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地域の名産品 北海道のビールとコンビーフに見る成功の法則

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「地域おこし」を目的に地元産の材料を使った新しい食品が生み出されることがあるが、失敗も多い。そのなかで今年、北海道で「大当たり」の食品が出た。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 長く続く、ご当地グルメイベントなどに象徴されるように、「地域おこし」という言葉はしばしば、「地域の食」とセットで使われる。

 もっとも「地域の食」と言ってもその幅は広い。例えばB級グルメなら、地域で長く親しまれてきた地元の食が全国展開されるパターンもあれば、地域の特産品などを活用した新たな名物の開発に腐心する自治体もある。

 これまで、新たな名物が次々に生み出されてはあっという間に消費されてきた。いや、消費すらされず、誰にも届かないまま放置された名物も少なくなかった。理由は「生産側の都合で開発」され、「的確なPRもされず」、しかも「芽が出る前に頓挫する」などさまざまあったが、ひとつに集約するとすれば「消費者目線の圧倒的な不足」である。

 地域でPRしたいものや助成金ありきで開発が進み、「誰に届けたいか」を精査することなく、テレビなどへの的はずれなアプローチを試みる。そしてすぐに結果が出なければ、すぐ投げ出してしまう。そうした「地域おこし」×「地域の食」という構図のなかで、そうした屍がどれだけあったろうか。

 学術機関の調査でも、いわゆるB級グルメなどによる地域おこしの効果は、時間が経つにつれて減少するという調査結果や、一定の成功をおさめたとされる事例でも他の観光資源への集客減などマイナスの影響が出るケースも確認されている。

 ただし最近、開発された産品のなかには、そうした課題を乗り越えるアイテムも現れはじめた。10月19日、国産農林水産物の消費拡大に寄与した取り組みを表彰する「フード・アクション・ニッポン アワード 2016」の表彰式が行われた。今回コンテスト方式にリニューアルされ、全国1008の産品から「究極の逸品」10産品が選ばれたが、そのなかにも地域資源の活かし方に変化が見えるアイテムがいくつかあった。

 特に今回、受賞に驚かされたのが「旅のはじまりのビール」だった。全国に流通しているわけでもなく、そればかりか普段は帯広の小さなホテル「ホテルヌプカ」で提供されているクラフトビールだ。世に出たのは今年の3月。士幌町での大麦生産(1次産業)、小樽ビールでの製麦&醸造(2次産業)、ホテルヌプカでのクラフトビールの提供(3次産業)という6次産業型の事業モデルで、地産地消型クラフトビールとなる物語が添えられている。

 ストーリーの土台には、オーナーが旅先で触れたポートランドでの体験がある。「旅人と地元の人が集い、そのまわりに最高に楽しくておいしい街がある」という地域ブランディングにもつながるストーリーと周到なスキームで、ホテルヌプカはあっという間に帯広の名所となり、「旅のはじまりのビール」は名物となった。実際、帯広では同ホテル以外への宿泊者もこのビールを求めて、この小さなホテルを訪れる。

 今年は、同じ十勝地方から「ブラウンスイス牛コンビーフ」も受賞した。原材料は牛肉、牛脂、沖縄の食塩のみ。最小限の素材で、最上の味を目指した。生産者の十勝清水コスモスファームは受賞後、Facebook上で次のようなコメントを発表した。

「希少種であるが故に、子牛の安定供給が見込めず、そのため畜産農家から見向きもされてこなかったブラウンスイス牛。経済的に価値が無ければ、生まれてすぐに殺処分せざるを得ない現実。『オス牛の活用』は、ブラウンスイス牛を飼育する多くの酪農家にとって大きな課題の一つでした」

 畜産家にとっての牛は経済動物だ。収益につながらなければ飼ってはいられない。乳牛でもオスである以上、搾乳はできない。とはいえ安定供給が難しい以上、肉牛としての価値も不安定だ。そこでコスモスファームは保存食に活路を見出し、原料を最小限まで削ぎ落とし、無塩せきという製法で付加価値をつけた。

 たとえば世界のどこかで体験した理想郷を、身の回りの生活スタイルに合わせて再構築する。両者に共通するのは、「体験をベースにした物語」「安心・安全な素材」という消費者目線だ。たとえば目の前にある目を背けたくなるような現実を、受け入れやすい日常に置き換える。そうした「使命感」や「夢」を土台にした産品は、行動することで強度を増していく。

 前出の十勝清水コスモスファームの安藤智孝さんも「十勝の場合、食材にも恵まれていて、こうと決めたら突っ走るノリの良さもある。新しいものに飛びつく早さは、歴史が浅い地域の優位性かもしれないですね。私もそうですが、開拓者精神で突っ走るバカが多いです(笑)」と言う。信念とは周囲の雑音に揺るがず、初期衝動を持続するためのガソリンである。そして走り続ける姿も、アイテムに強固な物語と価値を与える。

「地域おこし」につながる強い産品は、その地域に根ざした事業者の初期衝動が持続してこそ生み出される。「地域」の土台を築くのは、あくまでそのコミュニティに参画する個人であり、産品を真剣に育てようとする個々の事業者なのだ。

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