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Daft Punkやアントニオ猪木を撮りながら、問題作を発表し続ける異能の写真家 梅川良満が語った半生

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Daft Punk、Kool Keith、Missy Elliot、アメリカを代表する現代美術家ポール・マッカーシー、村上隆、園子温、灰野敬二、アントニオ猪木など、国内外の錚々たる人物を撮影してきた写真家の梅川良満。特徴あるポートレート撮影で知られてきた梅川だが、2012年には自身の創作活動にも力を注ぎ、ステッカーとポスターという特殊な形態の1st写真集「LEAVE ME ALONE」、路上の吐瀉物を撮影した2nd写真集「DRIP BOMB」をたて続けに刊行。この二冊の問題作で人々を驚かせた。そんな梅川がこのところ力を入れている「Incarnations」シリーズが欧米メディアから高く評価され、各国メディアからの取材依頼が絶えないという。アートとコマーシャル、双方の写真で国内外の注目を集めている梅川に、写真家になった経緯や自身の作品に対する思いなどを聞いた。

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「桑原茂一さんのクラブキングを16歳ぐらいから手伝い始めて、19歳ぐらいでRED SHOESでバーテンダーでバイトしてました。写真を始めたのは、20歳くらいです。写真は確かに、その頃から始めていたんですけど、遊びとしてやっていてプロになる気はあまりなかった。その頃はどちらかと言えば音楽のほうが好きで、『クラブキング』や、当時は西麻布にあったRock Bar『RED SHOES』を手伝っていました。ところが1995年頃、働いていたRED SHOESがいったん閉店することになって。じゃあこの機会に以前からやっていた写真の技術だけはちゃんと学んでおこうと思って、夜は専門学校に行って昼間はデザイン会社でバイトをするようになった。ちょうど同じ頃、あるギャラリーを手伝うことになったんですが、そこでフランスのシュールレアリスム写真の大家のイリナ・イオネスコに出会って、彼女のワークショップの撮影助手をすることになったんです。その縁で今度は自分がフランスに行った時には彼女のポートレートを撮影させてもらったり、ラボも見せてもらったりしました。その時、同じくフランス写真界の巨匠であるジャンルー・シーフにも出会い、写真を見てもらっています。作品を彼に褒めてもらえて。このフランスでの出来事がきっかけになって写真家になることを真剣に考え始めました。

イリナ・イオネスコ、ジャンル―・シーフという二人の巨匠に出会い、早くから認められてきた梅川。しかし帰国後入社した大手印刷会社の子会社はすぐに辞めることになったという。

「その会社の仕事は自分がやりたいと思っている写真とは少し違っていて、数か月働いただけですぐに辞めました。それでこれからどうしようかなと。でもその時にはすでにかなりの数の作品があったので、クラブキングの頃からお世話になっていた先輩たちに相談したんです。そうしたらアートディレクターや編集者の名刺を並べて見せてくれて。『このあたり全部に売り込んだほうがいい』と言われて売り込みに行った結果、音楽系の仕事をすぐにやらせてもらえることになった。クリエイティヴな人たちが周囲に多くいる環境にいたのがよかったのかもしれないですね。この頃のアナログ的な人との付き合いはすごく面白かったし、大きかった。

ライティングと絞りに工夫をこらした梅川の写真には、一目で梅川の作品とわかる強烈な個性と魅力があり、瞬く間に評判になっていった。カルチャーを考える基礎は音楽にあると語る梅川の作品は、特にミュージシャンたちに愛されることとなった。

「ヒップホップのミュージシャンはかなりの数を撮影しました。2000年ごろNIPPSの撮影をしたのがきっかけとなって、DEV LARGE、Kダブシャイン、スチャダラパー、MACKA-CHIN、餓鬼レンジャー、サイプレス上野とロベルト吉野など。それからもう亡くなってしまったんですが、もはや伝説的な存在になった感のあるRammellzee。四街道ネイチャーのマイクアキラの写真もかなり愛着ある作品です。ヒップホップ以外のミュージシャンだと海外ではやっぱりDaft Punk。彼らを撮影できたのは大きかった。それから国内だとクレイジーケンバンド、MAN WITH A MISSION、ギターウルフ、怒髪天、SOIL&“PIMP”SESSIONS、POLYSICS、電気グルーヴ、ユニコーン、BUCK-TICK、前野健太、安室奈美恵、木村カエラ、椎名林檎。アイドルだとPerfumeやでんぱ組.incやBisも撮っていますし、本当にたくさんの人たちを撮らせてもらっています。去年撮ったのはORIGINAL LOVEの田島貴男さん。渋谷系世代だったし、ファンとしてはたまらなかったですね。

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ポートレートで頭角を現した梅川のところには、現在ではミュージシャンンのみならず、国内外のさまざまな分野で活躍する著名人の撮影依頼がきている。宝田明、舘ひろし、二階堂ふみ、栗山千明、ジョニー・ノックスビル、Haley Joel Osmentら映画俳優、井上三太や水道橋博士や宇川直宏などのマルチな才能を発揮する人物たち。梅川の友人で世界的な画家である五木田智央のポートレートは、ニューヨークのMary Boone Galleryで開かれた五木田の個展のために撮影したものだという。膨大な量の写真を見ながら梅川の話を聞いていくうち、ふと目にとまったのは超大物、アントニオ猪木の写真だった。

「プロレスの媒体『KAMINOGE vol.15』の表紙用に撮影した作品です。背景の黒は事前に用意していったものですが、当日会ってみると珍しく猪木さんが緑っぽい格好をしていて。そういえば緑の猪木さんの写真って見たことがないなと思って、それでこの日は緑のストールをしてもらいました。世に出ている猪木さんの写真はレタッチしてあるものが多いと思いますが、この写真はほとんど修正を入れていない。五木田くんはプロレスについてはご意見番なんですが、この写真を見て、『こんなリアルな猪木は久々に見た』と言ってくれましたね。

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ポートレートの世界で頂点へと登り詰めていった梅川は、やがて自身の創作活動にも力を注ぐようになる。なかでも日本語で「化身」を意味する「Incarnations」シリーズは海外メディアを驚かせ、梅川の名声を一気に高めた。この作品はドイツのカルチャー誌「LODOWN」のアート特集号の表紙を飾ったほか、アメリカ、デンマーク、スペイン、フランスのメディアにも取り上げられている。梅川はこの衝撃的な作品群をどのようにして思いついたのだろうか。

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「もともとは物撮りをしていた時に水滴やシズルの表現を試行錯誤していたんですが、これだけで撮影したほうが面白いんじゃないかな、と思ったことがあった。それと特撮で有名な円谷英二さんのエピソードがあって、円谷さんは爆発や噴火時に発生するキノコ雲を映像で表現するにあたり、水槽に黒い絵具を落としたそうなんですよ。この円谷さんの話にヒントを得て、この方法でキャラクターを作ったら面白いんじゃないかと考えたんです。この点ではもとからある手法なんですが、この作品では撮影に工夫を凝らしていて、撮影時にカラーフィルターを使用して色をつけているんです。このシリーズはもう100枚以上撮影していて、ひとつひとつのかたちに名前をつけているんですよ。たとえばこれは『Urban』と呼んでいる作品です。この作品は水のなかで絵の具が動いている状態のうち、一番いいかたちをした瞬間を撮っている。瞬間をとらえる作品なので、ある意味では一番写真的な表現とも言えるんですが、一方で動いているものを撮影するという点ではどこか写真らしくない面もある。この作品ではそういう難しいところを目指したかった。

この作品について海外からの取材を多く受けている梅川だが、メディアの反応をどのように受け止めているのだろうか。

「海外ではどうしてもこの作品を原爆に結び付けて考える人が多いんですよ。でもこの作品のコンセプトは原爆というより、キャラクター、メルヘンの世界なんです。コンセプトももちろん大切ですが、作り手としては作品そのものが大事というか、純粋に写真を楽しんでほしい。この写真はどことなく女性的な雰囲気があるみたいで、女性にファンが多いようです。

国内外で快進撃を続けてきた梅川だが、今後はどのような展開を考えているのだろうか。

「コマーシャルな写真はコマーシャルな写真で面白いと思っているので、依頼がきたらポートレートを撮りつつ、一方で自分が撮りたいものも撮っていく。ポートレートの仕事は自分の価値観にないものが飛び込んでくるからすごく面白いし、勉強になるんですよ。それ以外だと、やっぱりこの『Incarnations』シリーズの大規模な個展をやりたいですね。このシリーズについてはネットでどんどん作品の画像を出して、海外のメディアにもたくさん写真が載っているんですが、まだ個展を開いていないので、早く現実世界をネットに追いつかせないと(笑)。『Incarnations』の作品集はその時一緒に出そうと思っています。

【プロフィール】梅川良満(うめかわ・よしみつ):1976年、東京生まれ。写真家。1999年からフリーランスフォトグラファーとして国内外で広告、音楽、ファッションなどを中心に著名人のポートレートを無数に手掛ける。近年は自身の創作活動にも力を入れており、2012年には「LEAVE ME ALONE」と「DRIP BOMB」という二冊の写真集を刊行。同年から続けている「Incarnations」シリーズは、ドイツのアートカルチャー誌 「Lodown Art Issue 004 “TRANSIENCE”の表紙となり、近年梅川の作品は欧米諸国での評価が急激に高まっている。写真家としての仕事以外にもSenor Coconutなど海外アーティストの映像作品などにも携わっているほか、最近ではスケートボードのデザインにも手掛けるなど多彩な一面を見せている。
2015年、アメリカのアート誌「HI-FRUCTOSE MAGAZINE」 websiteに取り上げてられて以来、世界中からのインタビューが絶えない。

http://www.umekawayoshimitsu.com
https://instagram.com/yoshimitsu_umekawa/

取材/原カントくん、文/本間 揚文

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