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沖縄・高江問題が全県的気運に至らない合理的な理由

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 沖縄県北部の高江が基地反対運動で注目を集めている。同地の在日米軍北部訓練場で進むヘリパッド建設計画。その工事を止めるため、反対派が訓練場の入り口を取り囲む。それを排除しようと機動隊が出動、反対派に対して差別発言を浴びせたことで非難の声が高まった──10月15・16日、評論家の古谷経衡氏が日々深まる混迷の現場、沖縄・高江を訪れた。

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 建設反対・推進に分かれる左右両極の激突、活動家の逮捕、機動隊の「土人」発言で沸騰の現場・沖縄県国頭郡東村高江のヘリパッド正面N1ゲート前まで長駆やってくると、私はなんだか徒労にも似た既視感を自覚する思いになった。200人程度の中・高年の支援者がN1ゲート前に座って、シュプレヒコールを上げている。

 音頭を取る男性が歌唱し、次々と支援者を紹介する。「私は三里塚闘争に於いて~」という熱狂調の自己紹介が始まるや否や、私の既視感はやや幻滅に変わっていく。

 抗議集会を取り囲む官憲と警備員に「お前は自民党、アメリカの味方なのか!」と詰め寄る人々によるひと悶着あり。この官憲への抗議の動態は、「お前は支那、朝鮮の味方なのか!」と官憲に詰め寄るある種の極右団体に似ている。デジャブの根源はここだ。

 那覇から都合100km離れた東村の高江地区は、本当に絵に描いたように何もない沖縄北部の過疎地域であり、米軍の北部訓練場約7800haに取り囲まれている格好である。ここへのヘリパッド建設が持ち上がったのは90年代に遡るが、建設が本格化したのは2010年代に入ってからだった。

 この高江の問題を一躍有名にしたのは三上智恵監督のドキュメンタリー『標的の村』。沖縄統治時代の60年代、高江集落の近傍に米軍のジャングル訓練施設「ベトナム村」が建造され、模擬標的として高江集落の人々が南ベトナム人民に扮装し、訓練の一環として協力させられていたというスクープに端を発する。米軍の沖縄統治時代の暗部をえぐる傑作である。

 しかし、この高江ヘリパッド問題、どうも全沖的気運には至っていない。反対の熱狂は身内だけに限局されている印象を受けた。N1ゲートへの交通手段は車と、那覇・名護方面からボランティアが運行するバスに限られているが、その中の少なくない数がレンタカーを意味するナンバー「わ」「れ」。つまり県外からの支援者である。そもそも高江集落は人口150人程度なのだから、県外支援者が多数を占めるのは必然といえよう。

 だが、所謂高江問題が全県的気運に至らないのには、合理的な理由がある。今年6月19日、米軍属の男が沖縄県うるま市の女性を殺害し、同市の雑木林に遺棄した蛮行を糾弾する那覇市での県民大会には、6万人ともいえる地元県民が詰めかけた。

 95年の米兵少女暴行事件、04年の沖縄国際大学ヘリ墜落事件など、在沖米軍の言い逃れのできない犯罪行為に、地元の怒りが沸騰するのは当然のことだ。しかし、こと高江に至っては、「普天間や嘉手納と違い、圧倒的に過疎地である」という点において様相を異にするのだ。

 海兵隊の狼藉に当然鋭敏になる地元でも、高江に無関心のものは少なくない。私はレンタカーで高江を含む沖縄北部を走行したが、高江から最も近いコンビニまで約50km、最も近いガソリンスタンドまで30kmという土地なのである。

【PROFILE】古谷経衡/ふるやつねひら。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』。最新刊は『草食系のための対米自立論』。

※SAPIO2016年12月号

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