仕事でEQ(心の知能指数)が求められるのはなぜ? 

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仕事でEQ(心の知能指数)が求められるのはなぜ? 

EQが必要とされるわけ

IQ(知能指数)が高いからと言っても仕事で成功するとは限りません。
むしろEQ(心の知能指数)の高い方が仕事をしていく上では有効であると言われています。
なぜEQ必要なのでしょうか?
考えていきたいと思います。

まず、EQが仕事で必要となってきたのは昔からではありません。
人間が求められる能力が変化する過程で必要となってきたのです。
人間は生まれた瞬間から時間を生きています。
生まれたら、未来を生きていくしかない宿命的なものを背負っています。
しかし、他の動植物のように早くから自立できるように成長のプログラミングがされているわけではありません。
そして人間の場合、何を持って自立とするかはいろいろな意見がありますが、とりあえず「仕事」ができるということに限定したとしても、現代社会では自立するまで20年から30年かかるとされています。

産業構造の変化に伴い必要とされる能力は変化してきた

昔は自立するまでにそこまで時間はかかりませんでした。
産業構造を見ても、第一次産業(農・林・水産業)のころは自然に関する知識・経験・体力は必要でも、全般的な高い知能は要求されませんでしたので子どもも10歳となれば立派な働き手でした。
第二次産業(生産業)のころになると、高度成長のため生産能力をあげるのに社会が知力を必要としだし、教育のレベルが上がり始めました。
技術力・科学力をあげる方に力点が置かれていたこともあって、高い知力が要求されてもいた時代であったと思います。
そして、高い知力を持つ人が技術力・科学力の向上に貢献し、さらに生産能力は上がっていきました。
一方で、高い知力を持たない人は労働力の提供という形で働いていました。
当然、高い知力を持つ人は高い報酬を得、そうでない人の報酬は低いという時代でした。
IQの高さが必要とされた時代はまさにこの頃なのです。

しかし、第三次産業(サービス産業)から第四次産業(消費産業)と移り変わっていくにしたがって、第二次産業で必要とされていた高い知力が必ずしもそれだけでは十分ではなくなってきました。
人間社会の要求に応えなければならない「仕事」の世界では、移り変わった時代に合わさなければならないのも事実です。
サービスなり消費は、個々の欲求・価値観に応えなければなりませんから、他との差別化があって成り立つもので、同じ内容のことをしていては成り立たない厳しさが要求されます。
あらゆる情報が飛び交う社会になっており、当然情報戦にもなり、高い感性・想像力・創造力が要求されることにもなります。
ですから、パターン化された高い知力は必ずしも必要とされなくなり、むしろ邪魔になるケースも増えてきました。
そして、そのような社会では心の柔軟性を持った感性豊かな人材が求められるようになってきました。
そして、それらを兼ね備えていることがEQの高さにつながっているので、現代ではEQが必要とされているのです。

EQを高めていくにはどうすれば良いか?

それではEQを高めていくにはどうすれば良いのでしょうか?
EQを高めていくには学力のみでなく、世界を広く深く知っていくための認識力が必要です。
認識を高めていくためには、いろんな対象と「関係」を取って拡げていく必要があります。
その関係の最初の出会いが母親でありあるいはそれに代わる人で、そこを基地として家・学校・地域・サークル・社会へと関係を拡げ紡いでいくうえで柔軟性を養っていきます。
知識はひとりでも拡げていけますが、関係を拡げて紡ぐことはひとりではできません。
「認識力」と「関係力」の両輪が伸びていくことは精神世界、心の世界を発達させていくことでもあります。
これらを伸ばしていくことでEQは高くなっていくのです。

EQは情動指数といい、「自己認識力」「自己統制力」「動機づけ」「共感能力」「社会的スキル」という5つの能力で構成されています。
精神と心の発達に伴ってそれぞれの力は伸びていくものでしょう。
情動=感情は人と関わることによって豊かになっていくものです。
そのためにまずは自分自身が、情動のもとである自分の身体と感覚機能の五感(触覚・視覚・味覚・聴覚・臭覚)が心地よく働いているのかを、そして働くように関わっているのかを見直し、磨いていくことが重要です。
そして、1人より誰かと関わることによって安心感と共にこれらの感覚は鋭さと柔らかさを増していきます。
感覚機能が十分に働くようになると心身の働きは軽やかになり、安心感が加わって希望が湧いて行動的になってきます。
それが想像力・創造力の基にもなり、情動の発達にもつながっていくと思います。

結局、EQを高めることは仕事で有利に働くだけでなく、人生を有意義に過ごしていく意味においても大切になっていくのです。

(須田 泰司/臨床心理士)

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