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夫婦の生活レベルは婚姻費用で格差なしに。たとえ別居中でも!

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 離婚を視野に入れてまずは別居、というときに、考えておかなければならないのが「生活費をどうやって確保するか」という点です。生活費を夫婦の一方の収入でまかなっていた場合、別居によって生活の途を絶たれることになります。
 また、夫婦双方に収入があったとしても、別居によりやりくりが苦しくなる場合もあるでしょう。そんな悩みを解消するために「婚姻費用」を請求することができます。

婚姻費用とは

 婚姻費用とは、夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生計費をいいます。省略して婚費(コンピ)といわれることもあります。
 生計費とは、具体的には、衣食住の費用、交際費、医療費、子どもの養育費、教育費などです。

 この婚姻費用は、夫婦が「その資産、収入その他一切の事情を考慮して」分担しなければならないとされています(婚姻費用分担義務、民法760条)。
 夫婦が同居している場合はもちろん、法律上の婚姻をしている限り、別居している場合でも、離婚の協議中や裁判中であっても、婚姻費用の分担義務があります。

 婚姻費用は、「請求した時」からの分を請求することができます。過去の婚姻費用については、婚姻費用としての請求はできませんが、離婚時の財産分与において、婚姻費用の清算のための給付も含めて財産分与の金額や方法を定めることができます(最判昭53.11.14)。
 一方、いつまで婚姻費用を請求できるかについては、婚姻費用の分担義務がなくなるまで、つまり離婚するまでとされています。

婚姻費用の決め方

 具体的な金額や支払い方法などを決めるには、まずは相手方との話し合いを行うことが一般的です。
 話し合いで合意が整った場合は、その内容を文書にしておくことが重要です。可能であれば、公正証書を作成しておくことをおすすめします。公正証書にしておけば、約束通り支払いがなされなかった場合に、強制執行で支払いを求めることができます。

 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てることができます。申立書(書式は裁判所のウェブサイトから入手できます)に夫婦の戸籍謄本を添えて、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。
 申立費用として、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手(金額や内訳は裁判所により異なります)が必要です。

 調停手続では、調停委員を交えて話し合いを行います。その際、夫婦双方の収入や生活状況の調査のために、給与明細や源泉徴収票、課税証明書などの資料の提出を求められます。調停において、合意が成立すれば調停調書が作成されます。
 調停が不成立になった場合には、審判による手続に移行し、支払うべき養育費の金額を裁判所が決定します。

婚姻費用の金額

 婚姻費用の金額は、一律いくらと決まっているわけではありません。
 生活を維持するのに必要な費用は、各家庭の収入や家族構成(子どもの人数や年齢)、居住している地域など様々な要因に左右されますので、具体的な金額は、これらの要素を踏まえて、当事者間の話し合いで、月額いくらという形で決められます。

 家庭裁判所においては、婚姻費用の算定をする際に「養育費・婚姻費用の算定表」を参考として活用しています。これは、婚姻費用や養育費の算定を簡易化・迅速化するために、過去のデータをもとに作成されたもので、裁判所のウェブサイトで閲覧することができます。
 家族構成(夫婦のみ、夫婦+子ども○人)ごとにいくつかの表があり、権利者(婚姻費用を請求した人)・義務者(婚姻費用を請求された人)の収入の区分(自営か給与か)や収入の金額に応じて、簡単に婚姻費用を算定することができます。

 ただ、この算定表には賛否両論があり、形式的に表にこだわらず、実質的に算定することが重要だという考えもあります。
 形式的に表にこだわるのが不適切なケースとしては、別居にいたる原因を作りだした側(有責配偶者)からの婚姻費用の請求があります。
 例えば、自らの不貞行為が原因で別居に至ったのに、不貞行為をした配偶者が他方の配偶者に婚姻費用の請求をした場合です。
 このような場合、有責配偶者からの請求は、権利の濫用(民法1条3項)として、その一部、または全部が認められない場合があります。

相手が払ってくれない場合の手段と手順

履行勧告と履行命令

 相手方が調停や審判で決められたとおりに婚姻費用の支払いをしてくれない場合、まずは調停や審判を行った家庭裁判所に対して履行勧告の申出をしましょう。
 家庭裁判所は、権利者からの申出により、調停や審判で定められた婚姻費用の支払い義務が履行されていない場合、義務の履行を勧告することができます(家事事件手続法289条1項、同7項)。
 ただし、履行勧告には法的拘束力はなく、相手方に自発的に支払いをさせようとするものにすぎません。

 履行勧告よりも少し強力な手段に、履行命令の申出があります。
 家庭裁判所は、権利者からの申出により、婚姻費用の支払いを怠った者に、相当の期限を定めて支払いを命じることができます(家事事件手続法290条1項、同3項)。
 この命令に違反した場合、10万円以下の過料に処せられることがあります(同5項)ので、履行勧告よりは相手にプレッシャーを与えることができるといえます。

強制執行

 相手がどうしても支払いに応じない場合は、強制執行を申し立てて支払いをさせることができます。強制執行とは、債務者が債務の本旨に従った債務の履行をしない場合に、裁判所が強制的にその債権内容の実現をしてくれる手続で、「直接強制」と「間接強制」の2種類があります。

 直接強制は、債権者の申立により、地方裁判所が債務者の財産(不動産、給料や銀行預金などの債権、自動車や貴金属などの動産)を差し押さえて、その財産の中から満足を得るための手続です。
 強制執行の申立には、調停調書・審判・判決などの正本、執行文、送達証明書、確定証明書などが必要になります。
 ただし、婚姻費用の支払いを命ずる審判書または調停調書は、「執行力ある債務名義と同一の効力を有する」(家事事件手続法75条)とされているので、執行文の付与は必要ありません。公正証書の場合は、証書を作成した公証役場で執行文付与の手続をとる必要があります。

 婚姻費用は相手に対する扶養という性質が強いため、これら費用の未払いを理由として強制執行をする場合は、通常の強制執行とは違う扱いが認められています。
 まず、既に未払いとなっている分だけではなく、将来の分も一括して強制執行ができることになっています(民事執行法151条の2第1項2号)。
 また、最も多く行われるのは、相手方の給与の差押ですが、通常は差押えできる範囲は給与の4分の1までとなっているところ、婚姻費用の場合は、2分の1まで差押えが認められます(民事執行法152条3項)。

 間接強制とは、債務を履行しない義務者に対して、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を課すことを警告した決定をすることで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払を促すものです。
 原則として、金銭の支払いを目的とする債権については、間接強制の手続をとることはできませんが、金銭債権であっても、婚姻費用や養育費など、夫婦・親子その他の親族関係から生ずる扶養に関する権利については、間接強制による強制執行をすることができます(民事執行法167条の15同条の16)。

まとめ

 離婚が成立すれば、養育費を受け取ったり、公的支援を受けたりすることができますが、離婚がなかなか成立しない場合はその間の生活費をどう確保するかが大問題になります。
 生活の心配から離婚や別居に踏み切れないという方もいらっしゃるかと思いますが、そのような心配をなくすため、婚姻費用の請求を検討しましょう。

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