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認知症の症状「異食」の基礎知識~対応方法・原因まとめ~

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認知症看護認定看護師の市村幸美です。今回は、介護現場でみられる認知症の方の症状のひとつ、『異食』についてお伝えいたします。

異食とは

異食とは、食べ物ではないものを食べることを言います。中核症状である判断力の低下や失認が原因のひとつです。

出現しやすい時期

失認は認知症の中期以降に出現してくることが多いので、異食も中期以降に多くみられる行動です。

どのようなものを食べるか?

身の回りのものは、何でも口に入れてしまいます。筆者が実際に体験したのは、下記のものです。
ティッシュペーパー、トイレットペーパー
紙、新聞紙
オムツ
花(生花・造花)
薬のシート・空袋

ペットボトルの蓋
石鹸・ハンドソープ
手指消毒のアルコール(ジェルタイプ)
たばこ
バターやジャムなどの空容器
床に落ちているゴミ、埃
消しゴム

墨汁
便

便を食べている姿を見たとき、筆者は衝撃を受けました。ここに挙げたものは病院やデイサービスで見たことなので、在宅でお過ごしの場合はもっといろんなものを食べているのかもしれません。

異食の原因

失認

先にも述べましたが、まずは認知症の症状である失認が関係しています。失認の定義は以下のとおりです。

感覚機能は損なわれていないにもかかわらず、対象を認識あるいは同定することができない
参照元:DSM-4-TR精神障害の診断統計マニュアルによる認知症の診断基準

もう少しわかりやすくお伝えすると、目(視覚)から入った情報を正しく認識できないということになります。認知症の方は、判断力も低下していますから、失認と判断力の低下によって、「これは食べ物なのか、そうじゃないのか」判断できず、とりあえず口に入れてしまうということが考えられます。

空腹

空腹も原因にあげられます。認知症病棟で勤務をしていた頃、異食は食事前や明け方に多かったような印象があります。

ストレス

忘れてはいけないのがストレスです。皆さまはストレスが溜まると食べてしまう(過食)ということはありませんか?筆者はあります。認知症であっても、このストレス対処は同じなのかもしれませんね。

異食が頻回に起こる患者様のご家族とお話をするとほとんどの方が「昔から食べるのが本当に好きで」とおっしゃっていました。

対応法

危険なものは離す

基本的なことですが、口に入れて危険なものは目につくところに置かないようにしましょう。なんでもかんでも奪ってしまう必要はありませんが、洗剤類やたばこ、電池などの中毒性の高いものは管理を厳しくしましょう。

よく観察をする

異食はなんでも口に入れてしまうと書きましたが、その人によってある程度口に入れるものや時間帯が決まっている場合も多いです。筆者の経験ではティッシュペーパーだけ食べる、または明け方4時頃になるとオムツをちぎって食べる、などです。

無理に出させない

無理やり口を開かせたり、口から出そうせず、代わりの食べ物を渡して取り替えてもらうなど、できるかぎり自分で出してもらうよう促しましょう。

異食してしまったら

口のなかを確認する

もしも食べてしまったら、なにを食べたか確認しましょう。怖いのは窒息と中毒です。洗剤などの中毒性の高いものを食べたり、窒息が起こっている可能性があるときは、早急に処置を行い医師や救急車を呼ぶなどの対応をしましょう。ほかのものであっても医師に相談しておく方が安心です。

筆者の実体験

筆者がいた病棟では、異食をする人の周りにはなにも置かないようにしていた時期があるのですが、あまりに寂しいのでは…とスタッフで話し合い観察をよく行った結果、トイレットペーパーしか食べない、ということが分かりトイレットペーパーだけは注意して他のものはおいて側におくことにしました。なにを食べるか分からなくてスタッフが怖いからすべて取り上げてしまうとことがなくなり、スタッフも安心できたことで結局は患者様も安心したようで異食をはじめほかの精神症状が落ち着きました。

また、明け方4時頃にオムツを食べてしまう方には4時前後のラウンドを多めにラウンドを行い早めに発見できるようにし、もう眠らないようであれば、車椅子に乗っていただき水分をとっていただくなどの対応を行ったところ、異食がなくなりました。

さいごに

異食は認知症ケアのなかでも対応が難しいもののひとつです。今回は中核症状をメインにして書きましたが、よくアセスメントをすると本文でも少し触れたストレスも大きな原因になっていることがわかります。危ないからといってなんでもかんでも取り上げてしまうと、それが余計にストレスとなり異食を助長させてしまうこともあります。その人がなにを求めているのか考えてケアを行っていきたいですね。

この記事を書いた人

市村幸美

准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症専門のナースケアマネ市村幸美の【美Happy介護】』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。

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