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ドラマ「校閲ガール」で注目……! 柳下恭平さんに聞く、校正・校閲ってどんなお仕事? どんな学生に向いてるの?

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女優の石原さとみさん主演で話題となっているテレビドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』。「※恋愛ドラマです。 ではありません!!」と赤文字で修正したポスターを見かけた人もいるのでは? あの赤字入れがまさに、校正・校閲のお仕事です。

本を読んでいて誤字脱字に出会うことって、なかなかないですよね。でも、自動的に完璧なテキストが仕上がるわけではありません。校正・校閲さんがきっちりお仕事をしてくれているおかげなのです。何万文字も連なる文字の中から的確に誤字脱字を見つける、まさに「匠の技」について、校閲会社・鴎来堂(おうらいどう)代表で校閲のプロフェッショナルである柳下恭平さんにお話を聞きました。

 

簡単そうで一番難しいのは一字一字確認する「つけ合わせ」

――まず、校正・校閲のお仕事内容について教えてください。

柳下恭平さん(以下、柳下):たとえば著者のいる書籍の場合、著者が執筆した文章を編集者がチェックします。編集者がチェックしてOKが出た文章について、誤字脱字などがないかを確認していくのが校正・校閲の仕事です。

――編集者は文章の内容を確認して、著者さんに「この内容も盛り込んでは?」などとアドバイスすることもあります。対して校正・校閲さんは、著者と直接コンタクトを取ることはないんですね。

柳下:そうですね。仕事は4つの作業に分けられます。(1)つけ合わせ、(2)赤字照合、(3)素読み、(4)事実確認です。校正・校閲の言葉を現場で使い分けることはあまりないのですが、詳しく言うと(1)(2)が校正、(3)(4)が校閲です。

校正は、読むというより「くらべる」作業なんですね。つけ合わせは、著者の書いた原稿がすべて正しく校正刷り(出版用に体裁を組んだ試し刷り)に反映されているかを一字一字確認します。赤字照合は、再校に初校の修正点がきちんと反映されているかの確認。

校閲は「読む」仕事です。素読みは、誤字脱字がないかを確認したり、内容の矛盾がないかを見たりしていきます。事実確認は、その名の通り事実の確認。固有名詞が本当にそれで合っているのか、電話番号は間違いないかなど、場合によってはメールを送ったり電話を掛けたりしてファクトチェックを行います。

――とっても地道な作業だと思います!

柳下:そうですね。実は、簡単に思われるけれど一番難しくて、なおかつ一番基本的な作業がつけ合わせなんです。作業をするときは、前後の文字を見えないように隠して、本当に一文字ずつ確認していきます。「フロム・エー」であれば、「フフ、ロロ、ムム、・・、エエ、ーー」というように。なぜだかわかりますか?

――うーん、なぜでしょう??

柳下:たとえば「あいうえ」と書いてあったら、普通の人は次に来る文字を「お」と想定します。けれど著者が書いたのは「あいうえか」かもしれませんよね。次の文字を想定してしまうと、正確なつけ合わせができないことがあるのです。

 

「悔しがれる人」は校正・校閲の才能がある?

――なるほど……! 思い込みから来る間違いを防ぐことも必要なのですね。校正・校閲に向いているのは、どんなタイプの人だと思いますか?

柳下:じっと座っていられるかどうか、というのはありますね。編集者やライターのように、アポを取って取材に出ていく、という仕事ではありません。

あと、悔しがることができるかというのもポイントですね。先輩のやった作業と比べて、5個も誤字脱字を落としてしまったときに「しょうがないな」「自分の書いた文章じゃないし」と思っちゃう人は向いていない。

――コツコツ仕事する人が向いていそうなイメージがあります。

柳下:そうですね。締め切りの日にいきなり200ページ全部やろうっていうのができない仕事です。ライターさんの場合、締め切りの日に一気に取り返すこともできるけれど、校正・校閲は毎日10ページを10日やる、というように1日の作業量を決めないとクオリティーが担保できません。

――すごく集中力が必要なんだろうな、と思います。集中力を切らさないために気を付けていることはありますか?

柳下:体調やメンタルを安定させること。たとえば、お腹が減っていても満腹でもダメなので、腹6分ぐらいを常にキープするとか。部屋の温度も、寒すぎず暑すぎず適温で。集中力はじわじわと落ちてしまうものなので、「今、集中力落ちてきているな」と自覚することも大事です。

――アスリートみたいなストイックさです。

柳下:かなり体力を使いますね。風邪をひかないようにマスクをして、うがい・手洗いとか、体調管理のために一汁三菜を心がけるとか。集中して情報に潜り込む面白さというのが校正・校閲にはあって、そのぐらい集中して仕事をすると脳が活性化するのか、眠れなくなることもありますね(笑)。

 

どんな学生さんに勧めたい?

――これまで、「この間違いを見つけられなくて悔しかった」という失敗はありますか?

柳下:仕事をはじめたばかりの頃、小説の中の「虻」の文字が「虹」になっているのを、つけ合わせで見つけられなかったことがあります。2人でやっていた仕事で、相棒が拾ってくれたから良かったけれど、あれは悔しかったですね。

――逆に、「この間違いを指摘できてうれしかった!」と思ったのは?

柳下:海外の起業家が書いた翻訳書で、「うなぎの寿司を食べた」って書いてあった部分があったんですね。でも場所からすると江戸前だし、「これは穴子じゃないかな?」って指摘したことがあります。英語ではどちらもeelなので、訳しづらいのだと思います。

――ところで、今回の取材自体もウェブ上の記事ですが、ウェブの記事は「誤字脱字が多い」「信頼性が低い」と言われがちです。これは、ウェブの記事には校正・校閲さんをつける予算がない編集部が多いから……ということもあると思います。今後は、ウェブの記事にも校正・校閲がつくようになると思いますか?

柳下:結論から言うと、ウェブの記事にも校正・校閲が入るようになると思います。ただ、書籍とウェブでは求められているものが違うという面もありますね。

たとえば、テレビのテロップの校閲の話を聞いたことがありますが、その場合、作ったテロップが10秒後に全国放送されるという世界。雑誌や書籍が、正確な情報をアーカイブして長く売って、時代を作っていくことに美意識を感じているとしたら、テレビの報道は1秒でも速く情報を出すことに美意識を感じている。美意識が違うところに技術をそのまま使うことはできませんから。

――ウェブの場合もスピードが重視されているところはありますね。

柳下:ウェブの場合、書き手が同時に読み手になるのが現実的なのかなと思います。意図しない炎上をどう防ぐか、誤読をどう防ぐか、アップデートしたときにリンクの間違いはないか……、品質管理としての校閲の部分を、書き手の方も覚えるといいのではないでしょうか。

――どんな学生さんに、校正・校閲の仕事を勧めたいですか?

柳下:本が好きで、本を作りたい人、本に関した仕事をしたい人って多いと思います。でも、「本を作りたいけれど編集者は違うな」っていう人もいるんじゃないかな。そういう人に、DTP(コンピュータ上で本の組版を行う仕事)とか校閲とか、制作の仕事を選択肢の一つとして考えてもらえたらいいなと思います。

――仕事に興味を持った学生さんは、まずどんな就職先を考えるといいのでしょう?

柳下:校閲部のある出版社や新聞社に入ってスキルを磨く、という人が多いと思います。鴎来堂でも、校正・校閲者の養成講座などを企画していますから、興味のある方は参加してみてくださいね。

穏やかな雰囲気の柳下さんから発せられる、ストイックな言葉の数々。毎日、大量の文字と向かい合うためには、アスリートのような体力と集中力が必要なことがよくわかりました。書籍が好き、文章が好き、読むのが好き……、そんな人は、将来の仕事の候補として考えてみても良いかもしれません。

取材・構成・文:鎌田和歌 撮影:安井信介

取材協力:株式会社鴎来堂 代表 柳下恭平 ( http://www.ouraidou.net

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