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「認知症介護はひとりで抱えこまないで」分かっていても抱え込んでしまう家族の本音

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2016年4月、老老介護のすえ、認知症の妻の首を絞めて殺害するという悲しい事件が発生しました。殺人の罪に問われた夫(82歳)の判決結果が10月6日に出て、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)を言い渡されました。裁判長は判決文の最後に、「今後は、あなたから子どもたちや地域の人たちに話しかけ、ひとりで抱え込まず、ともに奥様の冥福を祈ってください」と語りかけたそうです。

この裁判長の言葉には、介護に関わっている皆さんへの思いが込められているように感じます。

私が心を閉ざした日

通所や宿泊の介護事業所では、家族間、家族とスタッフ間の交流を目的とした座談会や夏祭りや文化祭のようなイベントが開かれることが多いと思います。

義母の要介護度が低い時期は、イベントに参加し家族の方々や専門職の方々に相談したり体験談を聞くことで、不安や悩みを解消したり緩和していました。しかし、個人的な所用が増えてくると、だんだんと足が遠のいていきました。

先日ひさしぶりに、ショートステイで利用している地域密着型特別養護老人ホームで、利用者本人と家族とスタッフが一緒に食事をしながら交流を深めようという食事会のお誘いがありましたので、全介助の義母と参加しました。

スタッフさんは、利用者さんや家族との対応に追われていて、要介護度の低い利用者さんの家族は、その利用者さん同士で食事を楽しんだり、同じような家族の方々とお話をしたり…昔の自分を見ているようでした。

しかし、胃ろうの義母は車椅子で経管栄養を注入するので、端っこの小さなテーブルに私とスタッフさんと義母の3人という配置でした。私とスタッフさんの食事がテーブルの上に配膳されたのですが、スタッフさんは、家族が来ていない利用者さんのお世話で立ったり座ったり…食べなきゃいけないし…私は交流会の間、ほとんど誰とも話すことなく義母と二人で静かに過ごしていました。

スタッフさんの大変さを理解しているつもりでしたし、テーブルの配慮も理解できましたから…。
でも…。

『やだ、やだ、もう二度と参加しない!』と虚しさや寂しさを感じながら帰りました。そして、一番辛かったのは、義母だったと思います。

自然と遠ざけてしまう支援

あらためて、介護する家族は些細なことで心を閉ざしやすいと、私を含め思いました。「心を開いて!」「辛いとき、悲しいときには声をあげて助けを求めて!」と、頭ではわかっていても、いざ自分のことになると…できないときがあります。「迷惑をかける」「役に立たない」と、そんなネガティブな思いが、周りから差し伸べられる手や言葉を遠ざけてしまうときがあります。

参考になるのか分かりませんが、私の場合、ひとりで抱えこんでしまうとうまく対処ができず、もがくことが多いです。そのため、空回りになることもしばしば…。でも、ひとしきり悩んでどうにもならないと思ったら、岩盤浴に行きます!全てを出し切る!何も考えず、洗い流しスッキリしようと(笑)

否定的な感情と隣り合わせの介護

『ひとりで抱え込まないで!』
そうありたいと思いますし、本当にその通りだと思います。しかし、介護家族として、なかなか自分から心を開くことができないときがあることもわかって欲しいです。介護される本人も同じように心を閉ざしてしまうときがあるかもしれません。

だからといって、周りの方々から「助けますよ!」「何でも言ってください!」と連呼されるのも、辛い…。でも、ひとりで抱え込んでもがいているときに、「手伝うことない?」「一緒にやろうよ」って寄り添ってくれる声かけや態度はとても嬉しかったです。

「さりげなく寄り添う」
本当に難しいことです。漠然と見守るだけでは、気付けないことがいっぱいありますから…。家族と介護職員や地域の方との信頼関係がないと、なかなか心を開けないですよね。

さいごに

今までの経験から、ひとりで抱え込むことで、周りにも自分にもプラスとなることは、少なかったです。なぜだろうと思ったら、ひとりで抱え込んでいるときに笑顔が少ないからだと気づいたのです。

何かを乗り切るとき、真剣に悩み取り組むことは大切だと思いますが、仲間がいると笑顔になれるときがあるんです。笑う門には福来たる…これっていろんなことにつながる対処法のような気がします。

今、家族だけで支えること、専門職だけで支えることには限界があると言われています。だからこそ「チームで連携を」と言われていますし、「これからは地域の方々も巻き込んで」という動きがあるようです…地域の中にある医療や福祉の関係機関や事業所と地域が連携できる仕組み、認知症の人や家族の状況や気持ちを早い段階で汲み取れる仕組み…等々、きっとどこかで素晴らしい取り組みをしている人たちがいらっしゃると思います。

そんな方々の活動や思いが広がって、それぞれの地域にあった活動や思いになっていけばいいなぁと思います。そして、認知症や家族の方々が、ひとりで抱え込むことなく多くの方々とつながり、安心して生活していけるようになりますように…!

この記事を書いた人

満枝

1961年生まれ。若年性アルツハイマー病を発症した義母の在宅介護を21年間山あり谷あり続行中。育児と介護を同時に行うダブルケアの経験者。現在、育児は卒業。在宅介護で潰れそうになった経験から、《育児も介護もたくさんの目と手と心が必要》と実感。現在は、認知症サポーターメイト、民生委員として、その思いを発信中。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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