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多様化する「アイドル」というフォーマットの中で異彩を放つMaison book girlがメジャー・デビュー!

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変拍子が多用される楽曲、内省的な世界観の歌詞、華やかな色合いからは遠い衣装に身を包んだ女の子たち……。2016年11月30日にシングル「river」でメジャー・デビューするMaison book girlは、多様化が進むアイドルの世界の中でもなお異彩を放ってきた存在でした。それは、「メジャー・デビュー」という知らせに少なからず驚いたほどです。

メジャー・デビューに先駆けて2016年11月6日に開催されるセカンド・ワンマンライヴ「Solitude HOTEL 2F」は、キャパシティ約700人の渋谷WWW Xのチケットが即日ソールドアウトしました。Maison book girlが漂わせるクールな雰囲気とは裏腹に、彼女たちの周囲は今、ただならぬ熱気に包まれています。

化学反応の予感に満ちた結成

Maison book girlが結成されたのは2014年のことです。BiSの解散時に、そのメンバーのコショージメグミを中心にして結成することがアナウンスされました。プロデューサーは、やはり2014年に活動が終了したアイドル・いずこねこを手掛けていたサクライケンタ。BiSの中で飄々とした存在であったものの、ときに大粒の涙も見せたコショージメグミと、いずこねこでも変拍子を多用してきたサクライケンタの顔合わせは、両者を知る者に少なからぬ期待を抱かせました。まだ見ぬ化学反応が起きる予感に満ちていたのです。

Maison book girlは2014年11月24日からライヴ活動をスタートさせました。私がライヴを初めて見たのは、2014年12月4日に行われた2回目のライヴです。蝉の鳴き声が鳴り響く中でメンバーがステージに並び、そして7拍の楽曲へ。コショージメグミによるポエトリーリーディングもありました。現在のMaison book girlにも存在する独自性は、この段階においてすでに確立されていたわけです。

ファーストワンマンライブは見事にソールドアウト

Maison book girlをめぐる状況が大きく変わったのは、2015年9月23日にファースト・フル・アルバム「bath room」がリリースされ、2015年11月23日に最初のワンマンライヴ「solitude hotel 1F」が渋谷WOMBで開催された頃でしょう。アルバムをリリースした後のファースト・ワンマンライヴは、見事にソールドアウトしてみせたのです。

その半年ほど前にMaison book girlはメンバー・チェンジがあり、和田輪が参加しました。Maison book girlはこのとき、コショージメグミ、矢川葵、井上唯、和田輪という現在の4人のメンバーになります。元BiSのコショージメグミ、大阪出身で2014年に開催されたオーディション「ミスiD2015」のファイナリストだった矢川葵、福岡出身のニューカマー・井上唯、そして新メンバーの和田輪という構成です。

徹底した世界観

彼女たちは容貌こそアイドル然としているものの、アーティスト写真の多くはブルーを基調としたり、暗くて顔自体がよく見えなかったり、笑顔のないものばかりです。そうしたプロデューサー・サクライケンタのセンスは、モノトーンを基調としたアパレル商品にも反映されてきました。そして、MVでもメンバーは笑顔を見せることがありません。

メジャー・デビューするにあたって、新しいアーティスト写真を見たときにも思わず絶句したものです。ベッドの上にいるメンバーは、靄がかかったようによく顔が見えないのです。メンバー個別のアーティスト写真もまた、ベッドの上の暗がりで撮影したかのような写真。メジャー・デビューにあたっても、なおここまで世界観を貫徹してくるのかと驚きました。

プロデューサー・サクライケンタのコンセプト

そうした姿勢は音楽面にも反映されています。メジャー・デビュー・シングル「river」は3曲(各曲のインストルメンタルを含めると6トラック)を収録。「cloudy irony」はMaison book girlとしては明るい楽曲ですが、歌いだしのリズムは7拍です。アイドルのメジャー・デビュー・シングルだと考えると、前例があるのでしょうか。一方で「karma」は、パーカッシヴなサウンドが印象的な楽曲です。そして、最後の「14days」はポエトリーリーディング。Maison book girlは、音楽面でもヴィジュアル面でも、その姿勢をメジャーにおいても一貫させています。

Maison book girlは、作詞、作曲、編曲を手掛けるサクライケンタというプロデューサーによるコンセプトの産物です。彼は、大森靖子の楽曲や,大森靖子が楽曲提供したずんね from JC-WCの「14才のおしえて」や吉川友の「歯をくいしばれっっ!」を編曲し、すでにメジャー仕事をも手掛けています。

しかし、Maison book girlのメンバーも、現在はあの4人しか考えられないほど重要な存在です。特にコショージメグミは、メンバーで唯一作詞を行い、サクライケンタと世界観を共有していることを感じさせます。そして、Maison book girlの楽曲は音楽的に特異であっても、4人のメンバーが歌うことによって、耳なじみの良いポップスへと変換されていることも見落としてはいけません。

「アイドル」フォーマットの外側へ

さらに、4人が歌うことによってサクライケンタの楽曲はある種の聖性を帯びているかのようにも感じられるのです。フラットに歌うことが多いMaison book girl ですが、「cloudy irony」では和田輪が意外なほど歌いあげているのが新鮮でした。Maison book girlの活動とは、サクライケンタという司祭のもとで行われる神事のようにも感じられるのです。

Maison book girlは現在は「アイドル」というフォーマットの中にいますが、いつでもその外側へと出ていけるであろう存在です。彼女たちがメジャーというフィールドでどこまで活躍できるかは、アイドルといわずJ-POPというフィールドへのひとつの問いかけのようにも思えます。

そして最後に忘れてはいけないのは、Maison book girlのパフォーマンスです。変拍子で歌い踊る4人の姿はぜひライヴで見るべきものでしょう。それが多くの人々にとって魅力的だからこそ、ワンマンライヴはソールドアウトが続いているのではないかとも想像してしまうのです。いわば、クールさと生身の肉体性の衝突。Maison book girlはとても多面的な魅力を持っているグループなのです。

◆文/宗像明将

1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」「Yahoo!ニュース個人」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイド ルに関しての原稿執筆も多い。

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