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認知症ケアとは生活状態を改善するためにとる行動の過程である

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皆様、こんにちは。紅葉が美しい季節になりました!いかがお過ごしでしょうか?

認知症ケアの現場では、〝ユマニチュード〟〝パーソンセンタードケア〟と、さまざまなケアが注目されています。今日は、音楽療法をケアの観点から考えていきたいと思います。

音楽療法が効果的な理由って?

音楽療法が効果的である背景のひとつに、〝体験を共有すること〟があると考えられています。高齢者の方にとってみんなで昔の歌を歌うことは、声がでないという不安を軽減しながら懐かしさや達成感を感じることができます。この体験が〝楽しさ〟という思いにつながるのではないでしょうか?

このような体験を共有することは、カラオケやテレビの歌番組、CDなどを使っても行うことができますが、音楽療法では、〝同期〟〝シンクロナイゼーション〟という瞬間を共有することでより効果的に感じることが出来ます。

皆様は、〝シンクロナイズドスイミング〟という水泳競技をご存じでしょうか?水の中で音楽に合わせて、ぴったりとそろえた動作をするイメージが浮かんでくると思います。〝シンクロナイズドスイミング〟と同様に、音楽療法の活動の中では、それぞれの発している音や気分、身体が音楽と一体であると感じる瞬間が生まれます。

ただ音が揃う、声が揃うという事だけではない、まるでライブ会場でアーティストとお客さんが一体になったような体験を共有することができます。この瞬間や体験を共有することが、音楽療法の効果につながるのです。

認知症を患っている方の自発的な行動が生きてくる!

認知症を患っている方は、わからなくなっていること、できなくなることがどんどん増えていくことに対して不安を感じています。そのような不安を外に出せる方と出せない方、ご自身でつじつま合わせをすることで不思議な行動が生まれてくることも少なくないと思います。

認知症ケアにとって大切なことは、その方がどう行動したいのかを理解し、その思いを尊重した支援することだと私は考えています。しかし、実際はとても忍耐力を要することだと思います。そのため、認知症の方の自発性を、介護する側の人間が奪ってしまいがちになっている場面がみられることもあるでしょう。

私は、音楽療法を実践しているときも介護福祉士としてケアにあたっているときも、介護する側の理由でその方が発している自発的な行動や希望を妨げないように気をつけています。特に音楽療法中は、その自発性こそが、一体感を感じるきっかけになるのです!

感情を察知する能力が高まる認知症を患っている方にとって、好きなように音楽を楽しんでいることを受け入れてもらっていると感じる事は、自分を否定されていないと感じる事につながるでしょう。また、その思いは、心地よい感情を生み出すことにつながります。

ケアの本質とは?認知症の方はすべて気づいている。

哲学者であるミルトン・メイヤロフは「ケアの本質」という著書の中で、以下のように述べています。


ケアの本質―生きることの意味

ケアとは、他者を成長させ自己実現を助けることであり、同時にケアを通して自分自身も成長し、自己実現を図ることができる。
引用元:ケアの本質(ミルトン・メイヤロフ著)

比較的長い過程を経て発展していくような他者とのかかわり方について言っており、(中略)ケアする人とケアされる人に生じる変化とともに成長過程をとげる関係をさしている。
引用元:ケアの本質(ミルトン・メイヤロフ著)

これは、“ケアをすること”というのは、入浴介助をする、トイレに誘導する、食事を食べさせるといった実際の行動をケアとするのではなく、生活状態を改善するために実際の行動をとる過程のあり方がケアになると捉えられるのではないでしょうか?
誤:入浴介助、排泄介助、食事介助
正:生活状態を改善するためにとる行動の過程

認知症ケアの中では、認知症の方の行動に対し、すぐに制止したり、代わりに行動するのではなく、思いを理解しようと尊重しようとすることが良いケアと言えると思います。また、音楽療法の中では、自発性を尊重し、体験を共有することこそが良いケアになるのです。

さいごに

良いケアの実践は、忍耐力をとても必要とするかもしれません。そして、とても大変なことです。ですが、大変だ、辛い、忙しいという思いを出さず、対応に表さずに接することこそが大切なのです。

認知症を患っている方は、とても敏感な方が多いです。スタッフが他のスタッフに対して話す口調や対応に対して、「そんな言い方しなくてもいいのに」「あの人は性格の悪い人なの?」とぼそっとつぶやかれる方もいます。穏やかな気持ちを持って接すること、そしてともに楽しむことこそが、良いケアにつながり、良い効果を生み出すと私は思っています。

イライラすることもスムーズに行かないこともあると思いますが、そんなときは大きく深呼吸をして、ぐっとこらえて、“穏やかに優しく”を心がけてみてはいかがでしょうか?

皆様のケアによって、すてきな笑顔を見ることの出来る結果が生まれると思います。
介護される人にも介護する人にも楽しい時間が来ることを心より祈っています。

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この記事を書いた人

小森亜希子

大学、大学院と音楽療法について学んだ後、認知症対応型グループホームに勤務。認知症の方とのコミュニケーションの取り方や終末期について多くのことを学び、音楽が様々な記憶と結びついていること、気持ちを落ち着かせるために有効であることを実感。認知症介護実践者研修を修了。現在、介護老人保健施設で介護業務に携わりながら、音楽療法の効果をケアに結びつける具体的な手段を模索中。同居しているアルツハイマー型認知症の祖母(96歳)と出かけることが日課。

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