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「構想力」を鍛えるにはスマホゲーム学習が有効

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 21世紀を生き抜いて成功し、リーダーになるためには、これまでとは異なる条件があると経営コンサルタントの大前研一氏はいう。そのうちのひとつ、「構想力」を養うための手段について、大前氏が解説する。

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 21世紀のICT(情報通信技術)時代は、傑出した個人とその会社が莫大な富と雇用を生み出し、地域、国家、世界の経済を変えていく、と本連載ではたびたび強調してきた。では、そういう時代に成功してリーダーになるための条件は何か?

 そのうちひとつの条件は「構想力」だ。20世紀は、いわば“パクリ(模倣)”が経済成長の源泉だった。日本も欧米に追いつけ追い越せで、欧米が開発した新しい技術を必死にパクることによって成長してきた。言い換えれば、欧米に“答え”があって、それに到達すればよかった。しかし、21世紀は答えのない時代だから、パクリではなく、ゼロから構想して今までとは違う新しい方向を出さねばならない。

 しかも、目に見えないデジタル新大陸の中で構想して新しい境地を開拓しなくてはいけない場合も多い。従来の延長線上で努力しても無理、ということになる。

 この構想力は、ビジネスの現場でしばしば求められる非常に重要な能力なのだが、実践的語学力やリーダーシップと同じく、文科省の学習指導要領の中にそれを鍛える教育課程はない。しかし、実は構想力は、真剣に練習を重ねれば、けっこう身につくものである。

 たとえば「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」の私の授業では、学生たちの構想力を鍛えるために「大阪を世界の一流都市にするためには、どうすればよいのか?」といった課題を出したりしている。

 最初はみんな思案投げ首の体(てい)だったが、「大阪城をニューヨークのセントラルパークに見立てる」とか「中之島などの水辺をフランス・ストラスブルグのように生かす」といったヒントを与えると、「都心部に高級住宅街を造って住環境が充実した街にする」という構想が出せるようになる。

 同様の練習を「築地市場の跡地をどのように活用するか?」などの課題を与え、「21世紀の24時間都市」のようなヒントを出して訓練していけば、構想力は次第に磨かれていくのである。

 この授業は今のところ、BBT大学のオンライン学習用ソフトウエア「エア・キャンパス」で行なっているが、これをさらに進化させるとすれば、AI(人工知能)を活用し、さらにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術なども全部組み合わせて、学生たちがどんどん自分で構想を膨らませるようにする、という方法が考えられる。

 いわばスマホゲームの『ポケモンGO』のようなアプリなどを応用して児童・生徒・学生が自ら学ぶ「AL(アクティブ・ラーニング=能動的学習)」の実践である。

 ALという考え方自体はすでに文科省の審議会などでも提唱されているが、単に子供たちが受け身ではなく主体的に学ぶ学習法という意味で使われることが多い。しかし、構想力というのはまだ誰も考えたことのないものを生み出す力だから、あらかじめ答えが書かれている学習指導要領とは本来、相容れないものだ。

 そもそも子供たちの構想力を引き出すためには、教師側にそれを促す力量が必要になるが、それが今の日本の教師たちにあるかどうか、甚だ疑問である。

 むしろALは、AIなどを組み込んだ創作ゲームの形でやったほうが効果があるのではないかと思う。わかりやすい例で言えば、多くのRPG(ロールプレイングゲーム)では、自分で選択して次のドアを開けると、全く別の運命が待っている。これは人生そのものであり、そこでのカギは英語で言うところの「What if……?」(もし……だったらどうするか?)である。

 たとえば、もしコロンブスがイタリアのコルシカ島で生まれて海洋都市ジェノバで育ったのではなく文化の中心地ローマで生まれ育っていたら……と考えることによって頭は柔軟になり、先人が考えたことのなかった新しい空間に行くことができる。

 つまり「What if?」と考える練習を何回も何回も繰り返すことによって無から有を生む構想力が身につくのだ。ここでさらにAIを活用すれば、能力レベルごとの細やかな学習も容易になるだろう。

※週刊ポスト2016年11月25日号

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