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VRエンタメは「失敗」が楽しい? バンナム小山氏が語る今までのゲームとの違い

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11月5日、デジタルハリウッド大学にて『VRC CONFERENCE 2016』が開催されました。今回は、株式会社バンダイナムコエンターテインメントのVR事業部のコヤ所長こと小山 順一郎氏と田宮 幸春氏による“VRエンタメ”について、「ビデオゲームとの違い」、「カテゴライズの危険性」、「失敗が楽しいジャンル」という3つのポイントから紹介します。

VRエンタメとビデオゲームの違いとは

VRエンタメはビデオゲームの延長線上にあるように思われがちですが、全くの別物であるとコヤ所長と田宮氏は言います。

たとえば、ビデオゲームでは一般的な”HP”という概念ですが、VRで身体に何かダメージがあった時、HPこそ減りはしますが実際には痛くないため“身体がダメージを負っている”という感覚がありません。そのため現実感を壊してしまう要因になると言います。

また、BGMについても同様のことが言えるようで、BGMを流してしまうと“このBGMは一体どこから聞こえるのか”とプレイヤーが探してしまい、BGMが流れること自体が違和感につながるためBGMは流さないようにしているとのことです。

上記の例のように、ビデオゲームでは言わばお約束となる主人公の感情・感覚に関する従来の感情移入テクニックは、VRでは通用しないとして下記の具体的な例を6つ紹介しました。

・HPゲージ制
・カメラワーク
・BGM
・状態異常(瀕死、毒、スロー、etc.)
・ヒットエフェクト、ヒットストップ
・自分のセリフ、モノローグ

ビデオゲームで使われていた手法がVRエンタメでは使えない理由として、「ビデオゲームとVRエンタメは本質が異なる」と紹介しました。

ビデオゲームは“旅番組をスクリーン越しにみるもの”で、視聴者に旅に行ってみたいと思わせる感情移入メディア。一方でVRは、“実際に旅先に行くもの”で、体験者本人による体験メディアになっていると言います。

つまり、VRは本人が体験できるので、スクリーンやテレビなどの“○○越し”がなくなったリアルな体験ができます。

そのため、ビデオゲームとVRエンタメの得意分野の差があるということを認識し、VRならではの体験を提供することが強み・可能性になると紹介しました。

カテゴライズの強制認識力

1枚のお皿が目の前に出された時、これが「高級ショップで買ったもの」と紹介された時と、「100円ショップで買ったもの」と紹介された時とでは、そのお皿自体の値段によって“かくあるべき論”が発生すると言います。

ここで言う“かくあるべき論”とは、例を参考にするなら、前者のお皿は高い値段がするだろうと思ってしまいますし、後者は安い値段のものと勝手に認識・カテゴライズします。これと同様のことがVRエンタメで起きているとコヤ所長と田宮氏は言います。

お台場のVRアクティビティ施設『VR ZONE』設立時には、まさにVR ZONEをゲームセンターというカテゴライズで括ろうとしていたと言います。VR ZONEをゲームセンターというカテゴリーに入れてしまうと、「1プレイの料金は100円で、運営効率をどのようにして、歩いているお客さんをどのようにして立ち寄ってもらうのか」という議論になってしまい、非常にもったいないと気付いたとのことです。

VRエンタメをビデオゲームで語るのも同様で、「何時間遊べて、値段は一般的な家庭用ゲームと同じような値段で」という話になってしまいがちです。ビデオゲームというフォーマットが既に確立しているゆえゆえに、VRエンタメをVRゲームにカテゴライズしがちですが、新しいものを作るときは再定義できるチャンスと捉える必要があるとのことです。

スマートフォンが普及し始めた時にもコヤ所長は同じようなことがあったと言います。
「スマホゲームというのは、今までビデオゲームを作ってきた我々からすると、我々が普段イメージするゲームではなかった。こういうものがゲームになるのかとびっくりした」と。

スマートフォンで遊べるゲームは、ゲームの再定義を行うことで、スマホゲームというジャンルを確立させました。VRにも既存の枠にはめていくのではなく、そういった新しい定義を行うことが必要だと紹介しました。

VRエンタメは「失敗すること」が楽しい

VR ZONEを運営していて面白かったのは、初見でクリアしてしまった人たちが口々に「スキーで谷底に落ちてみたかった」「クリアせずにやられてみたかった」と言う人が多かったことだと言います。

VRでは、今までできなかった挑戦ができるという楽しみ方もある一方で、できないという失敗(死んでみるという体験)が楽しめるという価値があることを紹介しました。プレイヤーは成功しても失敗しても楽しめると言います。
今までのビデオゲームでは、ゲームをクリアすることに喜びを感じることはありましたが、クリアできない時に喜びを感じることは多くはありませんでした。

こういった「失敗することの楽しさ」を提供することがVRでは可能で、難しくても大丈夫だとコヤ所長と田宮氏は言います。事実、VR ZONEで体験できたコンテンツである脱出病棟の80%、スキーロデオの90%が失敗(死)に終わっている。それでも、体験者は満足してくれているとのことです。

最後に、VRエンタメというのは、まだまだ発展途上でこれからなところが多々あるが、今後いろいろな手法やテクニックが生まれるところだとも紹介し、講演は終了しました。

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