ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

将棋カンニング問題 疑惑を決定的にした「6七歩成」

DATE:
  • ガジェット通信を≫

「九段」という将棋界で最高段位にあるプロ棋士が起こした“カンニング騒動”。渦中の三浦弘行九段(42)は反論文で身の潔白を訴え、将棋連盟やスポンサーもそれぞれの思惑を抱えて大混乱に陥っている──。

 対局中に席を離れ、スマホで将棋ソフトを使ってカンニングしたとの疑いで、10月12日に日本将棋連盟(以下、連盟)から今年12月末までの出場停止処分を受けた三浦九段。疑惑が出始めたのは、今年夏のことだった。

「対局中に頻繁に席を立つようになり、『三浦九段は将棋ソフトを見ているのではないか』という噂が流れ始めた。8月には全棋士に対して『対局中の離席を控えるように』との通知が出されたが、それは三浦九段への警告の意味が含まれていたと思う。実際に7月以降の主要な対局における三浦九段の指し手をある強豪ソフトで解析してみると、不自然なまでに指し手が一致していた」(連盟関係者)

『ドキュメント・コンピュータ将棋』(角川新書)などの著書のあるライター・松本博文氏が解説する。

「関係者の間で話題となったのが、7月26日、棋界最高位である竜王戦の挑戦者決定トーナメントの準決勝です。終盤、三浦九段は離席から戻った後、『6七歩成』という一手を指します。

 その一手は、一見すると自玉が危うくなるように見えるものの、先の先まで読んでいくと勝ちにつながるという、プロでもなかなか指せない一手で、その“超人的な読み”がきっかけで、対局相手や周囲から疑念を抱かれるようになった」

 三浦九段は棋界の“トップ10”である順位戦A級棋士だが、「パソコン上で動くソフトは以前から、明らかにプロ棋士よりも強い。そして現在、スマホ上で動くソフトであっても、やや力は落ちるものの、それでも十分に強い」(同前)という現実があるからこそ生まれた疑惑だった。

 7月の疑惑の一局後もトーナメントを勝ち進んだ三浦九段は、竜王戦の挑戦権を獲得。しかし、10月15日の開幕目前に処分を下され、挑戦者は差し換えられた。

 三浦九段は10月18日、弁護士を通じて一連の疑惑は〈全くの濡れ衣〉とする反論文を発表。同じ日に『NHKニュース7』の独占インタビューに応じ、

「対局中に絶対にソフトを使っていませんし、そもそもスマートフォンに分析ができる将棋ソフトが入っていません」

 と、疑問を完全否定した。

 一方、2日後の20日には、10月3日の対局で三浦九段に敗れた渡辺明竜王(32)がカンニング疑惑について「間違いなく“クロ”」と断定する実名告発を掲載した『週刊文春』が発売された。

 こうした批判の応酬となるのは、ソフトと三浦九段の指し手の一致率といった状況証拠はあるものの、物証はゼロだからだ。そうした状況でなぜ、連盟は出場停止処分に踏み切ったのか。前出・松本氏がいう。

「竜王戦七番勝負の開幕直前に疑惑が浮上したことで、連盟は厳しい選択を迫られた。開幕後に疑惑が表沙汰になれば、竜王戦が中止に追い込まれかねない。そうなると、主催者であり、3億円以上もの多額の契約金(そのうち優勝者賞金は4320万円)を拠出する読売新聞社に対しても言い訳できない状況になる」

 それを避けるために、急な処分となったとみられているが、連盟はこう説明する。

「三浦九段が疑念を持たれた状況では対局できないので(竜王戦を)休場したいと申し出てきた。それで休場届を出すように伝えたが提出されなかったため、出場停止処分とした」(広報課)

※週刊ポスト2016年11月4日号

【関連記事】
将棋界激震のカンニング疑惑 囲碁界は大丈夫か
名人・羽生善治 将棋ソフトに負けても名声は傷つかない
電王戦で注目集まる将棋ソフトの歴史と開発者らの情熱描く本

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP