかな条件で貸し付ける円建ての有償資金援助)」と「無償資金協力」「技術協力」の三種類があるが、このうち対中「円借款」は1980(昭和55)年度から始まり、打ち切られた2007(平成19)年度までに総額3兆3164億円もの資金を中国に供与しているからである。その膨大な資金で中国政府は発展の基礎となる水道や空港、鉄道などのインフラを大々的に整備してきた。

 中国に対する日本の援助はこのほかにアジア開発銀行などの国際基金に資金を拠出する形の多国間援助がある。つまり日本はODAとこの多国間援助を合わせ、実に六兆円を超える資金を中国に援助している。これは一つの国が外国に提供した援助としては人類の歴史上で最大級のものである。だからこそ中国はここ数十年この膨大な資金を利用して国家を急速に発展させることが出来た。

 王楠・郭斌夫妻も、一般の中国人も、ほとんどこのことを知らない。だからこそ「日本製品は一切使わない」などと本人は思い込んでいるが、実際には「大いに使っている」形になってしまっている。

 これではいけない。本当に愛国心を貫こうという中国人にとってはまさに憂慮すべき事態である。だから、われわれ日本人は彼らに「この空港は日本の援助で出来たものですよ」「この鉄道もそうですよ」と真実の情報を提供し、だから「利用すべきではないですよ」そうしないと「愛国心が貫けませんよ」と忠告すべきなのである。

※週刊ポスト2016年12月2日号

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