ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

第83回 雑居生活(その2)

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 雑居で朝のすべての事が終了すると、出房を待つだけである。朝は忙しいので用便に行く者はいない。大体、夜型に変更しておくのである。私も新入雑居からそのようにしていた。
 「出房準備」という刑務官の掛け声で、所定位置に坐して待つ。どのように行進して、どこで止まるかなど、先頭の者(四番席)をきちんと見ておくように言われる。2~3日後には私が先頭となるのだそうだ。

 先頭になったとき、止まる場所を行き過ぎようとして、後ろから引っ張られ止められた。帰房してから怒られた。
 刑務作業を終えて、行進をして帰房し点検を受けると、夕食であって、朝食と同じように何も覚えられない私は怒られ、食事の配分が公平ではないとまた怒られるという状況だった。

 しかも、朝食とは違って、カレーなどのスプーンを使う料理も出る。だから、各自のスプーンを用意する必要がある。これは配食の前にすべきことである。つまり、その日の夕食が何かを覚えていなければならないということである。
 その日その日の献立(というか半月の献立は昼食の際に回ってくる紙に書いてある)であれば、さすがに私でも覚えておくことはできる。しかし、連休が続いた場合、そのすべてを覚えておかなければならない。

 「覚えていないの?」と言われることもしばしばあった。配食されてから、今晩の夕食はスプーンが必要だったなということで、そこでスプーンを用意したところで、特段何か支障が生ずるとは思えないが、そこでもそのようなことは言えない。
 概して、私は、「すみません」と言うこと以外、ほとんど会話をしなかったように思う。

 夕食後も大変な作業が待っている。これが最も辛かった。しかもローテーションはなく、新人の仕事であった。
 何かといえば、前にも書いた流し台の掃除である。流し台は大人3人が優に並んで歯磨きができる大きさである。蛇口も3個ついている。

 この大きさの流し台を、クレンザーを使って毎日掃除しなければならない。真冬であるが、刑務所であるから、温水など出てくるわけがない。手を切るような冷たい水で洗わなければならない。しかもただ洗うだけでなく、前にも書いたが、水滴がまったく残らないように、仕上げの乾拭きも必要である。
 他の者が夕食後のひとときで談笑している間、一人でもくもくと仕上げるのである。やっと終わったと思うと、四番席の者による点検があり、「ここ水滴残ってるじゃない」と注意を受ける。

 そもそも、流し台を水滴一つないようにしたところで、その後にトイレに行った者が手を洗ったりして、水滴がつくのだから、まったく無意味ではないかと思うが、そのようなことも言えない。

 その後やっと自分の時間を持つことができ、本を読んだり、手紙を書いたりする。
 テレビが始まると、みなさん自分の所定位置でテレビ鑑賞となるが、私の所定位置はテレビの真ん前になってしまうので、他の人の邪魔にならない場所に小机を持ってきて、そこで本を読んだりすることとなる。
 その小机についても、問題があったのだが、それは次回に書くことにする。

元記事

第83回 雑居生活(その2)

関連情報

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP