人種差別、政治や乱れたヒップホップ文化にコモンが喝、男気溢れる『ブラック・アメリカ・アゲイン』(Album Review)

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人種差別、政治や乱れたヒップホップ文化にコモンが喝、男気溢れる『ブラック・アメリカ・アゲイン』(Album Review)

 2014年リリースの10thアルバム『ノーバディーズ・スマイリング』に続く、通算11作目のアルバム『ブラック・アメリカ・アゲイン』をリリースしたコモン。ブラック・ミュージック界の神様的存在である、スティーヴィー・ワンダーをゲストに迎えた先行シングル「ブラック・アメリカ・アゲイン」のミュージック・ビデオが、アルバムのリリースを前に、大きな話題を呼んだもの、記憶に新しい。

 近年アメリカで問題されている、白人警官が黒人に暴力を振るうシーンから始まるこのビデオは、実際に今年7月、ルイジアナ州で起きた事件の映像が使われている。黒人差別を切に訴えるこの曲で、フックを担当するスティーヴィーは「問題を解決する一つの方法は、その人を自分の大切な人のように感じること」と叫ぶように歌っている。

 このタイトル曲からも分かるように、本作はメッセージ性を重視した作品になっていて、人種差別だけでなく、格差問題や政治についてなど、今コモンが感じている様々な社会問題をテーマにしている。“クラブで踊って金撒いて……”という、ハイになるためのヒップホップが近年、多発しているが、本来はこういった“社会の問題”を訴えるために、ヒップホップという音楽は使われていたのだ。

 そんな、乱れたヒップホップ文化にも喝を入れた本作『ブラック・アメリカ・アゲイン』には、スティーヴィー・ワンダーの他にも、ジョン・レジェンドや、ビラル、BJ・ザ・シカゴ・キッド、マーシャ・アンブロージアス、ターシャ・コブスなど、いわゆる“実力派”と呼ばれるR&Bシンガーたちが参加している。プロデューサーは、コモンの他にも、エリカ・バドゥやカニエ・ウェストのアルバムも手掛けている、カリエム・リギンズが担当。

 重低音、ピアノ、ホーン、スクラッチなど、まさに90年代のヒップホップシーンを彷彿させるような音作りに、往年のファンも納得の内容に仕上がった、コモンの新作『ブラック・アメリカ・アゲイン』。英語に馴染みのない方でも、コモンのライムには、何かこう、グっとくるものを感じるはず。濃密な感傷も滲ませる、男気溢れたアルバムだ。

Text:本家一成

◎リリース情報
『ブラック・アメリカ・アゲイン』
コモン
2016/11/4 RELEASE
デジタル配信
https://goo.gl/QXZL1G

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