トランプ氏が大統領になったら、日本の住宅市場はどう変化する?

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トランプ氏が大統領になったら、日本の住宅市場はどう変化する?

11月8日に控えたアメリカ大統領選。民主党のヒラリー・クリントン氏に対する共和党のドナルド・トランプ氏は、政治家未経験かつ過激な発言で知られる人物。ゆえに、経済や金融の専門家のなかからは、市場の混乱を指摘する声も挙がっています。日本にとってアメリカは主要貿易国のため、影響も少なくありません。

そこで、もしトランプ氏が大統領に就任したら、住宅市場にどのような影響があると考えられるのか、ニッセイ基礎研究所・金融研究部の佐久間誠氏に聞きました。

トランプ氏の政策で円高株安に?

佐久間氏によると、日本の住宅市場の変化を予想するうえで、まずはトランプ氏の政策を踏まえておく必要があると言います。その政策のポイントは大きく分けると3つになるそう。

「まず、トランプが大統領になったとき、アメリカの政策がどう変わるかですが、一番は不透明感が強まるということです。はっきり言って、“どうなるかよく分からない”というのが特徴です。そして二番目には、『グローバリズムと格差』という問題。トランプ氏は強硬な移民政策を打ち出しており、反グローバリズム、アメリカファーストであることに間違いないのですが、一方で格差縮小はどうかというと、金持ち優遇の政策といえます。反グローバリズムを主張することで中間層や低所得者層の心をつかみつつ、ちゃんと金持ち優遇の政策も提示している。八方に配慮していることを踏まえると、いい加減な政策ではないということです。

そして、三番目の特徴として挙げられるのは、『経済の長期停滞への対応』です。リーマンショック以降、各国の中央銀行が金融政策を打ってきましたが、その有効性が低下しているということ、そして経済成長が弱まっていて、生産性が低下しているんじゃないかと言われています。世界的に経済成長が難しい時代になってきているのではないかという懸念があるんですね。その解決策として、金融政策がダメだったら、減税をしたり、財政支出したり、規制緩和をしたりという手段が考えられるのですが、トランプ氏もそうした政策を打ち出しています」(佐久間氏、以下同)

ちなみに、トランプ氏が表明する大型減税では、法人税と所得税の引き下げで、10年間で合計4.4兆ドル の減税を見込んでいるとか。とくに所得税率を7段階から3段階に変更し、最高税率を7%近く引き下げる点は、佐久間氏が指摘する「金持ち優遇政策」にあたるようです。これによって、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」、いわゆるトリクルダウン理論を実践しようというわけですが、低所得者層の経済環境が上向くのかというと、「分からない」と佐久間氏。

「ちなみに、インフラ投資についてはヒラリー氏が2750億ドルと打ち出している一方、トランプ氏は『少なくとも2倍にする』とざっくりしたものではありますが、実施することは表明しています。これらをまとめると、トランプ氏の政策は大きな方向転換を意味しますが、すべて実現できるのかは疑問です。金融市場の短期的な反応としては、まず考えられるのがパニック。投資家はリスクを回避するために資産を売却し、株安、円高につながることにもなると思います」

先行きの不透明感から住宅購入を一層リスクに感じてしまう

なお、アメリカのブルッキングス研究所という大手シンクタンクでは、トランプ氏が大統領になったら、日経平均が13%下がり、円高が4%進むと試算しているそう。これが、本題の「日本の住宅市場の変化」にかかわってくると言います。

「日本では、東日本大震災以降、建築コストの高騰がひとつの大きな問題になっています。それは人が足りないだけではなくて、建築材が高いことも要因のひとつ。それが円高によって、建材の輸入費用が安くなれば、住宅を買いやすくなる、そういう意味では日本にとっては良いかもしれないですね。ただ、円高株安は日本経済全体を考えると悪い影響を及ぼします。世界の貿易量が減って、日本の輸出企業が儲けられなくなる。そうするとこれまでの賃上げやデフレ脱却という動きにストップがかかる可能性があります。先行きの不透明感が高まると、なかなか家を買おうという気持ちにはならないですよね」

この不透明感の高まりが、家の購入をリスクだと捉えるマインドを増幅させてしまう可能性につながるようです。

「デフレ脱却の動きが弱まると、住宅ローン金利は低いまま推移する可能性が高くなります。もっと下がるかもしれません。つまり、住宅ローンはどちらかというと借りやすくなるでしょうし、メーカー次第かもしれませんが、建築コストが安く抑えられれば、住宅の費用も安くなるかもしれません。しかし、株安が進んでしまうと個人の消費マインドは上向かない。そのため、住宅市場が活性化するとは考えにくいと言えるでしょう」

経済の再生を見据えた金融緩和で円安株高を狙ってきた日本にとって、大きな痛手になることは間違いなさそう。とにもかくにも、アメリカの新リーダー誕生までもう間もなく。日本の住宅メーカーのみならず、これから住宅購入を考えている人にとっても、大統領選がどう決するのか目が離せなさそうです。●取材協力

・ニッセイ基礎研究所 金融研究部 佐久間誠氏
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