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『永い言い訳』西川美和監督インタビュー「自分にとって心当たりがある事を、女は風穴と感じ男は傷つく」

img_0716妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。そこから愛しはじめた―。

『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自著を自身の監督、脚本により映画化した『永い言い訳』が現在公開中。長年連れ添った妻を突然失うが悲しむ事も泣く事も出来ない人気作家・幸夫(本木雅弘)が、同じく妻を亡くした陽一(竹原ピストル)と2人の子供と触れ合う事で失ったものを見つめ直すヒューマンドラマだ。

この物語について「3.11の震災に着想を得た」という西川監督。主演の本木雅弘について、作品作りについて、色々と話を聞いた。

sub1―本作の原作となる小説「永い言い訳」は、3.11の震災に着想を得たそうですね。

西川美和:3.11の東日本震災から半年ほど経過した頃、被災して家族や仲間を失われた方々の痛ましい姿を報道で目にしました。それについて、気の毒だと感じながらも、綺麗なエピソードばかりが伝えられることに違和感を感じたんです。人間同士の関係性は綺麗な形ばかりではなく、後味の悪い別れ方をしたまま相手が帰らぬ人になってしまったという不幸も、あの突然の災厄の下には少なからず存在したのではないかと。そんな事を考えたのがきっかけです。

―兄弟や友人では無く「夫婦」をテーマにした理由はどんな事があったのでしょうか。

西川監督:う〜ん、最初から夫婦で行こうと思いついたので考えたことがなかったですね。でも、今質問されて考えてみると、やっぱり「所詮他人だから」ですかね。私自身が結婚経験がないから偉そうなことはいえませんが、夫婦って持続していく事自体極めて難しい関係性なのではないかとも思います。親子や兄弟のような血のつながりもないのに人生の長い時間を共にする。最初は血のつながり以上の熱を持ってはじまったりもするのに、年齢やお金や子供の問題でどんどん関係性も変わっていきますよね。本作で描いたのは子供のいない夫婦ですが、子というかすがいが無い夫婦というのは、二人がつながって行く理由を他に言い逃れ出来ない、極めて危うく濃密な関係だと思います。意地悪な言い方をすれば、私からすると描くモチーフとして面白さを感じているのだと思います。

―本作はご自身が執筆された同名小説が原作となっていますが、映画の為に書く脚本では無く小説がスタートだったことでいつもの映画作りと違う点はありましたか?

西川監督:映画は多くのお金を元に作られるものですから、商業映画の為の脚本を書く時には、どうしても多くの人にちゃんと受け入れられる表現やテーマになっているかどうかが意識されてしまいます。ですから「ちゃんと伝える」という目標の元に、ストーリーラインもキャラクターもある程度の分かり易さを保ちながら書いて行くのですが、本来は分かり易くした描写からこぼれ落ちたところに、人間像や心情の面白さがあるのでは無いかと思い、映画づくりよりもまず先に、そういう部分を一度躊躇せずに小説としてしっかり書き込んでみようと思いました。

―なるほど。では小説を書く作業は楽しかったですか?

西川監督:一人で机に向かうという作業は自由で気楽でありつつも、寂しく孤独だったもので、その後に1年間かけてスタッフ・キャストと仕事が出来たのはご褒美の様な時間でもありました。これまではスタッフが自分の為に汗をかいてくれている事を申し訳なく、プレッシャーに感じる部分がありましたが、本作については自分が年をとったからかもしれませんが、とても楽しい時間でした。

main―主演に本木雅弘さんを抜擢した理由を教えていただけますか?
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