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北方領土返還 漁業・観光の経済効果は期待薄

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 北方領土は言うまでもなく国家主権の問題であるが、返ってくるとなれば、現実論として経済効果が見込まれる一方で、新たなコストが発生する。北方領土返還によって、どのような経済的メリット・デメリットがあるのだろうか? 大前研一氏が解説する。

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 日本にとってどのような経済的メリットが考えられるのか? よく指摘されているのが漁業の活性化だ。歯舞・色丹は主にコンブ漁だが、国後の周辺海域はサケ、マス、タラ、カニなどの好漁場である。

 しかし、もし返還後、現在は日ロ漁業交渉で定められている漁獲量の制限がなくなったら、外国船による乱獲の恐れが出てくる。もちろん日本が多く獲りすぎても同じ問題が起きる。水産資源の保護を考えると、返還後も漁獲量を大幅に増やすことは難しいだろう。

 もう1つ考えられるのは観光だ。返還後2~3年は物珍しさで、それなりに観光客が押しかけるかもしれない。だが、衛星写真などを見る限り、どの島も観光資源が乏しいようなので、大ブームになるとは思えない。

 なぜなら、北方領土よりはるかに観光資源に恵まれている利尻島や礼文島、奥尻島でさえ、夏季でも宿泊施設が満杯になるほどではないし、オフシーズンは閑古鳥が鳴いているからだ。というわけで、漁業や観光では大きな経済的メリットは考えにくい。

 また、かつて北方領土に住んでいた日本人が再び故郷の島に戻るかと言えば、彼らは高齢になっているので、今さらインフラが整っていないところに移り住むという人はかなり限られるのではないか。

 せっかく返ってきた北方領土を経済的に活用するため、新たに日本人を移住させるというプランも考えることはできる。しかし、それもほぼ不可能だろう。そもそも北海道は土地が有り余っているのだから、あえて北方領土で農業や酪農をやろうという人がいるとは思えない。

 北方領土での事業に何らかの補助金や税制優遇を与えるなど“ニンジン”をぶらさげて日本人の移住を促進することもできるが、それは経済的にはメリットではなくコストになる。

 唯一可能性があるのは、ロシア人による経済開発だろう。日本に返還されても北方領土に残留するロシア人は少なくないと考えられるので、その人たちに日本国籍を与えたり、ロシア国籍のままで引き続き居住することを認めたりして、農林水産業の振興に協力してもらうのだ。

 そして北方領土ではロシア人も日本人並みの収入、年金、医療などが手に入るというプログラムを作れば、ロシア全土から若い人たちが入植してくる可能性はある。せっかく返還されたのにロシア人に経済開発してもらうのは少々みっともない話だが、それほど北方領土を経済的メリットにつなげることは難しいと言える。

※SAPIO2016年12月号

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