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民法改正で住まいの売買/賃貸はどう変わる?

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日本の主要な法律の一つ「民法」の改正が予定されている。2015年3月に国会(第189回)に提出され、120年ぶりの改正になると話題を集めたが、安保法案などの関係もあって審議が持ち越され、ようやく今国会(第192回)で審議に入った。社会秩序を維持するための重要なルールを定めた法律であるだけに、その影響は大きい。もちろん、住宅を賃貸借したり売買したりする場面においても。では、具体的にどういった影響があるのだろうか? 弁護士の江口正夫さんに伺った。

賃貸住宅を退去する際、「敷金の原則返還」を明文化

賃貸借でもっとも多いトラブルが、退去時の敷金や原状回復に関するもの。改正される民法では、敷金とその返還時期を定義づけ、退去によって部屋を明け渡したとき、敷金を返還しなければならないとしている。

一方、借主が負う原状回復の内容も明文化された。そのため、通常の使用による損耗や経年劣化によるものを除き、入居後に損傷があった場合(入居者に原因のないものは除く)、原状回復費用を差し引いた残りの額が返還されることになる。

これまでもトラブルを避けるために、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定している。最高裁判所の判例といった法的な根拠もあり、「現状の裁判所の基本的な考え方が明文化されたということで、実はこれまでの考え方と大きく変わることはありません」と江口弁護士。

※なお、通常損耗についても借主に負担させるという賃貸借契約の特約も民法上は有効。ただし、当事者間の信義誠実の原則に反するような一方的に消費者の利益を害するような特約の場合は、「消費者契約法」の規制により無効になる。

賃貸住宅を借りる際の連帯保証人が保護される流れに

賃貸住宅を借りる際には、連帯保証人を立てるか、保証会社に保証料を払って保証してもらうか、どちらかの対応を取っているケースがほとんどだが、連帯保証人が保護される改正の流れになっている。

具体的には、家賃を払うなどの借主の債務について、連帯保証人になった後で家賃が増額になるなどの加重された分までは、連帯保証人が保証する必要はない。家賃が10万円の場合の連帯保証なら、家賃が15万円に上がったという場合でも、10万円だけ保証すればよいということだ。

また、連帯保証の契約では、連帯保証人が個人の場合には、極度額(保証する金額の上限額)を書面で合意することになった。想定した以上の金額を請求されることのないようにするためだが、極度額の記載のない連帯保証契約は無効になるので、注意が必要だ。これは、新規に契約する場合や、すでに交わした連帯保証契約の更新をする場合に適用される。

個人が保証の上限額を記載してまで連帯保証することは現実的ではないので、「この法改正によって、 家賃保証会社の利用がさらに増えるのではないか」と江口弁護士は予想している。

「瑕疵担保(かしたんぽ)責任」から「契約不適合責任」へ

「実は、最も影響が大きいのは、賃貸借よりも売買契約のほうにあります」と江口弁護士は指摘する。「瑕疵担保責任」の考え方がなくなり、「契約不適合責任」に変わるからだという。

「瑕疵担保責任」とは、事前に知らされていなかった重大な欠陥などがあった場合、売主に対して、損害の賠償を請求できるというもの。住むこともできないほどの欠陥であれば、契約の解除を請求することも可能。

この考え方が改正後の民法では、「契約不適合責任」に代わる。つまり、客観的に欠陥かどうか判断するのではなく、契約の趣旨、目的に適合しているかどうかで判断するわけだ。

住宅の売買の場合は、通常は居住することが目的となるので、それが達成できない場合はその程度に応じて、(1)~(4)までの選択肢が用意される。

【契約不適合責任の選択肢】

(1)損害賠償請求

(2)代金減額請求

(3)修補請求(住める状態になるように補修してもらうこと)

(4)契約解除

瑕疵担保責任では、(2)の代金減額請求や(3)の補修を求めるなどの追完請求は選択肢としてなかったし、(4)の契約解除は住めないほどの欠陥があるという条件付きだったのが、そのような制限はなくなったので、買主側の選択肢は増えることになる。

これまで以上に契約内容が重要になってくる

「契約不適合」という考え方が導入された背景には、瑕疵という概念が分かりづらいことや、買主の過失で瑕疵を見落とした場合に救済されないことなどを考慮する一方、より現実的な救済策として、代金減額や補修の請求などもできるようにして、柔軟な運用を可能にする見直しをしようということにある。

具体的な事例で考えてみよう。例えば、住宅を買う目的が、大量に収集した書物を収納する書庫がほしいからという場合、その重量に耐える基礎や床の強度が必要となる。一般的な住宅としての強度はあっても、大量の書物の重量に耐えられず床が傾くなどした場合、売主に「契約不適合」として、書庫として使用できるように補修を請求したり、損害賠償を請求したりできるようになる。もちろん、契約書に書庫として使用する目的があること、その重量に耐える強度があることが保証されていたり、補強工事をすることを条件としていたりといった記載が盛り込まれていることが前提。「そのつもりで買った」というだけでは該当しない。

つまり、同じような不具合があったとしても、売主の過失の有無や契約の内容によって、責任を追及できる範囲が変わってくるということになる。

民法改正が実現すると、これまで以上に契約内容がものを言うようになる。民法改正の国会審議にも関心を払い、契約の重要性を再認識してほしい。■取材協力

・弁護士 江口正夫さん
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