築30年のビルを社員総出でDIY! オフィスを自分の居場所に

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築30年のビルを社員総出でDIY! オフィスを自分の居場所に

近年、オフィスの内装にお金をかける企業が増えている。特に、イケてるスタートアップのオフィスはかっこいい。快適性、働きやすさの追求に加え、企業の想いや哲学みたいなものが空間に反映されていて面白いのだ。今回は、特にオフィスがイケてると評判の株式会社CRAZYに潜入してきた。

元繊維工場をフルリノベした超快適オフィスに潜入

株式会社CRAZY(以下、クレイジー)は「オリジナルコンセプトウェディング」を掲げ、世界にふたつとない結婚式をプロデュースするウェディング業界のアウトサイダー。完全オーダーメイドのウェディングを演出する企業だけに、それを生み出すオフィス自体も唯一無二の個性的なものだった。

まずは、その唯一無二ぶりをご覧いただこう。

2015年3月に現在のオフィスに移転してきたクレイジー。場所は両国。表参道とか南青山とかではなく意外にも下町である。もともと工場として使われていた築30年、4階建てのビルをフルリノベーションして使っている。【画像1】新オフィスは墨田区。最寄りは両国駅。ブルーボトルコーヒーの日本1号店が上陸するなど注目を集める“東京の東側”を、さらに盛り上げたいという。リノベコンセプトは「境界線があいまいなオフィス」で、1階には誰でも利用できるカフェを入れるなど、地元住民とのコミュニケーションも大事にしている(撮影/片山貴博)

【画像1】新オフィスは墨田区。最寄りは両国駅。ブルーボトルコーヒーの日本1号店が上陸するなど注目を集める“東京の東側”を、さらに盛り上げたいという。リノベコンセプトは「境界線があいまいなオフィス」で、1階には誰でも利用できるカフェを入れるなど、地元住民とのコミュニケーションも大事にしている(撮影/片山貴博)

中は1階がカフェと来客用のサロンスペース。2階以上がスタッフが働く執務エリアだ。執務エリアへ至る階段の壁にはスタッフ一人ひとりのカラー写真が掛けられていて、ひっくり返すとモノクロになっている。出社時はカラーを表に、外出・退社時はモノクロを表にして、出退勤を可視化しているんだとか。かしこい! おしゃれ!【画像2】なにこれすてき。うちの会社も真似しよう(撮影/片山貴博)

【画像2】なにこれすてき。うちの会社も真似しよう(撮影/片山貴博)

2階は執務スペース兼食堂。クレイジーは社員の健康を何より大事に考えていて、毎日メンバー全員で一緒に昼ごはんをきちんと食べるそうだ。専属の調理スタッフがつくる、栄養バランスに配慮した自然食。野菜は信頼できる農家のもののみを使うという。「きちんと」のレベルがスーパーモデル級である。【画像3】奥の壁の向こうがぜんぶ厨房というから驚き。お昼になるとベルを鳴らし、全スタッフが食堂に集結し準備するらしい。食に対する意識の高さに恐れ入る(撮影/片山貴博)

【画像3】奥の壁の向こうがぜんぶ厨房というから驚き。お昼になるとベルを鳴らし、全スタッフが食堂に集結し準備するらしい。食に対する意識の高さに恐れ入る(撮影/片山貴博)

ちなみに今日のランチはハヤシライスとサラダ。案内してくれた広報の方は「今度ぜひ食べにいらしてください」と言ってくれたが、今度といわず今日でもこっちは構いませんですよ。

さらにすごいのが3階の執務エリア。なんか樹が生えてる。【画像4】オフィスのど真ん中に大木ドーン。『情熱大陸(※)』で見たやつだ(※さまざまな業界で活躍する人に密着取材する毎日放送のドキュメンタリー番組。CRAZY WEDDING創設者の山川咲さんが出演)(撮影/片山貴博)

【画像4】オフィスのど真ん中に大木ドーン。『情熱大陸(※)』で見たやつだ(※さまざまな業界で活躍する人に密着取材する毎日放送のドキュメンタリー番組。CRAZY WEDDING創設者の山川咲さんが出演)(撮影/片山貴博)

柱に流木を巻き付けたシンボルツリーの周りにフリーアドレスのデスクがゆったりとレイアウトされている。ソファ席もあってオフィスというよりリア充系シェアハウスのおしゃれリビングである。このシンボルツリーには「いろいろな人たちと絡み合ってうねりを起こしながら世界へ羽ばたいていく、という思いが込められています」(広報)とのこと。

ちなみに、このフロアは土足禁止。オフィスを大切にきれいに使おうという意識が共有されている。当たり前だけどデスクにガンダムとか置いている人は一人もいなかった。【画像5】それにしてもおしゃれな人しかいない(撮影/片山貴博) 【画像5】それにしてもおしゃれな人しかいない(撮影/片山貴博)【画像6】4階の半分は工房スペース。アートディレクターが結婚式で使う小物を制作している。装飾品なども全て手づくりなのだそう。東急ハンズとかで買うんじゃないのね(撮影/片山貴博) 【画像6】4階の半分は工房スペース。アートディレクターが結婚式で使う小物を制作している。装飾品なども全て手づくりなのだそう。東急ハンズとかで買うんじゃないのね(撮影/片山貴博)【画像7】もう半分は「お忍びダイニング」みたいな装いの集中部屋(撮影/片山貴博) 【画像7】もう半分は「お忍びダイニング」みたいな装いの集中部屋(撮影/片山貴博)【画像8】その奥には畳敷きのスペースまであった。疲れたら自由に休憩していいそうで、「完全オフライン」になれる部屋なのだとか(実際、男性社員がスヤスヤ寝ていました)(撮影/片山貴博)

【画像8】その奥には畳敷きのスペースまであった。疲れたら自由に休憩していいそうで、「完全オフライン」になれる部屋なのだとか(実際、男性社員がスヤスヤ寝ていました)(撮影/片山貴博)

そのすてきっぷりに、同行の女性編集者の目もすっかりハートになっている。「かわいい~」「こんな会社で働きたい~」を連呼していて、今にもスーモを辞めるとか言い出しそうな勢いだ。まあ待て、転職するなら詳しく話を聞くのが鉄則だぞ。

というわけで、こんなすてきオフィスをつくってしまった張本人に話を聞いてみることにした。

クレイジーのチーフアートディレクター・林隆三さんだ。【画像9】オフィスリノベーションは林さん指揮のもと、全スタッフ総動員で行われた(撮影/片山貴博)

【画像9】オフィスリノベーションは林さん指揮のもと、全スタッフ総動員で行われた(撮影/片山貴博)

一番大事な「食の空間」に、最大の時間とコストを投入

―― 全部がかっこいいオフィスですけど、特にこだわった部分ってどこですか?

「やはり2階の厨房ですね。最初にこの建物を内見に来たとき、自然光が一番よく入って気持ちいいフロアが2階だったんです。いい気が流れているというか。なので、僕らが一番大事にしている食堂、食の文化をここに持ってこようと」(林さん、以下同)

―― 確かにそこらの飲食店より本格的な厨房です。

「僕らにとって食事って事業よりもある意味大事な位置づけなんです。だからそこに一番コストと時間をかけましたね。みんなで集まってご飯を食べるっていうのはクレイジーの伝統で、創業当初は代表の森山自ら米を炊いていました。一番大事なのは自分の健康、その次が仲間とのコミュニケーション。そこは昔から1ミリもブレていない。僕もここに来て健康になったどころか、細胞レベルから変えられている感じがしますね」

なんと細胞から! いいな~僕も変えられたい。【画像10】厨房を預かるダイニングチームのみなさん。「食事を提供するというより“みんなの健康を守る”のが仕事。料理だけでなく健康診断の手配や体調についての相談も受けます」とのこと。社員にとって「保健室」みたいな存在なんだそう(撮影/片山貴博)

【画像10】厨房を預かるダイニングチームのみなさん。「食事を提供するというより“みんなの健康を守る”のが仕事。料理だけでなく健康診断の手配や体調についての相談も受けます」とのこと。社員にとって「保健室」みたいな存在なんだそう(撮影/片山貴博)

業務を完全ストップし全社員でオフィスをリノベーション、その効果は?

―― ここって、クレイジーさんが入る前はどんな建物だったんですか?

「もともとは繊維メーカーの工場、その後は倉庫として使われていたと聞いています。築30年なんですが、こういう歴史のある建物を自分たちでリノベーションして変えていくことに価値があるんじゃないかと思ってここに決めました。でも、コンディションは決して良くなくて、古さゆえの不備もたくさんあって……けっこう大変でしたね。エアコンも全部壊れていたし」

―― そんなボロボロだった面影は今や微塵もないですね

「でも、最初はけっこうヒドイ状態だったんです。2015年の3月に入居して、最初はとりあえず汚いところは目隠ししつつ使っていました。業務と並行してリノベーションして最終的に完成したのはその年の12月中旬。半分はプロの手も借りましたが、残り半分は自分たちでDIYしたんですよ」

―― それは改修コストを抑えるため?

「それももちろんありますが、どちらかというと好奇心ですね。みんなでやったら楽しそうだよねってことになり、結婚式を挙げられる方が少ない年末の10日間、通常業務を完全にストップして全スタッフ総出でDIY作業に没頭しました」【画像11】壁や天井の塗装は全て自分たちの手で行った(写真提供/CRAZY)

【画像11】壁や天井の塗装は全て自分たちの手で行った(写真提供/CRAZY)

―― 全員ってすごいですね

「僕らは創業以来『全員が共通の体験をする』ことを大事にしていて、例えば1年目は当時の全スタッフで世界一周の旅をしました。それが今回は社を挙げてのDIYだった。もちろん全員がクリエイティブな感覚に優れているわけじゃないし、正直すごい不器用な子もいるんですけど、それでも全員が平等に作業するという方針です。僕がプロジェクトマネージャーで、塗装係、やすり係とか分担して。壁、天井の塗装や3階のフローリングは全部自分たちで張りました」

―― 床の張り替えって素人には難しいんじゃ?

「いとこが建築家とか、お父さんが工務店とか、社員の身内に専門家がいたので、そういう人に手伝ってもらったりして、なんとかなりました。ほかにも社員の友達とかお客さんも助けてくれて徹夜で作業したり、日ごと人数が増えていきましたね。周りを巻き込んでいくのがうちの特徴なので」【画像12】おそろいのつなぎを着て合宿みたいな雰囲気。青春だねー(写真提供/CRAZY)

【画像12】おそろいのつなぎを着て合宿みたいな雰囲気。青春だねー(写真提供/CRAZY)

―― みんなでやって何がよかったですか?

「自らつくり上げることで社員一人ひとりが“自分の居場所”だって思えるようになりましたよね。オフィスに働きに来るのではなくて、それこそ自分の家みたいな感覚で仕事ができる。それは、クレイジーの『働くことと生きることを分けない』という考えにもマッチするところです。結果、仕事への“わたくしごと”が強まって生産性も高まったように感じます」【画像13】業務では接点のないメンバー同士を意図的に同じチームにするなど、「みんなでDIY」はコミュニケーションの深化という点でも意義深いものだったよう(写真提供/CRAZY)

【画像13】業務では接点のないメンバー同士を意図的に同じチームにするなど、「みんなでDIY」はコミュニケーションの深化という点でも意義深いものだったよう(写真提供/CRAZY)

最初は正直、師走のくそ忙しいときに業務を完全にストップさせてDIYするなんて、名前のとおり狂気じみた会社なのかな、なんて思っていたのだが、年末10日分の売上と引き換えにしてもおつりがくるくらいのリターンがあったようだ。考えてみれば、住まいと同等、あるいはそれ以上に長い時間を過ごす空間だけに、スタッフ一丸で快適な空間をつくろうというのはごくごく真っ当かもしれない。

というわけで、クレイジーのオフィスに見た哲学は……

・1に健康、2に人間関係。だからみんなでランチを食べる

・「与えられたオフィス」ではなく「自分の居場所」であることが大事

・全社員で共通の体験を! 器用な人も不器用な人も平等にDIY

いや、噂通りクレイジーかつ、めちゃくちゃいい会社でした。

ちなみに1階のカフェは社員でなくても誰でも利用できるので、ぜひ足を運んでみてください。●取材協力

株式会社CRAZY

2012年7月創業。創業者は現CEOの森山和彦、山川咲、現CRAZY WEDDING最高執行責任者の遠藤理恵の3名。「人生が変わるほどの結婚式」をコンセプトに、結婚式の常識をくつがえす完全オーダーメイドのウェディングプロデュース事業、ケータリング事業、旅の事業、イベントプロデュース事業を行う。
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