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最高賞金1000万円!LINE・砂金信一郎氏に聞いた「LINE BOT AWARDS」の全容と狙い──

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LINE・砂金信一郎氏がプロデュースするビッグイベント

これまでサービスを提供する企業がユーザーと密接な関係を結ぶためには、スマホアプリを提供してユーザーに使ってもらうというのが一つの方法だった。

しかし、アプリ開発には手間がかかるだけでなく、一度はダウンロードしてみたユーザーも、毎日それを使うとかなると疑問だ。ユーザーが月に10回以上使うアプリはわずか9個にすぎないという調査データもある。

スマホ画面には死蔵されるアプリばかり。早々と“アプリダウンロード時代の終焉”を言明する研究者もいる。

それに代わって注目されているプラットフォームが、テキストメッセージ主体の会話型Botとメッセンジャーアプリの組み合わせだ。

メッセンジャーといえば、日本で圧倒的に使われているのがLINE。現在はもっぱら仲間内での情報交換に使われているが、そのプラットフォームでさまざまなサービスを提供する企業とユーザーが結びついたらどうだろう。

大切な人のお祝いに花を買うのも、レストランを予約するのも、新車を物色するのも、LINE上で店舗の「人」または「AI」と対話しながら決めることができる。

すべてLINE上で完結できれば、他のアプリ、場合によってはWeb検索という動作さえ要らなくなるかもしれない。

メッセンジャーがプラットフォームになる──おそらくLINEやFacebookが考えている未来はそれだ。両社が今年になって、自社のメッセンジャーアプリのオープンプラットフォーム化を発表したのもそうした時代の到来を見据えてのことだろう。

そこで大注目なのが、11月下旬に応募受付が始まる「LINE BOT AWARDS」。

LINE株式会社 ビジネスプラットフォーム事業室 戦略企画担当ディレクター 砂金信一郎氏

「Botが生活の中に浸透し、あたりまえのものとして定着する世界を実現したい。気軽にBotを開発できる開発者を増やしたり、良質なBotが生み出されるエコシステムを醸成することを目的としています」

とアワードの狙いを語るのは、つい最近までMicrosoftのエバンジェリストとして各方面で活躍していた砂金信一郎氏だ。

この10月からはLINEのビジネスプラットフォーム事業室戦略企画担当ディレクターとして、手がけているのがこのアワードのプロデュースなのである。

「すでに一部の感度の高い開発者や企業がBotを活用したさまざまなビジネスモデルをLINE上で展開しています。Botではユーザーの行動や関心に応じて的確な情報をプッシュできるだけでなく、LINEプラットフォームで動かす限り、デザインやUIに凝る必要もない。つまりバックエンドのエンジニアだけで開発できるという利点もあって、今後急速に伸びていくことはたしかです」

テキストメッセージでの対話をUXの軸にしたBOTサービスの例Navitime)。

今回の「LINE BOT AWARDS」には、個人・企業のBot活用意欲を刺激し、新しいコミュニケーション・ビジネスのすそ野を広げることが期待されている。

ハッカソン開催で、Bot開発エンジニアをサポート

すでにLINEは、2016年4月からLINEプラットフォーム上でBotアカウントを自由に開発できる「BOT API Trial Account」の無償提供を始めていた。

LINEが提供するMessaging APIにより、LINEのトーク画面を使った対話型Botアプリケーションの開発ができるようになっている。この無償提供キャンペーンに応じて、世界中で約2万件のchatbotが作成された。


LINEの「Messaging API

これが今回の「LINE BOT AWARDS」の伏線でもあった。9月にはこれまで以上にBotの機能性・開発可能性を高め、かつ開発者へのサポート性を高めた新たなMessaging APIが公開された。

この「最新版Messaging APIを利用していること」がアワードへの唯一の応募条件になっている。

応募資格は個人・企業を問わない。学生も応募可能。「例えばエンジニアが、クライアントからの案件で開発したBotでも、クライアントの了解さえ得られれば応募可能です」(砂金氏)

とはいえ、これまでBotを作ったことがないというエンジニアも多いはず。そのためアワードは、期間中、アイデアソンやハッカソンを全国で展開する。

先行してBot開発ノウハウを持つ企業やエンジニアが、これからこの分野に参入しようという人々への支援を行うのだ。

AIエンジンやクラウドインフラなどが協賛パートナー企業から無償または特別価格で提供されるのも魅力だ。アワード事務局は現在、IBM、IDCF、JetRun、nifty cloud、マイクロソフト、DMM.make AKIBAなどの協賛企業とAPIやサービス利用について詳細を煮詰めているところだ。

例えば、Bot開発にあたって、IBMのWatson Developer Cloudが使えるようになったり、マイクロソフトからAzureの利用パスや、LINE上で動く会話Bot“りんな”のAPIが提供されることになれば、アワードはさらに盛り上がることになるだろう。

リクルートが主催する「Mashup Awards(MA)」とのコラボも注目される。

「MA2016期間中の12月中旬まではリーディングパートナーとして協賛の形をとりつつ、LINE Messaging APIを訴求するほか、MA2016終了後も、LINE BOT AWARDSの運営を支援いただく形で連携していく予定です」(砂金氏)

もちろん、アワードに参加するすべての開発者は、LINE Messaging API が利用できるようになる。

このAPIのうち、ユーザーから受信したメッセージやイベントに対して返信するReply Message APIはもともと無償で利用できたが、任意のタイミングでユーザーにメッセージを送信するPush Message APIの利用には有償のアカウント契約が必要だった。

それが個人で参加する人向けのアワード参加者特典として無償で利用できるようになるということだ。

一発芸でなく実装力とお役立ち度重視。目指せ、友だち400万人超え!

アワードというからには、審査がつきもの。社内外のメンバーで審査員チームが構成されるが、審査はどんな観点で行われるのか。

お役立度、ユーザーからの支持、新機能活用、インパクト、サービスの継続性という5つの観点から審査したいと考えています。ユーザーの生活をガラッと一変させ、社会のありようを変えるようなインパクトのあるBotが数多く作られることを期待しています。

それが本当に役立つBotであれば、当然ユーザーから支持されるはず。それはLINEの友だち獲得数という数字になって表れるでしょう。ちなみに、“りんな”はすでに400万人以上の友だちを獲得している。みなさん、ぜひ“りんな”超えを目指してください」と砂金氏は開発者を鼓舞する。

友だち獲得数も審査の基準の一つということであれば、早くから応募してBotを動かしていた方が、友だち獲得には有利といえる。

また、砂金氏は「作ってみて、使ってみて、ちょっと楽しい一発芸的なBotアイデアもあると思いますが、グランプリでは継続的に使っていただける新しいビジネスにつながるBotを高く評価します」とも述べている。アイデアよりも実装と継続性を重視というわけだ。

提供賞金総額1550万円に賭けるLINEの意気込み

「LINE BOT AWARDS」の賞金額については、先行的に話題になっていた。

「これまでLINEはどちらかというと技術情報の開示に積極的ではなかった。Message APIの公開を機に今後は内外のエンジニアと共にプラットフォームを作り上げていく姿勢に転換しました。1000万円はその意気込みの表れだと考えていただければ」と砂金氏。

さらにアワードではグランプリ以外にも、利用シーンや要素技術、応募者属性などに応じた10の部門賞を設けている。

●利用シーン

ライフスタイル:検索や予約など日々の生活を便利にする
エンタメ:ユーザーを楽しませたり、音楽や動画、コミックなどのコンテンツ
ゲーム:botとの対話をUXの軸にしたゲーム

●要素技術

対話エンジン:自然言語処理など、質の高い対話エンジンを実装
グループトーク:1:1ではなく複数人の会話でその価値を発揮
IoT/Beacon:IoTデバイスやLINE Beaconを活用

●応募者属性

学生:学生が企画し、学生ならではの視点で学生を利用者としたもの
ローカライズ:台湾、タイ、インドネシアなど各国の事情に即した課題解決
スタートアップ:創業3年未満の企業対象。新規性・スピード・リスクテイク重視
GEEK:Hackレベルが高いもの、実装がすばらしいものを表彰

例えば、IoTデバイスとの対話で関知や制御が行えるBotや、LINE Beaconの近接情報を利用するBotなどは「IoT/Beacon部門」の審査対象になる。

▲LINE Beacon ※参考:LINE Beacon [LINE DEVELOPER DAY 2016 Edition]の仕様

最近はソフトウェア開発者がチームミーティングやコーディング作業をより快適・便利にするためにBotを使う例が増えているが、開発者による開発者のためのBotも、よりハックレベルが高いものは「GEEK部門賞」に選出される。

部門賞にはそれぞれ50万円(学生部門は100万円)の賞金。グランプリと併せると総額賞金は1550万円に達する。Mashup Awardsの総額賞金が500万円だから、その大きさがあらためてわかろうというものだ。

「最近のBotやAI活用は、2007~2008年ごろのクラウドテクノロジーの状況とよく似ています。一部の先進的な企業やエンジニアはすでに活用を始めていて、それが次第に知られはじめてきた。ユーザーと企業のつながり方を変えるパラダイムシフトが進みつつあります。こういうときこそ、エンジニアには率先してBot開発に取り組み、成功を収めていただきたい」と、砂金氏は熱望する。

今は顧客が企業よりも豊富に情報を持つ顧客優位の時代ともいわれる。そんななか、Botが企業と顧客をつなぐ重要な役割を果たす。

人々の生活に役立つBotを開発すればその人は一躍ヒーローになれるはず。ヒーローエンジニア発掘のための登竜門がいよいよ開かれるのだ。

(執筆:広重隆樹 撮影:刑部友康)

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