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稀代のメロディーメイカーぶりが光る、ジェイソン・ムラーズの『ウィ・シング、ウィ・ダンス、ウィ・スティール・シングス』

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2002年、メジャーデビューしたばかりのジェイソン・ムラーズは、シングル「Remedy(I Won’t Worry)」がヒットし、アルバム『ウェイティング・フォー・マイ・ロケット・トゥ・カム』も100万枚を売り上げるメガヒットとなる。それまでサンディエゴの小さいコーヒーショップで歌っていただけに、突如現れた無名の新人のビッグヒットは大きな話題となった。ラップ、フォーク、ソウル、ロック、ポップス等がミックスされた彼の音楽は、オーガニック系のミュージシャンたちとの交流もあって成長し続け、メジャー3作目となる本作『ウィ・シング、ウィ・ダンス、ウィ・スティール・シングス』で全世界の注目を集めることとなる。名曲だらけと言っても過言ではない本作が、現時点での彼の最高傑作であるのは間違いない。

ミュージカルを学ぶことで、優れたヴォーカリストに転身
1977年、アメリカ東部のバージニア州で生まれたジェイソンは、同郷のグラミー受賞者でもあるデイブ・マシューズ・バンドと地元で人気のエージェント・オブ・グッド・ルーツというふたつのグループを愛聴していたようだ。どちらもカントリーやフォークをバックボーンに持つルーツロックグループで、現在の彼の音楽に少なからず影響を与えている。そもそもバージニア州は東部ではあるものの南部に近く、セイクレッド・ソング(白人の宗教歌)やブルーグラス音楽のファンが多い場所だけに、ジェイソンのサウンドに見られるルーツミュージック的な側面は、彼のその出自にあると言えるだろう。
高校卒業後、ジェイソンはニューヨークへと移り、演劇学校に通うのだが、これはデイブ・マシューズが音楽をやる傍らアマチュア演劇の俳優も務めていたことに感化されたものと思われる。まさにジェイソンのデイブ・マシューズへの傾倒がよくわかるエピソードだが、結局は1年ほどで学校をドロップアウト、歌のトレーニングやソングライティングに集中するため、バージニアに戻っている。

サンディエゴに移住、コーヒハウスでの修行時代
故郷で音楽に没頭し、歌に自信をつけた彼は、新たな展開を求めて遠く離れた西海岸サンディエゴに移り住む。そして、毎晩のようにコーヒーハウスで歌いながら力をつけ、徐々に人気を獲得していく。2001年に自主制作でリリースした『Live at Java Joe’s』(‘01)と『Sold Out (In Stereo)』(’02)の2枚のアルバムが音楽関係者の目に止まり、大手レーベルのエレクトラとの契約が決定する。

大手レーベルとの契約とデビュー作品での大ヒット
2002年、レゲエ、ラップ、フォーク、ロックなど、さまざまなスタイルをミックスした彼のメジャーデビュー作『ウェイティング・フォー・マイ・ロケット・トゥ・カム』がリリースされた。このアルバムは新人のデビュー作にもかかわらず、全米で100万枚を売り上げ、一挙に彼の名前は多くの音楽ファンに知られることとなる。
ただ、この時点では彼自身がレコーディングに慣れていないことや、レコード会社の作品への介入等もあって、思い通りにアルバムの制作ができなかったようだ。続く『Tonight, Not Again: Jason Mraz Live at the Eagles Ballroom』(‘04)は、前作のヒットを受け、ツアー生活に明け暮れるようになるのだが、その時のライヴの模様を収録した2枚組(CD+DVD)でのリリースとなった。彼の創作欲は依然として続いていたが、前作の苦い思いからアトランティックへの移籍を決め、2005年に移籍後初の『Mr. A–Z』をリリースする。プロデューサーにはU2やデイブ・マシューズ・バンドも手がけたスティーブ・リリーホワイトを起用し、前作の多様なサウンドは残しつつも彼のアコースティックな感覚を活かしたオーガニック的なサウンドを展開している。彼のヴォーカルはますます磨きがかかり、ソングライティング面でも確実にレベルアップした秀作となった。このアルバムはセールス面では前作には及ばなかったものの、50万枚を突破するヒットとなる。この頃からは長いツアー生活が続き、スタジオに入る時間がなかなか取れず、多くの曲をストックしながら次作のレコーディングに備えていた。

秀逸なメロディーが炸裂する本作『ウィ・シング、ウィ・ダンス、ウィ・スティール・シングス』
彼のメロディーメイカーぶりは、メジャー1作目2作目を聴けばよく分かるが、彼自身は生ギター1本で気持ちが伝わるような、アコースティックな作品で勝負したいと考えていたのではないかと僕は思う。2008年初頭にリリースされたインディーズ時代のライヴを集めた『Live & Acoustic』では、生ギター1本で勝負していて、このスタイルこそが彼の目指すスタイルではないかと思うぐらい、伸び伸びとしたパフォーマンスが聴けるのだ。
ジャック・ジョンソンやGラブのように、オーガニック系というかもう少しフォーキーなスタイルで、要するにインディーズ時代の形で彼の歌が聴きたいと思っていた矢先、本作『ウィ・シング、ウィ・ダンス、ウィ・スティール・シングス』(‘08)がリリースされた。全曲、文句なしの出来で、僕の望んでいたフォーキーさが増しているし、彼のジェームス・テイラーばりの巧みなヴォーカルも最高だ。とにかく、これだけ良い曲を書けるソングライターは、数十年にひとりだと断言してもいい。2000年代に入ってリリースされたアルバムで、これほど繰り返し聴いたアルバムはほとんどなく、ポピュラー音楽史上に残る名盤であることは間違いない。
アルバムに収録されているのは全部で12曲。大きく分類すると、フォーキーな「I’m Yours」「Lucky」「Live High」、オーガニック系の「Details In The Fabric」「Coyotes」「The Dynamo Of Volition」「A Beautiful Mess」、ポール・マッカートニー風の「Love For a Child」「If It Kills Me」、ポップソウル調の「Make It Mine」「Butterfly」「Only Human」と、だいたい4パターンになるが、どれも平均点を大きく上回る名曲ばかりだ。本作を愛している人はもちろん異論はないと思う。僕が声を大にして言いたいのは「I’m Yours」は確かに名曲だけど、他の曲も全然負けていないってこと。もし、「I’m Yours」は知ってるけどアルバムは聴いたことがないという人がいるなら、騙されたと思って聴いてみてください。あ、「I’m Yours」を知らない人もぜひ!
余談だが、本作『ウィ・シング、ウィ・ダンス、ウィ・スティール・シングス』の3枚組デラックス・ヴァージョンは強力なので少しだけ紹介しておく。ディスク1には本作が、ディスク2には「I’m Yours」をはじめ、本作に収録された名曲群のデモっぽいセッション演奏を収録、ディスク3はDVDで彼のライブやツアーのドキュメンタリーが観られるという豪華版なのだ♪

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