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北方領土返還 「ガス」「電気」が巨大な経済効果生む

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 安倍首相とプーチン大統領の北方領土交渉がいよいよ大詰めを迎えている。12月に日ロ首脳会談が行われ、その場では北方領土問題について話し合われるとの見立てもある。もし北方領土が返ってきた場合、どのようなメリットが期待できるのか? 大前研一氏が解説する。

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 北方領土返還は、島々を直接的にどう活用するかにとどまらず、もっと大局的な視点で考えるべきだろう。つまり、ロシアと平和条約を締結して友好・信頼関係を築くことによる計り知れない経済的メリットに目を向けるのだ。

 まず考えられるメリットはエネルギーである。樺太(サハリン)には天然ガス田がある。これを液化してLNG運搬船で持ってくるのではなく、宗谷海峡にパイプラインを建設してガスのまま輸送し、稚内に天然ガス産業を興せばよいと思う。

 そうすれば、液化して再び気化するコストがかからなくなるので、経済的メリットが非常に大きい。樺太の最南端・クリリオン岬と北海道の最北端・宗谷岬との間は約43km、宗谷海峡の最深部は約70mしかないから、工事は難しくない。ロシアに樺太の南部で発電してもらい、高圧直流送電(HVDC)で日本に持ってくるという手もある。その具体的なやり方は2つ考えられる。

 1つは稚内あたりから北海道経由で本州に引っ張ってくるという方法だ。すでに北海道と本州の間は高圧直流送電網が出来上がっているので、樺太~北海道間の送電網さえ建設すれば、本州まで送電できる。

 もう1つは、樺太から福島まで海底などを使って直接送電する方法だ。福島には福島第一原子力発電所に原子炉6基分、福島第二原子力発電所に原子炉4基分の送電網があるので、そこに樺太からの送電線をつなげば、関東圏と東北圏がカバーできてしまう。

 樺太から福島までの距離は約1000kmあるが、すでに中国には約2000kmの高圧直流送電線があり、ブラジルでは約2400kmのプロジェクトが進行中なので、それらに比べれば1000kmという距離は長くない。そんなに遠いと送電ロスがあるのではないかと思うかもしれないが、高圧直流送電なら1000kmで3%程度、2000kmで7%程度と、ロスは交流送電の半分ほどに抑えられる。

 さらに、ウラジオストクからも日本海にパイプラインを建設して新潟に天然ガスを持ってくるという手もある。こちらの距離は1200kmぐらいだが、ロシアは国内やヨーロッパで海底を含めて2000~3000kmのパイプラインを数多く建設しているから、技術的には十分可能だろう。

 また、樺太~福島と同じように、ウラジオストクで発電してもらい、高圧直流送電で新潟の柏崎刈羽原子力発電所にある原子炉7基分の送電網につなぐ。そうすれば首都圏はもとより、北陸圏もカバーできる。

 旧ソ連時代までのウラジオストクは軍港都市として栄えてきたが、東西冷戦終結後は軍港の重要性が薄れて将来性が危ぶまれている。このためプーチン大統領は、軍港に代わる産業としてハイテク関連の大学や研究所などを次々と設置し、極東ロシアの拠点都市とするべく力を注いでいる。そのウラジオストクの経済発展に日本が協力することは、プーチン大統領との信頼関係を構築する上で極めて重要だと思う。

 具体的には、最初は大学レベルの交流と人材育成、あるいは寒冷地における農業の共同研究といった極東ロシアにふさわしい地道な分野から始めるべきだろう。

※SAPIO2016年12月号

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