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マイクロソフト澤円氏と元AWS小島英揮氏が語る「最強のエバンジェリズム」とは?

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エバンジェリズムには顧客視点が欠かせない

:この組み合わせでの登壇は、これまでは本当に難しかったですね(笑)。

小島:先月、AWSを退社したことで、実現しました(笑)。

:今回の対談のテーマは「最強のエバンジェリズムを語る」ということですが、小島さんはエバンジェリストではなかったんですよね。

小島:エバンジェリストというタイトルは持っていませんでした。ただ、エバンジェリズムは、知らない人に興味を持ってもらってファンになってもらって買ってもらうということ。マーケティング的な活動とも言えます。従って自分がやってきたことと、この言葉はしっくりくるんです。

:私もエバンジェリストという肩書きではないんです。
マイクロソフトではエバンジェリストというロール名があり、その立場で活動している人もいますが、僕のロール名はテクノロジーセンターのセンター長で、エバンジェリストではありません。

ですが、やっている活動はエバンジェリスト。マイクロソフトおよびITの可能性を伝播しているので。最近は、ITだけではなくて別の業界・業種でもエバンジェリストは増えているんですよね。

小島:僕の友達で冨山の氷見でブリのエバンジェリストをやっている人もいます(笑)。

:エバンジェリストというと、ステージの上でプレゼンテーションするというイメージで捉えている人も多いと思いますが、エバンジェリズムにはいろんな形があるんです。

小島:エバンジェリズムとしているのは、世の中的にまだ知られていないものを、一般の人に向いてもらえるような場を考えてくれる人と、そこに集まった人たちに響くプレゼンをする人。この2つのロールがエバンジェリズムだと捉えています。

:その通りで、僕は年間150回ぐらいプレゼンをするのですが、単にしゃべるだけでは人には伝わりません。舞台設定や必然性を作ってもらえないと、効果が半減するんですよね。

小島:事実を伝えれば相手は分かってくれるわけではありません。伝え方のコツって何かありますか。

:使い古された言葉ですが、顧客視点ですね。

小島:相手が何を求めているかはどのように判断しているのでしょう。

:反応しやすい言葉やキーワードを投げかけるんです。質問や探りから入っていったり、キャッチーな言葉を投げて興味を惹いたりして、それを積み上げてゴールに近づけていくという感じですね。

小島:参加者の人数でやり方を変えることはないんでしょうか。

:基本は同じです。もちろん人数が増えると、一人ひとりに質問するわけにはいきません。そう言う場合は、オープンクエスチョンで、反応を見ます。

小島:オープンクエスチョンは、多数の人とチャンネルを作る際に有効ですよね。

:語りかけることで、当事者意識が持てるんですよ。参加者も当事者意識を持たずに一方的にプレゼンテーションを聞くのは辛い。リレーションを作って、当事者になっていただくと、こちらの言葉も伝わりやすくなりますからね。

小島:当事者意識は大事ですね。僕はそれを自分事化するという表現を使っています。どんなに良い情報でも自分に関係ないと聞いていると、その後のアクションにはつながらない。

エバンジェリズムとは最終的にファンになってもらうことなので、自分事化にすることが大事です。例えば、本日の参加者の多くはプログラマの方で、マーケティングの方はほとんどいません。つまり今日、僕はアウェーの環境にいるんですよ。これはエバンジェリズム向きの環境です。

質問をすることでアウトプット、インプットの質が上がる

:アウェーの中で話をするのは、エバンジェリズムを鍛える大事なポイントなんです。プレゼンテーションやエバンジェリズムのスキルを上げていくには、なるべくアウェーの場所で話す機会を作って、磨いていくことだと思います。いろんなところに自動的に声がかかるようになります。

小島:勉強会やLTで話をする側に回ると、世界が変わります。もし、登壇されたことのないのでれば、ぜひ、何らかの機会にトライをしてみればいいと思います。今日、皆さんは僕と澤さんの顔は覚えて帰るでしょう。でも隣の人の顔は思い出せないと思います。

一緒にいても認知されることは難しい。登壇側に立つといろんな人に認知され、話しかけられるようになる。つまり話す側に回ると、インプットが増えるんです。

:先日、及川卓也さん(元GoogleでChromeを開発。現在はQiitaを運営しているIncrementsに所属)と対談したときにも、そんな話題となりました。アウトプットを質のいいものにすると、質のいいインプットが大量に入ってくると。このサイクルができると、大量のインプットができるので、後はそのインプットをスクリーニングする作業だけですから。

小島:残念ながら、私たちが受けている教育では、人前で話す習慣がないんですよね。だから先生などそれなりのスキルがないと、「僕はしゃべる側に回れないんだ」という思い込みができてしまうんです。本来、そんなにバーはそんなに高いものではなくて、伝えたいネタがあればいいはずなんですけど。

:今日、沖縄から来たと言いましたが、僕は今、琉球大学で客員教授をやらせてもらっているんです。僕の授業で最初に作ったルールは、4日間という全日程の中で、全員必ず、1回は質問すること。授業で聞いている側が許されている能動的な行動は、質問なんです。

質問は質の良いアウトプットで、僕たちにとっては、反応しなければならないインプット。なのでこちらも楽しい。確かに質問するには勇気がいります。でも質の良いインプットを受けることができます。質問するとインプットの質が上がるんですよ。

小島:質問は意外に他の人も聞きたかったことだったりしますからね。10人がそれぞれ別々の質問をすると、一人が持ち帰る情報量も増えます。質問は大事ですが、登壇者側の中には、質問を嫌う人もいますよね。

:質問されるのが怖くてプレゼンテーションができない人がいます。

小島:それは質問という言葉がダメかなと思っています。問い質すと書くので。やられている感がありますよね。でも英語だと質問はクエスト(クエスチョン)=探求となる。ポジティブなんですよ。

:さっきも話したように、僕たちは質問をするというポジティブな行動しないまま大人になっています。だから回答者側も、質問されると必ず答えなければならないと過度に構えてしまうんです。

でも、質問は必ずしも答える義務はないんですよ。反応すればよいんです。わからないなら、わからないと答え、それに変わる何かほかに知っていることをプレゼントするんです。

小島:日本人は完璧なQ&Aこそが、質疑応答だという思い込みがあるんですよね。だから、相当問いかけないと、質問が出てこない。Amazonでの会議には、いろんな国の人集まるものもありました。

でも他の国の人は空気読まないんですよね。プレゼンの途中でも質問をしてくるんです。聞くことに対してポジティブなんです。自分事になっているから。

:そうそうセッション後、Q&Aの場でも、外国人が入ると扇形になりますが、日本人だと一列に並ぶ占い師型になるんです。扇形だと誰かの質問を全員で共有することができ、またそこにいる人同士で別のディスカッションが始まったりするんです。

でも一列に並ぶと他の人の質問は聞けないし、自分の質問は他の人に聞かれたくないんだと思います。

小島:様式美なんですよね。質問が完璧じゃないといけないという。こんな質問するとバカに思われるのではないかと。

:日本は恥の文化ですからね。時間と空間を共有するときは、ストッパーをとっぱらってもらって、Q&Aを積極的に使ってほしいですね。

小島:Q&Aは1つのセッションですから。エバンジェリズムでは、Q&Aがない場合は一方通行になります。マーケティングのリードをしていたとき、エバンジェリストの人に質問の数を意識してくれと言っていました。

質問がなかったのは、プレゼンに興味を持ってもらっていないということ。質問をどれだけ引き出せるかは、その人のプレゼントの質を上げる良い方法です。

:自分が言い忘れたことを指摘されるとありがたいですよね。次の機会の時は、その部分も最初からコンテンツに追加されるので、プレゼンがアップデートされてさらに良くなります。しかもアップデートすることで飽きることも防げるんです。マンネリ化すると質はだんだん、下がってきますから。

他流試合がエバンジェリズム、プレゼンテーションのスキルを伸張させる

小島:マイクロソフトでは、エバンジェリストの方達をどうやって評価しているのでしょうか。

:スコアを付けるんです。例えば当社が主催する大型のイベントでは、オーディエンスの評価によって点数を付けます。200点満点なのですが、100点を下回ると改善しなければならないリソースとして位置づけられるんです。

オーディエンスは主観でスコアをつけますが、会社から見るとそれは客観データ。どういう風に相手に反応してもらったのかを客観的にて、それによってランキングが付けられるんです。

小島:ホームグラウンド、つまり自分のお客さまが来る場の場合、すでに関係ができているので、基本的に評価が高くなると思うんです。例えばマイクロソフトを知らない人の前で話すのでは、スコアは上げにくいと思うんです。そうすると、ホームグラウンドを選びがちになりませんか。

:ホームグラウンドを選んでいる人は、圧倒的な力を発揮できるわけではないんですよ。

小島:ホームグランドだから話しやすいはずなのに、伸びにくいということですか。

:スコアの上位に来るのは、他流試合に出ている人たちなんです。つまりマイクロソフトのイベントではないところで話している人たち。そういう人たちはホームでしか戦ったことのない人よりもいいスコアを出します。

異質のインプットを受けた状態で鍛えられているので、瞬時にオーディエンスの雰囲気に対して察知したり、コンテンツにいろんな視点を入れて厚みを出したりすることができるんです。

小島:インプットの幅が広がるということですか。

:そうですね。僕の他流試合で面白かったのは、京都のある大学で基調講演をしたことです。オーディエンスの募集は新聞広告。ITに関する話をするけど、告知方法は新聞なんです。オーディエンスは、一番若くて60歳。80歳の方もいました。

小島:そんなアウェーな環境はないですよね。

:これはなかなかのアウェーだなと思って、喜んでいきました。楽しかったですね。週末にITの話を聞きに来ている人たちなんですから。

小島:フラグとしては高いですよね。

:フラグとしては高いが、知識のベースはまったく高くありません。電気屋さんに孫と行って、じいちゃんカッコイイといわれるようにITの基本用語をかみ砕いて話したところ、すごく反応が良かったですね。

小島:じいちゃんカッコイイというのは自分事になりますものね。

:自分事ではない情報は、どうでもいいものですから。自分事ではなくて他人が興味を持つのは芸能人のゴシップネタぐらいです(笑)。ITの話で自分事にしてもらうのは、エバンジェリストの神髄です。

小島:そんな、まったくチャンネルが合わなそうな人と合わせるネタをどう見つけていくかは大事ですよね。プログラマの人はプログラミングをする人は、ファクトを伝えると相手も分かってくれるはずという思い込みがあるのではと思うことが多いです。相手に伝わる、相手に聞いてもらえるかというテクニックは大事ですよね。

:わかりやすく説明できる技術者は絶対、重宝されます。「ここにコメントしたから、わかってもらえると思っていた」。これはつもりなんですね。「つもり」は伝わらないんです。つもりですますのではなくて、相手に「うん」と言わせるまで踏み込むこと。それを心がけないと損だと思います。

小島:つもりを避ける方法は何かありますか。

:小学生に伝えるにはどうするかということを考えるといいと思います。小学生に説明して分からないと、かみ砕き方が足りない。情報の粒度を細かくするプロセスが足りていないんです。

小島:わかる言葉にするまでかみ砕くということですね。コミュティ活動でも粒度という言葉を使います。興味のある塊の粒度が合っていると盛り上がるんですよ。

:自分事の仕方も違ってきますしね。

小島:エバンジェリズムでもう一つ大事なのは、オーディエンスに対してこちらが関心を持つことだと思います。今オーディエンスは満足しているか、どんなことを聞きたいと思っているか。相手に関心を持つことも重要です。澤さんはプレゼンを作るときに気をつけていることはありますか。

:プレゼンテーションは説明する必要はないんです。僕のスライドを見てもらえればわかると思いますが、写真に文字一列がほとんどです。写真でイメージをつかんでもらって、あとはワンワード。このワンワードは本当に言葉を選んでつけています。

あとはストーリーに関してはオーディエンスの反応や目の色で言葉を変えていきます。これができるのは自分の引き出しにいろいろ入っているからです。逆を言えば、それを引き出すことができる絵やワーディングをすれば良いということ。

逆にスライドに文字を入れてしまうと、それに自分がコントロールされてしまうんです。またオーディエンスがそれを読み始めるので、視覚を奪われます。スライドは情報量を少なめにすることです。

小島:それはかなり上級テクニックですね。僕のオススメは、プリントアウトすることです。パワーポイントだと、1ページ6スライド。で、2ページをA41枚に印刷できる設定で、A4に16枚スライドがある形にして印刷して(紙を)並べてみるんです。こうすると(全体のストーリーを)俯瞰して見ることができる。

思いついたところに赤入れすると、このスライドは不要だなとか、この文字小さすぎるなとか、強弱をつけやすくなります。テクニックの話ですが、俯瞰する癖は大事だと思います。

:紙にすることによって、印象が変わりますよね。

小島:紙にすると、ぱぱっとコメントが書き込めるのも便利です。ぜひ、俯瞰することをやってみてください。

最後には活発な質疑応答も

本編の対談終了後、質疑応答の時間が設けられた。

Q:今度、登壇する機会があります。オーディエンスの人の知識レベルはバラバラだと思うのですが、どういった人に合わせると良いのでしょう。

:情報の粒度はボトムに合わせます。そうすると上の人に対しては簡単すぎる内容になると思いますが、そういう人はこの粒度で他の人に伝えてくださいねとお願いする人という分け方をするんです。

つまり、詳しい人には難しいことを簡単にすることのレクチャーの時間にするんです。詳しくない人には、その人にとっては嬉しいなという情報になるので、1つのコンテンツでできます。

小島:最初に「誰かにとっては難しいかもしれないし、誰かにとっては優しいかも知れません」というふうに、話の内容の期待値コントロールを事前にしておくのも一つの手だと思います。そしてギャップはQ&Aで吸収できるよう、「もっと深いことを知りたい人はQ&Aで」と言っておく。これはベーシックだけどいいテクニックです。

Q:先ほど、スライドに画像とコメント少しといわれましたが、画像ファイルはどのようにして用意しているのでしょう。

:よく使うテクニックは、伝えなければならないキーワードを1つ取り出して、英語で画像検索するんです。例えばセキュリティで画像検索する、ガードマンやカギなどの画像が出てきます。

その出てきた画像の中から今回のテーマにより合うモノを選んで、ストーリーを組み立てていくんです。実際にスライドに使う画像はフリー画像のサイトで用意しています。

小島:僕もまったく同じやり方ですね。この言葉をいったときに、みんながどんなイメージを持っているかはGoogleに聞くのが(検索するのが)一番早いですから。その絵から話しやすいイメージを見つけていきます。

:英単語を言ったのは、情報量の差なんです。英語だと日本語の15万倍情報量なので。ワンワードだから英単語で置き換えるのがいいのかなと思います。

小島:僕は日本語、英語両方検索します。そのギャップを見るのも楽しいですよ。

こうして澤氏と小島氏の対談は終了。最後に両氏とも、この後、開催される懇親会での質問をしてくださいねと呼びかけていた。エバンジェリストを目指している方、プレゼンテーションをうまくなりたいと思っている方にとって、参考になるヒントがたくさん含まれていた対談となった。

実際に懇親会では、扇型に澤さんの周りを囲んで質問する様子が長く続いた。これこそ「最強のエバンジェリズム」ではないだろうか。

▲懇親会で来場者に囲まれる澤さん。※小島さんは乾杯後、そのまま高知へ旅立たれました。

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