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第79回 行進など

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 辛い行進などの訓練が2週間続いて工場への配属となる。訓練が始まって2~3日もすると早く工場に配属されたいと切に思うことになる。
 配属工場でもその行き帰りに行進をするが、考査でやったほどに厳しくはないし、左足から出るなんてことはすっかり忘れ去るほどである(頭では忘れていても、体は覚えていてきっちりと左足から出ているのだが)。それでも、厳しいことにかわりはないが、新人時代の訓練に比べるとはるかに楽である。

 話はそれるが、工場配属後の行進の状況を独居出房から見てみよう。
 居室を出ると、「整列!」「気をつけ!」「前にならえ!」「なおれ!」と順に号令がかかる。次に、「足踏み~~始め!」との号令で、その場で左足から足踏みを始める。
 確かに、最初の一歩をどちらかの足と決めておかないと、全員の足が揃わない。その意味では合理的である。
 訓練の賜物か、自然と左足から出る。飼いならされたようで不愉快であったが。

 いよいよ「前へ~~進め!」となり、行進が始まる。
 すぐに階段となるが、階段では適当にしてよい。1階におりると、他工場の出役状況を見ながら出発まで待機させられる。順番がくると、さきほどの号令に従って、行進が再開される。
 時々「金線」がいる。「金線」とは、制服の袖に金色の線が入っている制服を着用している刑務官であり、偉いさんである。ちなみに所長は制服ではなく背広である。
 この「金線」がわりと怒鳴る。また逆に「金線」がいれば下役の刑務官がはりきって怒鳴る。「歩調を合わせろ!」「○○合ってないだろ~!」「手を振らんかい!」「足をあげんかい!」といったようなものだ。

 ダラダラと行進することは許されず、時折思い出したように、「指を伸ばせ!声が小さい!」との叱責を受ける。
 このような軍隊式行進、というより北朝鮮的行進(腿上げはしていないが)がなぜ必要なのかが分からない。
 刑務所生活の目的は介護・矯正・拘禁である。そして、この目的を阻害しないために各種の制約が課されることになる。では軍隊式行進を強制することはどうだろうか。どう考えても、軍隊式行進をしなければ、刑務所生活の目的を阻害する具体的危険はもちろん抽象的な危険すらないと思う。
 平成26年12月に福岡弁護士会が福岡刑務所に対して、憲法違反であり人権侵害であるとの理由で改善を求めている。刑務所側は逃走や口論の防止のため必要という旨の回答をしたらしいが説得力に欠ける。

 考査工場に話を戻す。考査工場での新入り訓練が2週間であることは書いた。私の場合、大分刑務所に移ってからの12月17日から開始された。その間、年末年始の休みが入るために、1月9日までが新入訓練であった。

 考査工場では、講義だとか面接だとかがあった。篤志家と言われる人の講義もある。
 どこかのお坊さんがきて、出所まではすぐだよということで、「星が、月と日(太陽)と一緒に旅行をして、宿に泊まったが、朝起きてみると月と日がいない。宿の主人に聞くと、もう宿を出ていったという。そこで、星さんが一言、月日がたつのは早い」という話もあった。月日がたつのは早いから、落ち込むことなく真面目に務めなさいよということだろう。

 さらに、配属工場を決める資料とするために、お偉いさん方々との面接がある。時間にしてわずか5分ほどではあるが。
 私が開口一番聞かれたのは、「今でも否認なのか」であった。当たり前である。ここへ来たからといってやっていないものをやったとは言えない。
 「はい」と答えたら、「へ~」と不満そうな一言が返ってきただけだった。一体どう思ったのだろうか。「へ~」との返事を聞いた私はすこぶる不愉快な気持ちであった。(つづく)

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第79回 行進など

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