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鉄道車両のセカンドキャリア 海外で現役続行も

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 球団から自由契約を申しわたされても、まだ力があるからと社会人野球などへ場所を変えて現役を続け、新天地でもチームの勝利に貢献する元プロ野球選手が少しずつだが増えている。鉄道車両も同じように、いったんは引退しながら、新天地で活躍するケースも多い。使われなくなった鉄道車両のその後について、ライターの小川裕夫氏が追った。

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 現在、東京メトロ銀座線で運行している車両は2種類ある。ひとつは銀色の車体にオレンジ色のラインが入っている車両で、01系と呼ばれる。もうひとつは、01系が老朽化したことで2012(平成24)年に登場した新型車両1000系だ。

 東京メトロは、2017年から開通当時のデザインに近づけた特別仕様の1000系を運行すると発表。もともと1000系は地下鉄開業当時の車両デザインをモチーフにしていたが、特別仕様が施されることで、より開業当時の車両に近づく。

 一方、古参の01系は2017年3月末までに全車両が引退すると発表されている。銀座線01系の勇姿が見られるのも残りあとわずかとなった。

 引退した鉄道車両は、その後どんな人生を歩むのか? 大半の車両はそのまま廃車されてしまう運命にあるが、昨今はリサイクルやリユースされる車両も少なくない。なかには、一部の部品を新車両に流用されるだけではなく、ほぼそのままの姿で新天地に引き取られるケースもある。

 1957(昭和32)年に営団地下鉄丸ノ内線(当時)に登場した500形は、1996(平成8)年に老朽化のため引退。その後、アルゼンチン・ブエノスアイレスに引き取られた。500形はブエノスアイレスでも現役車両として活躍したが、今年に役目を終えて帰国している。

 東京メトロでは丸ノ内線のほかにも、東西線や有楽町線などで使用していた車両をインドネシア・ジャカルタに譲渡している。

 そうした海外に車両を譲渡しているのは東京メトロばかりではない。JR東日本がフィリピン、JR西日本がタイやマレーシアといった具合に、引退した車両が海外で第2の人生を歩むことは過去にもあった。丸ノ内線500形が特筆すべき点は、海外に渡った車両が初めて里帰りを果たしたからだ。

 日本の鉄道車両の性能は世界でも群を抜いている。そのため、国内では古くて使用に耐えない車両であっても、海外から引く手あまたになっている。新興国では鉄道インフラの整備が急ピッチで進んでいるので、日本の鉄道車両を欲する国は今後も増加すると思われる。では、どんな車両が譲渡対象として選ばれるのか? そして、海外に譲渡されるまでのスキームはどうなっているのか? 東京メトロ広報部に取材を依頼したが、「譲渡先との契約上、車両の譲渡については詳しく話をすることはできません」と回答は得られなかった。

 慣れ親しんだ車両が国内から引退しても、海外で頑張っていると聞いたら、その姿を見たくなるのが人情だろう。

 鉄道車両のために、わざわざ海外へ出かけることは高いハードルだ。しかし、国内だったら気軽に会いに行くことはできる。

 熊本県熊本市・合志市を走る熊本電気鉄道は、銀座線01系を引き取って2両編成に改造。東京メトロ時代と比べると短編成になり、形式番号は01系から01形と微妙に変わった。しかし、銀座線で運行されていた時とほとんど変わらない姿で今も走っている。銀座線の車両を東京から見に来るファンも多いようで、東京メトロと熊本電鉄はスタンプラリーのコラボ企画も開始した。

 実は銀座線01系のように新天地でも現役として活躍する車両は、かなり幸運の部類に入ると言えるかもしれない。公園や児童館・図書館などに引き取られて展示物として余生を送る引退車両も多いのだ。展示・保存とは言いつつも、その多くは屋外で展示される。雨ざらしの状態だから、保存状態は極めて悪い。当然ながら車両の劣化は激しく、車体がサビだらけになり、腐食もしている。

 公園管理者側からすれば車両を保存・維持するための費用や人手まで賄えないから、展示車両が放置されてしまうのは仕方がないことなのかもしれない。

 公園などに放置される車両よりも悲惨な末路をたどった車両もある。昭和40年代後半、各地で走っていた路面電車は次々に廃止に追い込まれた。現在、路面電車が走っている都市は20ほどしかないが、当時は多くの都市で路面電車が活躍していた。

 それらが一斉に廃止・撤去されたのだから、大量の路面電車の車両が廃棄物と化した。いちいち解体していたら、その費用は膨大になる。直面した課題を解決する案として、路面電車は海に沈められることになった

 1971(昭和46)年、和歌山市内を走っていた南海電鉄の路面電車は全廃した。その車両は漁礁として和歌山市沖に沈められている。

 和歌山県農林水産部水産振興課によると「路面電車を漁礁として海に沈めたことは事実だが、当時の職員は残っておらず、書類も見当たらないので詳細は不明」とのことだった。

 また、和歌山市農林水産部農林水産課は「市内には漁港が5つあり、そのうち雑賀崎漁港で路面電車を沈めたという話は聞いている。ただし、これらは市の事業ではなく、漁業組合が引き取ったようなので市に記録はなく、年配の組合員に聞いても詳細はわからなかった」と言う。また、沈めた車両は漁礁として機能しているのか?水質に異変をきたしていないのか?といった調査も特にしていないという。

 現在では行われていないが、路面電車を漁礁として海に沈めることは和歌山市のみならず、全国で推奨されて断行されていた。当時の国会では、水産庁職員が「漁礁として市電を海に沈めている」旨の答弁をしているほどだ。

 第2の人生を漁礁として期待された路面電車たちは、いまも海の底で眠っている。海に沈んだ路面電車たちは、哀しいことに歴史からも葬られつつある。

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