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定年後再雇用の賃金減額に「合理性」 原告側が逆転敗訴

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定年後再雇用の賃金減額裁判 原告が逆転敗訴

定年後の再雇用「賃金減額は不合理ではない。」原告が逆転敗訴しました(東京高等裁判所平成28年11月2日)。
これは定年後に再雇用された運送会社の従業員が「正社員と同じ仕事なのに賃金に差があるのは違法だ。」と訴訟提起をし,1審東京地方裁判所は従業員の主張を認め,会社側が敗訴しました。
しかしながら,東京高等裁判所は「2割前後の減額は不合理ではない。」と判断して,従業員側の主張を退けました。

定年後、年金待機期間の労働に対する企業と従業員の認識の違い

平成18年4月から「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」が改正され,原則として事業主には労働者を65歳まで雇用の確保をしなければならないとされました。
この背景には,従前は厚生年金は60歳から支給されていましたが,その受給開始年齢が65歳に引き上げられた結果,60歳から65歳までのいわゆる「年金待機期間」の労働者の生活の安定を図るという意図があります。

他方労働契約法第20条には「不合理な条件の禁止」を定めています。
これは正社員と有期労働契約者の労働条件が「期間の定めがある」という理由だけで,正社員との不合理な差別をすることを禁止したものです。
本件裁判において定年退職した従業員は,「正社員と同じ条件で仕事をしているのに,賃金のみ差があるのは,不合理な差別だ。」と主張したのです。

事業主としては「本来なら55歳あるいは60歳で退職であったものを,65歳まで雇用継続を認め,給料も支払っているのに,給料まで正社員と同じとなると財政的に耐えられない。」と考えるでしょうし,従業員としては「65歳まで雇用継続となっているが,正社員と同じ働きをしているのに,給料だけカットされてはたまらない。」と思うでしょう。

一審と二審の判断はなぜ異なったのか?

一審東京地裁と二審東京高裁の判断はなぜ食い違ったのでしょう。
「合理性」の有無についての考え方の違いです。
一審は「財務状況等からして正社員と格差を設ける特段の事情はない。」と判断していますが,二審は「若年層を含む雇用を確保する上で,賃金減額には一定の合理性があるし,下げ幅は2割程度であり,同規模の他社と比較しても低く,直ちに不合理とは認められない。」と判断しました。
従業員は最高裁判所に上告するようですが,最高裁の判決はこれからの高齢者の継続雇用などに相当影響を与えると思われます。

本件のような紛争は年金制度を含む社会保障制度が充実していればなくなると思います。
労働法制は押しなべて社会保障制度の不整備を企業で吸収して欲しいという国の思惑が見え隠れします。
本件については、企業としても継続雇用する際に、従業員と十分な話し合いを行うこと、賃金カットの幅について配慮するなどの工夫が必要だったのではないでしょうか。

(中村 有作/弁護士)

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カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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