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第82回 雑居生活(その1)

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 とにかく雑居での新入りは多忙であり、かつ辛い。
 布団の上げ下ろしの際には、必ず窓を開けるというルールがあった。時々忘れてしまう、特に夜に布団を敷くときに失念していることが度々あった。ここでも叱責である。埃がまって迷惑だというのが、その理由である。理由自体には納得がいったのだが、忘れてしまうことは致し方ない。
 窓といえば、就寝の際には真冬であっても、必ず窓を5センチほど開けておく。結露防止だそうだ。しかし、窓際の私には、風が吹き付けてきて寒い。文句は言えない。

 朝起きると、すぐにすべての布団を部屋の中央に集め、周囲から掃除を始める。また、窓を掃除する役目とかもある。
 それぞれの担当にはローテーションがあり、部屋を掃除する人、洗い場のある板敷を掃除する人、窓を掃除する人などが決まっていて、1週間おきに変わる。
 また、掃除の仕方、手順にもルールがある。しかし、掃除の手順を覚えることができず、いつも注意を受けていた。ここでも「すみません」の連発である。

 朝食の準備も大変であった。少なくとも私にとっては。
 これまた順番で、机と箸と湯呑をセットする人、食材の入ったタッパー、ご飯を受け取る人、タッパーに入った食事や味噌汁を各人に公平に盛り付ける人、空になったタッパーを洗う人といった役割が回ってくる。

 部屋に常置されている箸と湯呑は、見た目はどれも同じであるが、各人のものが決まっている。小さく目印がつけられているのだ。
 しかし、どの目印が誰のものだったかを覚えられないのである。昔から、仕事以外のことは覚えられない私であった。「それ違うだろ」と幾度も怒られた。

 さらに苦手だったのが、おかずや味噌汁を公平に取り分けることであった。空になったタッパーを洗う人が待ち受けているので(食事開始前に洗う)、すばやく取り分ける必要がある。
 納豆のように、それぞれが1パックになっているものは問題が起きようがない。大変なのは、味噌汁である。
 5人分の味噌汁が入ったタッパーを左手に持ち、右手で持ったお玉で取り分けていく。もちろん、味噌汁の具も公平にしなければならない。タッパーを落としでもしたら大変なことである。慎重かつ手早くの処理が必要となる。
 自分では公平に取り分けているつもりでも、ダメ出しがきて、箸で公平に分けていく。

 ちなみに、ご飯は、人数分のご飯茶碗が入ってくるので、各人の前に置けばそれでよいかというと、そこにもルールがある。
 ご飯茶碗の蓋やご飯茶碗自体は、長年の使用で、一部欠けていたり、汚れていたりする。その中で最もいたみのすくないご飯茶碗を一番席(といっても、私のいた雑居では二番席の計算工の人)から順に配るのである。中身に変わりがあるわけじゃなし、くだらないと思いつつも、そのようにする。
 ある日、蓋がかなり汚れているが、ご飯茶碗自体は普通程度のものを、どうしようかと思いつつ、私のところに取り分けたら、怒られた。理由は、蓋は汚れていても食べるわけじゃないから、それを1番席にという、ご飯茶碗だって食べないだろうと内心で毒づいた。

 朝食が終わると、箸と湯呑をきれいに洗って、所定場所にしまうことになる。この所定場所も決まっており、間違えることは許されない。

 これが終了すると、順番に歯磨きをして、新人の私が最後の歯磨きを終えて、流し台やその下の板敷を掃除することになる。
 流し台は、クレンザーできれいに磨き上げて、さらに雑巾で拭いて水滴を残さないようにしなければならない。長年そのようにされてきたせいだと思うが、蛇口などピカピカである。

 しかし、真冬に長さ2メートル半もあろうかという流し台を、冷たい水で洗う作業はかなり辛い。このことは次回に説明をするが、とにかく早く独居に移りたかった。

 洗いが終了すると、やっと自分の時間となるが、前にも書いたようにテレビの横の席である私は仮就寝でも横になることができず、9時になってやっと布団に入って休むことができる。(つづく)

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第82回 雑居生活(その1)

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