美人バーテンダーに聞いた「音楽とお酒で人生をちょっとだけ良くする方法」【美人ママさんハシゴ酒】
第13回:ミュージックバーの美人ママに聞いた「音楽とお酒で人生をちょっと良くする方法」
この連載も今回が13回めとなる。だいたい月に1回のペースなので、1年を過ぎたことになるんだよね。
さて、今回の美人ママはカメラマンの沼田さんからの紹介です。
というわけで、やってきたのは千代田線湯島駅4番出口。
この出口の隣のビルが今晩の目的地。いつもなら、お店までの道順を紹介しているのだけれど、今回はあっという間です。
「music BAR 道」とあります。味のある看板ですね。
ちなみにこの日は、台風がやってきてお客さんが少ないからと急きょ組まれた取材。3階にあがると今度はこの看板!
ドアを開けて中に入りましょう。
おお、大音量で音楽がかかっとります。
「あの~、あなたが美人ママさんですか?」
大き目の声で聞いてみた。
「あ、『メシ通』の……それは私じゃないんです。こちらの方ですよ」
おお、お二人とも美人じゃないですか。
えっと、こんばんは。美人ママですか?
沼田カメラマンが、カメラのシャッターを押しながら「そうです、こちらが、美人ママの板垣潮美さんです」
ちなみにお客さん、けっこういっぱいです。台風関係ないじゃん。潮美ママ、大忙し。あの、ママ、年齢聞いていいですか?
「あ、いいですよ。36歳です」
カメラマンの沼田さんはいくつ?
「僕ですか、僕は43歳です」
なるほど、自分が58歳なので、30代、40代、50代がそろったわけですね、などと超くだらないことを言ってしまう。
というのも「ちょっと待ってくださいね」と潮美ママ、料理をつくって出したり、お酒をつくって出したりと大忙しなのです。
沼田カメラマン曰く、
「僕も、お店に来るのは初めてなんです。実は音楽関係の知り合いなんです。ちなみに彼女、火曜日だけなんです、出勤日は」
あ、なるほど。それで、きょうは火曜日。
ひと段落したところで、
あの、ママと乾杯したいのですよ。えっとママはなにを飲まれますか?
「けっこうなんでも飲むんですけど、何にしましょうか」と、しばし考えて、
「それじゃ、スーズにします。スーズトニック。のどが渇いているので」
どういうお酒なんですか?
「これ、薬草系のお酒で女性に人気なんですよ。トニックで割るとおいしいんです」
じゃ、僕も同じもので。ママ、それ2つください。
週に一回とはいえあざやかな手つきでスーズトニックをつくる潮美ママ。
「はい、スーズトニックをどーぞ」
▲スーズトニック(700円)
おお、ありがとうございます。
それでは、かんぱーい!
きょうは、よろしくお願いします。
おっ、潮美ママ、いい飲みっぷりですね。
うわぁぁぁ、想像してたのとじぇーんじぇん違いました。薬膳系のお酒と聞いていたので、苦いのかなって思ったんですけど、甘いジュースのような感覚でごくごく飲めちゃいますね。
ところで、ママ、ここはどういうお店なんですか?
「ミュージックバーなんです。ここにあるレコードやCDはオーナーの大久保裕文の私物なんですよ。もともとはここ、オーナーの大久保が仕事場として使っていたんですけど、レコードをかけるお店として8年前にオープンしたんです。今、大久保の仕事場は外苑前なんですが、よくお店にも顔を出しますよ。スピーカーなんか素敵でしょ。あと、ときどきライブやワークショップなんかもここで行われるんですよ」
ママはここで働き始めてどのくらい?
「私は3年目ですね」
きっかけは、なにかあったんですか?
「ルームメイトだった女性が前任の店長だったんですよ。その彼女は結婚して子供ができて、今は地方にいるんですけど、そんな関係で週に1回働くようになったんです」
へえ。お客さんはリクエストとかできるんですか?
「基本的にはスタッフがかける感じですね」
それでは、きょうの本題。今日はこんな質問を準備してきました。
音楽とお酒で人生をちょっとだけ良くするための方法
せっかくだから、バーのカウンターに立っているママに音楽とお酒にまつわるアレコレについて、いろんな組み合わせの妙を聞いていこうと思います。
Q1. 仕事の失敗など、嫌なことを忘れたいときに聞くといい曲とお酒の組み合わせは?
「えっ、今回の取材って、そう言うのを聞くんですか。えっと、ちょっと待ってくださいね、うーん、どうしよう」
しばし、悩む潮美ママ。悩んでいる姿も素敵です。
「あの、これって、ほかにも質問があるんですか?」
おっ、鋭いね。ありますよ、と、全部の質問を見せると、あー、なるほどと、やっと答えを見つけた潮美ママ。
A1.『ユーミンブランド』(松任谷由実)+ カンパリソーダ
あー、これは懐かしいですね。
「これは、私の私物なんですよ。荒井由実時代のベスト盤なんですよ。今聴いてもみんないい曲なんですね」
さて、これに合わせるお酒だとなんになるんでしょうか。
「うーん、そうですねぇ。カンパリソーダですかね」
あー、わかる、わかる。
「レモンを絞って、ビタミンを取ってもらって、カンパリって薬っぽい苦味があって栄養もあるし、また見た目も赤くてきれいですしね、いやされると思いますよ」
なるほど、音楽で心をいやし、お酒で栄養つけるみたいな。説得力がありますねぇ。さすがです。じゃ、カンパリソーダ(700円)ください。
Q2. 口説きたい女のコに聞かせるといい音楽とお酒の組み合わせは?
「うーん、難しいですね。どんな女の子を口説きたいんですかね。ギャル系の女の子ですかね」
そうですねぇ。ずっと前から狙ってて、やっと初デートにこぎつけた、みたいなことなんですかね。
しかし、なかなか決まらない。他のお客さんからも、チャチャが入る。男性の酔客が「優柔不断!」と叫ぶ。さらに時間が経過。で、やっと出ました。
A2. 『LIFE』(小沢健二)+ 桃酒ソーダ
「これはもう、誰が聞いても元気になれるし、恋をしたくなるよね」
と女性のお客さんに同意を求める潮美さん。女性客は興奮気味に「そうそうそう」と叫ぶ。
「これはたしかオザケンでいちばん売れたアルバムですね。入ってるのは恋愛ソングばっかりです」と沼田カメラマンも納得。
さて、これに合うお酒は?
「はい、こちらです」
えっ、なんですかこれ?
「桃を皮ごと漬けた桃酒なんですよ。恋をするなら、ほんのりピンク色のピーチでしょう。それをソーダで割って飲んでもらいたいですね」
おっ、ではその桃酒ソーダ(700円)ください。
いただきます!
あら、これも裏切られました。まったく甘くないですね。香りだけ桃がきて、あとはスッキリした口当たり、これはおいしいですね。
それでは、お次。
Q3. 一人で考えごとをしたいときにハマる音楽とお酒の組み合わせは?
おっと、ここでオーナーの大久保裕文氏がお店にやってきました。あー、知ってる人だ。
「20年くらい前に会いましたかね」と大久保さん。
そうだ、そうだ。話しているうちにいろいろ思い出してきた。大久保さんはデザイナーだった。「今でもそうですよ」と名刺をくれた。
A3. 『コンプリート・ミュージック』(ニュー・オーダー)+ ラフロイグ(ロック)
「一人で考えごとをしたいとき、私なら『ニュー・オーダー』ですね。紆余曲折を経て“今”があるバンドなので。ピーター・サヴィルのアートワークも素敵です。そして合わせるお酒はラフロイグ。スモーキーな香り強いウィスキーなんですけど、これをロックでチビチビいきたいですね」
おっ、ニュー・ウェーブですね。なんだか懐かしいなぁ。そして、お酒がラフロイグ。
▲ラフロイグ ロック(900円)
有名なスコッチウィスキーですね。いただいてみましょう。あー、そうそう、これは、けっこうクセのあるウィスキーですな。好みがわかれるところでしょうけど、僕は好きですね。
Q4. とにかく今日1日疲れたので、身体と心をいやしてくれる音楽とお酒の組み合わせは?
「はい、これにしました。IBMのThinkPadのCMソングだったんで、聴けば、ああ、あれかっていう曲も入ってますよ」
A4.『ナイトフライ』(ドナルド・フェイゲン)+ ギネスビール
「スティーリー・ダンのメンバー、ドナルド・フェイゲンによるAORの名盤中の名盤ですよ」と大久保さんが解説してくれた。
さて、それに合わせるのがギネスビール(800円)ですか。黒ビールの王道、まさに大人の味ですね。
「ギネスビールって、栄養価が高いんですよ。それでいやされてほしいなって思います」
Q5. 仕事を忘れて楽しく過ごしたいときにウキウキさせてくれる音楽とお酒の組み合わせは?
「うーん」と再び長考する潮美ママ。いくつか出しては決まりかけるも、再び悩む。最終的に自分がいちばん好きなものにしたそうです。
「私の好きなジェームス・チャンスにしました。お酒は、ジントニックです」
A5. 『Buy』(ジェームス・チャンス・アンド・ザ・コントーションズ)+ ジントニック
「もうね、仕事を忘れるくらいかっこいい音楽なので、ぜひ聞いてほしいです。『ジントニック』は誰でも知ってるメジャーな味なんですけど、とくにこのお店で飲むとおいしいんですよ」
これ、かけてもらっていいですか?
音楽がかかります。
おお、たしかに、これはいいですね。仕事なんてどうでもよくなっちゃう。
ちょっとおなかがすいてきました。なにか食べたいなぁ。ちなみにこのお店、お通しもチャージもないんだそうです。なんだかいいね。
「お腹がすいているのなら、鶏手羽元とタケノコのマッサマンカレーがおすすめですね。女の子に人気なのはおつまみ3種盛り合わせです。あと、ローズマリー風味のポテトフライ」
あ、それだ。さっき、他のお客さんがたのんでたポテトフライ、ローズマリーのいい香りがしてたね。
▲ローズマリー風味のポテトフライ(700円)
風味がいいですね、ローズマリーの。塩味も強めでこれはおいしい。
ちなみにこのポテトフライに合う飲み物ってなんでしょう。
「それは、生ビールでしょう」
じゃ、生ビールお願いします。
▲生ビール(600円)
これは合いますね。ちなみにこの生ビールとポテトフライに合う音楽は?
「そうですねぇ。『できれば愛を』(坂本慎太郎)でしょうか。中音域だけで、まるで宅録のような雰囲気を出しているんですよ」
と、音楽をかけてくれた潮美ママ。
「いつまでも聴いていられますね」と沼田カメラマン。
たしかに。そして、ポテトフライもずっと食べていられる感じ。止まらないよ。
それじゃ、ママ、お会計をお願いします!
ママありがとう。また来ますよ。
美人ママFile #013
湯島 music BAR 道_板垣潮美さん
お店のモットーを教えてください。
おいしい食事、いい音楽、女性ひとりでも入りやすいミュージックバーです。
ママさんの好きな男性のタイプは?
それ困るんですよ。タイプが決められないんです。
自分の性格をひとことで言うと?
なんだろう。「まじめ」。いい意味でも悪い意味でも「まじめ」です。
いちばんの得意料理はなんですか?
お味噌汁。かつおと昆布でダシをとって、丁寧につくります。ポイントはピーナッツペーストをちょっと入れるんです。甘くない、日本製のピーナッツペーストがいいんです。
どんな言葉で口説かれたらドキッとしますか?
口説かれたことがないんでわかんないですけど、ちゃんと誠意があって、気持ちがこもっていればなんでもいいです。
『メシ通』の読者にひとことお願いします!
湯島って案外くるようで、来たことのない人が多いので、湯島って町を含めておもしろいので、ぜひ寄ってみてください。
お店情報
music BAR 道
住所: 東京都文京区湯島3-35-6 3F(千代田線湯島駅4番出口隣接ビル)
電話:03-3832-3740
営業時間: 18:00~24:00(LO 23:30)
定休日:日曜日・祝祭日
ウェブサイト:music BAR 道
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
写真:沼田学
書いた人:下関マグロ
1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)など著書多数。 Twitter:@maguro_shimo
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