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90億円不正流用で海外逃亡中の佐川印刷元役員 逮捕直前手記

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 遠いフィリピンで書かれた一通の書簡を、本誌は入手した。書いたのは63歳の日本人。〈京都地検 佐川印刷担当検事様〉に宛てたA4用紙1枚の文面はこう始まる。

〈私は元佐川印刷の取締役湯浅敬二です。新聞記事、週刊誌を読んでいて余りにも事態が違うので怒りが込みあげてきて手紙を書く事にしました〉

 90億円が“消える”という異次元の不正経理事件は新たな展開を迎えた。ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。

 * * *
 佐川印刷は京都に本社を置き、その名の通り佐川急便の印刷物を一手に引き受け、連結売上高が1000億円を超える大手印刷会社である。湯浅氏は、彼が役員として財務・経理部門を担当していた子会社の資金約90億円を不正流用。そのうち4億円を騙し取った疑いが持たれている。

 不正流用が発覚した昨年1月、事態を把握した同社は湯浅氏を刑事告訴したが、京都地検が捜査に着手した直後に本人は海外逃亡。1年8か月にもわたる逃亡生活を続けたが今年10月、フィリピン当局に拘束された。帰国後すぐに逮捕される予定だという。

 帰国・逮捕を目前に控えた彼は、「その前に気持ちを伝えたい」とフィリピンで手紙をしたためた。その内容は驚くべきことに、湯浅氏の「単独犯行」だとするこれまでの報道を真っ向から否定する内容だったのである。

◆元横綱の関与する金融機関

 書簡にはこうある。

〈佐川印刷グループの資金はすべてまかすからと木下会長に言われてやってきました。私が資金を投資したのは木下会長の裏金づくりのためです〉

 木下会長とは、佐川印刷の創業者である木下宗昭氏(73)のことだ。木下氏は1970年にキノシタ印刷を設立。佐川急便に飛び込み営業をして、創業者の佐川清会長(故人)に気に入られたことを機に急成長し、佐川急便の出資を受けたことから社名を佐川印刷に変更した。

 湯浅氏は1983年9月、佐川印刷に中途入社。財務・経理畑を中心にコツコツと勤め上げ、2003年4月に財務・経理部長となり、2012年4月から総務・財務・経理の取締役に就任した。

「会社の金庫番とも言うべき立場で、木下会長の信任は厚かった」(同社関係者)

 湯浅氏は、不正流用は木下氏の指示によるものだったと主張する。書簡はこう続く。

〈以前から自由に動かせる資金はないのかと求められて投資案件で得たお金を裏金にあてる予定でした。細かいお金の出金は説明していませんがプロジェクトの概要は報告しています。レースサーキットもゴルフ場も木下会長から引きついだ案件です〉

 湯浅氏は子会社の資金約90億円を使って、さまざまな事業に投資していた。最大の案件はシンガポールに国際的なサーキット場を作るという壮大なプロジェクトに関するもので、54億円が投じられている。結局、建設は頓挫し投資資金は焦げ付いた。

 ほかに京都府のゴルフ場買収資金に13億円、元横綱の関与するモンゴルの金融機関に4億円という意外なものもあった。湯浅氏はこれらの投資について、会長のお墨付きを得ていたと主張する。

 その後、投資案件に絡み外部から情報提供がもたらされたことで、社内で不正流用が発覚。だがその時点でも、当初は木下氏が湯浅氏を守ろうとしていたと彼は言う。

〈○○○(情報提供者)が訳のわからないレターを会長に送ってきた時に事件にしないし守ってやるから資金の回収に全力をあげるように言われて、頑張って回収を目指し、動いていたのになぜ私が一人でやったことになるのか理解できません〉

 書簡は最後に、こんな“告白”で締め括られている。
〈また裏金の一部用途は大口得意先の佐川急便株式会社へのものです〉

 いったい何を根拠に、彼はこのような主張をしているのだろうか。

◆一度は認めたのに

 佐川印刷に湯浅氏の書簡の中身について訊いたが、同社の代理人弁護士は「そのような事実は一切ございません。事件の捜査が継続していることに鑑み、現時点において、一切のコメントを差し控えます」と回答した。一方、名前の挙がった佐川急便は「事実無根」ときっぱり否定する。

 実は、湯浅氏は同社が事件について内部調査した報告書の中で、一度は自分の「独断」だったと認めている。

〈取締役会の承認及び他の役員等の報告を経ず、私の独断で佐川印刷グループから資金流出させています〉(報告書内の湯浅氏の発言より)

 湯浅氏がこの書簡を書いた背景には、この報告書の内容を否定する意味があったと考えられるが、それならばなぜもっと早く訂正しなかったのか。1年8か月もの海外逃亡の末、拘束されてからの主張には説得力が欠ける点がある。

 京都地検はこの手紙をどう捉えているのか。事件を追っている大手紙記者はこう言う。

「全容を知る湯浅氏の約2年ぶりの証言として、検察も無視はできない。木下会長が、不正流用について承知していたかどうかの捜査は、湯浅氏の送還を待って進められることになる。当然だが、証言だけで具体的な物証がなければ“単独犯”という検察の見立ては崩れないだろう」

 湯浅氏は周囲に「帰国したらすべてを話す」と話しているという。離婚して家族との縁を切り、地位と仕事と資産のすべてを失った湯浅氏。公判で、「闇に消えた90億円の真相」は明かされるのか。

※週刊ポスト2016年11月25日号

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