ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

被災地の心のケアや、避難所の課題を解決する──熊本や石巻のエンジニアも参加した減災ハッカソン「Race for Resilience 2016 熊本」レポート

DATE:
  • ガジェット通信を≫

東京からも多数参加!「Race for Resilience 2016 熊本」

ということで、被災地熊本を応援すべく、防災・減災ハッカソン「Race for Resilience 2016 熊本」の取材に行ってきました!

開催日の10月8日午前1時46分に阿蘇山が噴火し、ドキドキしたものの特に飛行機の運航には影響がなく、朝9時に熊本空港に到着。空港近くにあるテクノリサーチ・パーク内の会場、熊本ソフトウェアへ。

空港が閉鎖になるような雰囲気になったら、遠方からきた人たちは飛行機で移動させようという話も出ていたようですが、無事予定通り開催できてよかったです!さすが減災イベントですね。

▲熊本県が推し進める「熊本テクノポリス」の中核研究拠点テクノリサーチ・パーク

▲今回会場を提供してくれた熊本ソフトウェア株式会社の会議室でハッカソン開催!

今回のハッカソンは、宮城県石巻在住の東日本大震災で実際に被災されたエンジニアや、地元熊本のエンジニアも参加していました。

ハッカソン前のインプットタイム

まずはファシリテーターの若狭正生さん(通称:ワカサ氏)から、インプット情報の共有がありました。

まず紹介されたのは、クライシスマッパーズ・ジャパンの活動について。被災地の状況を世界中のボランティアが24時間体制で地図と震災前後の航空写真や現地写真をマッピングし、状況の把握や救済活動などの支援を行っていることを紹介。

リーダーである古橋大地さんが率いるコアメンバーが最近始めたのが、ドローンで災害地の空撮画像を撮影し、その情報をもとに地図と現地の状況をマッピングする「DRONE BIRD」プロジェクト。地図の大切さを訴える動画が素晴らしく感動的なので、必見です!

▲動画で公開中!「ドローンで災害地を救え!世界初の救援隊DRONE BIRD始動

続いては、今回のスポンサー2社からのプレゼンテーション。

一社目は、孫泰三さんが代表取締役社長を務めるスタートアップ支援企業、Mistletoeの大塚智子さん。熊本出身で防災・減災を勉強し、自身も防災ガールの一員としても活動している。これまでの経験やノウハウ、反省点を今後の震災に活かすべく、活動しているのだそう。

▲Mistletoe株式会社 大塚 智子さん

二社目は、NECソリューションイノベータ九州支社の上田健次さん。熊本地震の際にはクラウドバックアップの無償サービスを熊本と大分で行ったり、Code for Oitaの一員として、クライシスマッピングの活動にも積極的に参加。熊本地震の事例についても紹介がありました。

▲NECソリューションイノベータ株式会社 上田健次さん

特に興味深かったのが、SNSの分析から観光客の周遊ルートを分析し、時系列でその変化をマッピングしたもの。震災後は明らかに周遊の形跡が減っていることがわかります。

私もGWに大分県の別府温泉を旅行で訪れたのですが、地元の方の観光客が例年の三分の一くらいと激減(特に海外からの訪問客)したという話を聞き、早く復興するとよいなあと胸を痛めておりました。

6月以降は復調のきざしを見せるものの、熊本から大分のルートは減ったまま、熊本以外のや鹿児島や宮崎への周遊が増えているようです。

現地状況で得た災害ボランティアやスマホ・Wifi活用などの当時の状況や課題などもインプット情報として紹介されました。

若狭さんからも、減災のための情報発信・収集などの活動を行うプロジェクト「減災インフォ」や、ボランティアの心得などを説明。情報、データ、知識を視覚的に表現するインフォグラフィックの有用さを力説していました。

たしかにテキストだけの情報よりも、ひとめでわかるイラストや図解のほうが目を引くし、理解しやすいですよね。

アイデア出しのマンダラアート!スピードストーミング!

これまでのインプット情報を参考にしながら、ハッカソンで作るプロダクトのアイデア出しを以下のマンダラートを使って行います。

中央の「防災減災」という単語から連想する言葉を8つ、周りの枠に記入。さらにその単語から連想する8つの単語を記入していきます。

記入したシートを時計回りの位置にいる隣の人の回し、気になる単語にチェックをしたり、意見を記入したりしながらどんどん回していきます。皆さん、超真剣に書いてます。

ひとしきり、アイデアを出した後は昼食タイム。事務局が用意したお弁当をいただきます。

昼食後は、スピードストーミング。5分交代のペアブレストで意見を交換し合い、自分のアイデアを固めていきます。そのアイデアをA4の紙に記入して、いいと思ったアイデアに星を付け合います。

会場を見渡してみると、myThingsやRealSense、Bocco、EPSON BT-300といった最新技術や製品などが用意されており、自由に使うことができるとのこと。

アイデアとチームが固まってところで、いよいよ開発が始まります。

熊本と阿蘇の様子

ここで一旦、中抜け。宿をとっていた黒川温泉郷に向かいました。熊本地震の影響で道路は一部通行止めとなっていたため、迂回してミルクロードを通ったのですが、景色は最高です。

阿蘇山の噴火らしき煙が少し見えるものの、熊本から阿蘇に向かう間は特に問題はありませんでした。

翌日再びハッカソン会場に向かうため、1日1本しか運行していないバスに乗り込み、阿蘇から熊本空港へ。途中、いまだ復旧できていない阿蘇神社に立ち寄りました。一日も早い社殿復旧を祈り、気持ちばかりの募金をしました。

▲阿蘇神社 社殿復旧に向けて

熊本の自宅が被災した方のお話

一日目の夜は、会場に仕事が終わって駆け付けたスタッフの岩岡健さんが震災体験を話してくれたそうです。

岩岡さんの自宅は6弱を観測した西原村にあり、前震の影響もあったので、奥さんの実家がある阿蘇市に避難。

そして本震が発生し、別の場所に避難しようとうねる道を乗り越えて、この風景に遭遇したのだとか。この時はもう笑うしかなかったと語っていました。

それを冗談を交えて説明してくれる熊本の地元の人たちは強いですね。

ちなみにその後も朝方まで開発は続き、近くの温泉に行ったり、お酒を飲みながらハッカソンをしていたらしいです。

二日目もわいわい楽しく開発

二日目の午後。再び会場の様子をのぞくと、九州名産のからし蓮根とピザがmyThingsチームから差し入れられ、なごやかな休憩タイム。

なんだかクマのぬいぐるみのようなものが光っています。何ができるんだろう…。

いよいよ、ハッカソンの成果発表!

ハッカソン成果発表のトップバッターを務めたのは、なんとファシリテーターである若狭さん。避難所におけるイラストが入ったポスターの大切さを訴えていましたが、誰でもすらすら描けるものではありません。

そこで、若狭さんが作ったのは、災害時など時間がとれないときに、効果的なポスターを素早く作れる「イラスト入りポスター作成システム」。

ボタンを押すだけで、キャッチコピーをテキスト解析Web APIをNodo.jsを使って解析。内容に合ったイラストを自動的に選んでレイアウトしてくれるというものです。

子供からお年寄りまで親しみやすいいらすとやの絵を使うことや、手作り感あふれるPowerPointぽさで作成できるのがポイントなのだとか。

なお、この作品はあくまで発表の予行練習のようで、審査対象ではないのに徹夜で勝手に作っていたようです。すごい(笑)。

被災者の心をケアをするクマ型コミュニケーションデバイス

さて、続いてはハッカソンチームからの発表です。

AAAテディーベア教室チームが開発したのは、被災者の心をケアをするクマ型コミュニケーションデバイス「つなぐま」。

災害直後は災害の衝撃や興奮状態が続きますが、さらに数週間経過すると、抑えられていた感情が湧き出します。

そんなストレスを少しでも軽減させてあげたいという想いで作ったのがこの「つなぐま」。

避難生活先で出会った人と話をするきっかけとなったり、くまをタッチし合うとSNSアカウントが交換できるので、コミュニケーションも図れます。

また、抱くことでのリラックス効果や、モバイルバッテリやライト・小物入れを装備することができるサバイバル効果もあるのだとか。

熊本市指定透明のごみ袋とダイソーで購入した綿、ホッチキスで制作しているので、材料費もかからずお手軽に作ることができます。

ちなみにテディーベアの型紙は、松山パイル織物のサイトで公開されているPDFを利用したそうです。

発表後の質疑応答でも意見が出ていましたが、現地でワークショップを開いてみんなで作るとさらに楽しくストレス発散ができそうですね。

参考資料

Hacklog「つなぐま
動画「つなぐま – Race for Resilience 2016 熊本

避難所の人口構成を把握し、必要な物資の数を想定

チームひなんじょが作った作品は「ShelterCare」。当たり前ですが、避難所運営のリーダーは、常に経験不足です。心の準備もなければ、訓練経験も知見も少ない初心者がほとんどではないでしょうか。

そんな避難所リーダーたちが求める情報は避難所運営の指南書。そして最も苦労しているのは、避難民の人口構成。

必要な物資の数を把握するために必要なのですが、現地は人の出入りも激しく、数を数えるのは大変な苦労を伴います。ましてやその中で、優先順位を決めて物資を供給するのは至難の業なのだとか。

そこで今回作ったのは、避難民の入口にセンサーカメラを設置し、画像を取得。Microsoft Computer Vision APIを使って年齢や性別を判別し、Firebaseに投げてWebサーバーから表示させます。

その人口構成を把握し、必要な物資の数を予測し、避難所運営のアドバイスをお伝えするアプリケーションです。

実際にカメラで撮って、判別してみたのがこちら!

データがどんどん貯まり、避難所内の人口構成を把握することができます。

人口構成をもとに、必要な物資をアドバイスします。赤ちゃんが多ければおむつや粉ミルク、女性に必要な生理用品数の目安がわかります。

将来的には、Webカメラで撮影した画像情報から体調不良の人を発見したり、物資依頼システムとの接続やリーダーや運営チームの心のケア、そこから知見をどんどん貯めてチュートリアルも充実させていきたいとのこと。

これはボランティアや物資の供給や必要とする人とのマッチングに役立つ、素晴らしいシステム。ぜひ、被災地で活用できるよう実装を進めてほしい作品でした。

発表後の質疑応答では、ダブルカウントについての対応が問われましたが、出入り情報を撮るのでその心配は少ないとのこと。同じ人物が何度も物資を受け取る不正受給についても撮影画像でチェックできるので、対応できるのではないかとのことでした。さすがです。

参考資料

Hacklog「ShelterCare
動画「ShelterCare – Race for Resilience 2016 熊本

子どもたちが被災地のヒーローに!レジリクエスト

続いての作品は、チームカニバイキングの「レジリクエスト ~ 避難所のヒーロー」。すみません、なぜカニバイキングなのかは聞きそびれました…。

▲カニバイキングをアピールするチームの集合写真

そのチームカニバイキングが避難所の課題として洗い出しをしたところ、主に以下の3つが挙げられていたそうです。
初めての人同士がぎすぎすした雰囲気になる
子供は暇でゲームをしている
インターネット環境がない

そこで作ったのがレジリクエスト。大人が依頼したクエスト(お願いごと)をクリアすると、お菓子をもらえる仕組みです。

実際におむつを買いに行けないお母さんが、レジリクエストを使っておつかいを頼むデモを披露。

おつかいをクリアすると難易度に応じたポイントが付与され、回数を応じて貯まっていきます。ポイントはお菓子に交換できるので子供も喜んでおつかいに行くし、大人も家事や仕事に専念できて大助かりというわけです。

熊本の避難所で掃除しないでボランティアにまかせっきりで何もしなかった大人たちが、子供にゲーム感覚で仕事をやってもらったら、恥ずかしくなったのか手伝ってくれるようになった成功談を参考にしたのだとか。たしかに大人は、子供のお手本になるように行動したいですよね。

そしてネットワークが断絶されたときを想定し、ローカルWifiネットワークシステムを使うことを提案。RapsberryPi等の小型ボードPCとWifi(ローカル)でサーバーを構成し、サーバー上のゲームシステムに住人が自分の端末のブラウザでアクセスするのでインストール不要です。

小型、低消費電力、インターネット回線不要なので、情報的に遮断された被災地の避難所でも役立つネットワークシステム。これでゲームだけでなく、情報伝達や簡易チャットなどのシステムも実装可能となります。お役立ち度高い!

子供が買い物するお金はどうするんだろうと思ったのですが、地元の地産品で変えることができたらいいのではとか、お兄さんと遊べる券がいいのではといった意見が出ていて、避難所の状況に合わせていろいろカスタマイズしていけそうですね。

参考資料

Hacklog「Resili-Quest:レジリクエスト ~ 避難所のヒーロー
動画「Resili-Quest:レジリクエスト ~ 避難所のヒーロー – Race for Resilience 2016 熊本

地震から生き残るスキマを作る「SUKIMA VISION」

地震が起こったときに、部屋の中でどこが安全か?

実際に東北大震災で倒壊して多くの人が亡くなったアパートで、電子レンジが支えとなって助かったことを参考事例にして作られたのが、SUKIMAチームの「SUKIMA VISION」。

日頃から安全対策ができるように、室内の写真を送ると画像解析して危険度と解決法を教えてくれるシステムです。


Search: 自宅の室内写真を撮影して、画像から安全度を解析
Share: 共有された画像データをもとに、安全対策の知識を共有
Move: 分析結果をもとに、地震から生き残るスキマを作る、逃げ道を作る

さらなる安全策として、3Dでシミュレーションもできる「HoloLens(ホロレンズ)」を使えば訓練もできるのではないか、家具の材質をスマホで叩いた響きで判断できるようにしたらどうか、対話式での確認ができたり、「危険度」を「生存確率度」にしたほうが危機感が高まりそうといった意見が飛び交っていました。

参考資料

Hacklog「SUKIMA VISION
動画「SUKIMA VISION – Race for Resilience 2016 熊本

今回の作品はMashupAwards2016への応募が前提であったり、Hacklogへ登録することで世界中に伝えたり、世界中どんな人でも防災・減災にかかわるツールとして自由に利用ができるように、GitHubのpublicリポジトリとして公開することを原則としているのだとか。

防災、減災に役立つアプリ、ツール、プロダクトが今後もどんどん生まれるといいですね!

若狭さんに聞いた後日談

熊本から参加したエンジニアたちは今回のハッカソンでものを作る楽しさを知り、「ヒャッカソン熊本」なるものを熊本市の駅前で開催したのだとか。。

若狭さんいわく、「東北大震災で壊滅的な被害をうけた石巻からエンジニアが来てくれたり、このハッカソンをやったあとに地元のエンジニアがモノづくりイベントを開いたことが本当にうれしい。こうして次のものづくりにつながり、それを楽しんでくれる人が増えていってくれたらと思っています」とのこと。

本当に素晴らしい取り組みだと思います!また楽しいハッカソンをやるときは、呼んでくださいね♪

カテゴリー : デジタル・IT タグ :
CodeIQ MAGAZINEの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP