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第80回 新入工場の人

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 新人の訓練時代のことを書いてきたが、最後に、新人工場に配属された人のうち、印象に残っている人について触れることにする。

 前にも書いたが、私が配属された雑居には、先人3名がいた。
 そのうちの一人は、間もなく工場配属となる前期組の人で、残る二人が後1週間を残した後期組である。私は、2週間残すものの後期組と呼ばれていた。
 前に書いた鹿児島でトラック運転手をしていた人は、前期組の人によく怒られていた。怒ることもないような些細なことであったように記憶しているが、こういう所にはとにかく威張りたがる人がいるものである。

 そのトラック運転手さんは、前に懲罰を受けたことがあるそうで、前期組の人の威張りように腹が立ったが、また懲罰には行きたくないから我慢していたと言っていた。人間我慢が大事である。

 そのトラック運転手さんなどが、1週間後に工場に配属となり、その間に私に遅れること2~3日で熊本刑務所から来た人と二人だけとなった。
 何かのときに、その人がボーっと窓の近くで向かい側の独居房を見ていた。早く工場に移り、独居に移りたいと話していたから、前の独居を見ていたのだろう。
 そのとき、運悪く見回りの刑務官がちょうどやってきて、彼を怒鳴りまくりの状態になった。「お前!なんで外を見ているんだ!」、「すみません」、「すみませんじゃないだろう!なんで見ていたと聞いているんだ!」、「すみません」、「見ていた理由を言え!」。と言われても、謝るしかない。
 ひとくさり怒鳴られて、彼がしょげるかと思いきや、刑務官が立ち去ってから、刑務官に毒づいていたのには笑えた。

 その彼と一緒に熊本から来た爺さんがいた。隣の雑居にいたのであるが、ある日、担当刑務官に呼ばれた私は、「○○が、そちらへ移るから面倒を見てやってくれ」との指示を受けた。
 その爺さんは、かなりの高齢で、何をしてもダメなのである。訓練が終わって、部屋の掃除をしていても、うろうろしているだけである。最終的にはトイレ掃除専属とさせてもらった。

 厳しい訓練にはまったくついていけず、いつも怒鳴りまくられていた。かなりの高齢であるから、厳しい訓練自体無理であると思われたが、担当刑務官から私に対して「雑居での余暇時間に、きちんと教えているのか?」と言われ、私にお鉢が回ってくるのには困った。このご老体のことについては前に書いた。

 さらに、他の雑居の人であったが、糖尿病だか、何かの持病があって、このことは刑務所側にも診断書を提出して連絡済の人がいた。とにかく、その持病のせいで、トイレが近いのである。1時間に一度というかなりの頻度でトイレ通いをしていた。
 しかし、担当刑務官以外の刑務官は分からず、「またお前か!いい加減にしろ!」と怒っていた。怒られる方もたまったものではない。たまるのはおしっこだけなのか。

 さて、我々も後期組となった。後期組となるその前日の休憩時間に話題となるのは、誰が基準者・副基準者となるかである。要は級長さん・副級長さんみたいなものである。
 話はそれるが、その後期組に再度の服役者がいた。刑務官に「また来ました。よろしくお願いします」と言い、刑務官から「また来たのか」と言われてわかった。A級刑務所であっても、再犯者(刑法上の再犯ではないと思う)がいるということも分かった。

 話を戻すと、私は、その人が基準者、熊本から来た同房者が副基準者ではないかと思っていた。再犯者は中の生活に慣れているだろうし、熊本の人はきちんと訓練をこなしていたからである。
 ところが、私が基準者となり、熊本の人が副基準者となった。大したことをするわけではないが、二人して気が重たくなった。(つづく)

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第80回 新入工場の人

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