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Cygamesが「グランブルーファンタジー」をネイティブではなく、ブラウザベースで開発した理由

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ひとつのゲームタイトルに関わるのは約100人!

きゃんち:今日は「グランブルーファンタジー」を開発しているCygamesさんに、増井さんと取材に来ました!

いま話題の「グラブル」がどのように開発されているのか、開発に深く関わっているお二人にお話を聞けるので、わくわくしています。

▲きゃんちこと喜屋武ちあきさん、株式会社トレタCTO 増井雄一郎さん

今回お話をしてくれたのは、CTOの芦原栄登士さん、「グランブルーファンタジー」開発チームのエンジニアリーダー、高橋満さんです。

きゃんち:まずは、お二人の自己紹介からお願いできますか?

芦原:取締役CTOの芦原です。開発部門、研究部門やインフラなどの技術分野全般を統括しています。入社前は、新卒の頃からずっとコンシューマゲーム業界でエンジニアをしていて、前職では弊社の代表と常務と一緒のチームで開発をしていました。

▲株式会社Cygamesの取締役CTO、芦原栄登士さん

エンジニアの統括役は他の会社でも務めたことがありますが、Cygamesほど急激に組織の規模が大きくなったことはないですね。現在はスタッフ数も1,200人を超えていて、エンジニアだけでも300人以上が在籍しています。

高橋:「グランブルーファンタジー」のエンジニアチームのリーダーをしています、高橋満です。グラブルは開発初期から携わっていて、当時は開発もしていましたが、現在はチームのマネジメント業務がメインです。

▲株式会社Cygames ゲームエンジニア/サーバサイド 高橋満さん

増井:Cygamesさんでは多数のタイトルを開発していると聞きましたが、1タイトル当たりどれぐらいの人数で開発しているんですか?

芦原:1タイトルあたりのエンジニアの人数は、開発初期でまだメンバーが少ない場合で3~4人、そこからリリース、運用にかけて人が増え、多いチームだと40人くらいになることもあります。

高橋:エンジニア以外のプランナーやデザイナーも含めると、ひとつのタイトルだけで100人程度のスタッフが関わることもあります。

きゃんち:1タイトルで100名!すごい数のスタッフさんが関わっているんですね。

増井:それだけ大所帯だと情報共有も大変そうですね。

芦原:そうですね。技術やノウハウの共有のために、様々な工夫をしています。たとえば、各タイトルのエンジニアリーダーを集めたミーティングを毎日実施して、それぞれで起こった問題やその解決策を共有・相談していますね。「グラブル」は独自のゲームエンジンを使っているので少し違いますが、弊社のタイトルは「神撃のバハムート」をベースとして開発しているタイトルが多いので、1つのタイトルで起こった問題は他のタイトルでも起こる可能性があります。

だからこそ、横の連携を強めて情報を共有しておくことが重要なんです。他にも、月に1度エンジニア職のメンバー全員を集めて「エンジニア全体ミーティング」を実施し、会社の技術的な方針や考えを伝えるとともに懇親会も行い、タイトルの枠を超えたエンジニア同士の繋がりを強化しています。

増井:同じシステムを由来としているのでチーム間の情報共有は大事なんですね。そしてそういう場所が用意されているっていうのはいいですね。ちなみに、なぜ「グラブル」だけ独自のゲームエンジンなんですか?

高橋:「グラブル」も「神撃のバハムート」と同様にブラウザベースで開発していますが、様々な新しい挑戦をしているタイトルなので、エンジンに関しては「グラブル」専用の仕様になっているんですよ。

ブラウザの限界に挑戦したら面白いんじゃないか

増井:スマホゲームのネイティブ化という流れの中、「グラブル」をブラウザベースの開発にしたのはなぜですか?

芦原:最初は、単純に「“ブラウザの限界”に挑戦したら面白いんじゃないか」というところから始まりました。ネイティブにあるような制限を受けずに、ブラウザならではの強みを活かして、もっと様々な方向へ挑戦をしてみたいという意図もありました。実際に開発してみて、ブラウザならではのメリットが活かせるゲームになったと思っています。

きゃんち:ブラウザならではのメリットというのはどういう点ですか?

高橋:まず、ブラウザベースのゲームは「どこでも誰でも遊べる」ので、ユーザーの間口が広がるというメリットがあります。ネイティブではアプリをインストールをしなければプレイできないのですが、ブラウザベースであればその必要がなく、誰でも楽しめます。

最初はスマホのブラウザ対応のみでしたが、いまはPCにも対応していますので、さらに幅が広がりました。

芦原:他にも、ネイティブだとデータの容量を気にしなければなりませんが、ブラウザはサーバーだけで動くのでその心配をする必要がありません。

更新する際もサーバーのデータだけを変えればいいですし、作り直したときのストアへの申請がいらないというところも利点ですよね。

高橋:極論をいえば、ブラウザであればリリースの10分前まで開発することが可能なので、開発の時間が長く確保できる分、それだけクオリティの追求がしやすいということにも繋がります。

「グランブルーファンタジー」を支えている技術とは?

増井:「グラブル」はどんな言語やツールを使って作られているんですか?

高橋:メインはPHPとBackbone.jsで、バトルの部分でNode.jsを使っています。ストレージまわりはmemcachedとMySQL、いわゆるLAMP環境ですね。

意外に思われるかもしれませんが、それぞれをチューニングしているだけで、そこまで特別なことはしていないんですよ。

ただし、やはりこのタイトルはユーザー数も多く、莫大な負荷のかかるサービスなので、その規模こそが特殊だと言えるかもしれません。

芦原:Node.jsは、チャットなどのサーバーからの通知機能に使っています。WebだけではなくNode.jsも同時に使っている、ハイブリッドになっているというところは1つの特徴ですね。

Node.jsでチャットを作るときはRedisのPub/Subを使うケースが一般的だと思いますが、「グラブル」ではそれだけでは捌ききれず、Pub/Subがすごく重くなってしまいました。

そこで前段にNginxを入れて割り振るようにして、後ろのPub/Subをなくすことでサーバーの台数を減らすことができました。Pub/Subでは追いつけないほど規模が大きくなっていたのです。

そのくらい大規模なシステムを捌く経験や、その経験を通してノウハウや能力を身に着けられる環境というのはかなり刺激的だと思います。

増井:一般的なWebシステムであれだけ大きなゲームが組み立てられているんですね。モバイル向けのゲームっていうことは、膨大な端末での動作をチェックする必要もありますよね?

高橋:そうですね。テストではHTML5のCanvasを使っていますが、端末依存なのでちょっと書きにくいですね。

ちなみに、テスト環境は自動化にしたかったのですが、開発環境に追いつかないため現在も人力になっています。

最初からAndroid2.3以上、iOS4.1以上とかなり間口を広くしていたので、すべての端末で動かすのがかなり大変でした。

次々と人気ゲームが生まれる開発現場には何がある?

きゃんち:Cygamesさんのオフィス内にはサウンド収録用のスタジオがあり、声優さんのボイス収録やイベントの生中継などを行っているのだそうです。今日は特別にスタジオを見学させていただきました。

▲サウンド収録スタジオを見学させていただきました!

▲ゲームのボイス収録もバッチリ!

きゃんち:ゲームの開発現場で大切にしていることは何ですか?

芦原:Cygamesのビジョンが「最高のコンテンツを作る会社」なので、ゲーム開発では「より面白くする」ということを何よりも大切にし、トライ&エラーを繰り返していますね。

ゲームは一度動かしてみないと面白いかどうかが分からないので、まずは動かせるところまで作り、「もっと面白くできる」と思えば作り直す、ということを繰り返しています。そうやって完成するまで何度も作り直すこと自体が“ゲーム作り”だと考えています。

増井:何度も作り直すことで現場のモチベーションが下がったりしないんですか?

高橋:モチベーションは下がらないですね。動かしてみて初めてそのゲームの面白さがわかりますし、新たな課題や改善点が見つかりますので、ある意味作り直すことは当たり前だと考えています。

また、「面白くしよう、最高のものにしよう」という明確なビジョンがチーム内に共有されているため、たとえ手間がかかったり大変な思いをしたりするとしても、同じ方向を目指すことができます。

うちのチームも、全員が「もっとグラブルを良くしよう」という強い気持ちを抱いて、全力でクオリティを追求していますね。

芦原:この「ゲームを面白くし続ける」ということと「多くのユーザー環境で安定させる」ことを両立するのは大変ですが、より多くのユーザーさんに楽しんでもらうために必要なことでもあります。

緻密な努力の積み重ねを大きな規模で、絶え間なく継続できるのがCygamesの強みのひとつだと考えています。

バンドマンにバー経営!?さまざまな経歴を持つエンジニアが活躍中

きゃんち:そこまで情熱をもった開発チームだということは、やはり元々ゲームが好きで業界に入ったという方が多いのでしょうか?

高橋:そうですね。僕の場合だと、もちろんゲームは好きでしたが、以前はWebシステムの会社でアルバイトをしながらバンドで音楽活動をしていました。

結局音楽の道はやめて、ゲーム業界に入りました。実はバーを経営していたこともあります(笑)。

芦原:うちの会社はいろんなバックグラウンドの人がいますよね。高橋さんの面接の時、バーの店長と聞いたときはさすがに驚きましたけど(笑)。

他にも元ボクサーや、休みの日は必ずキャンプに行く人とか…。個性豊かな人が多くて、一緒に働く身としては楽しいですね。

高橋:今、話に出た人は全員うちのチームメンバーなんですよ(笑)。

増井:面白い人が多そうですね(笑)。

▲技術書が並ぶ本棚。オライリー・ジャパン発行書籍が全巻あるのだとか!

月間300億PVの「グラブル」開発チームが求める人材とは?

きゃんち:「グラブル」の開発現場では、どんな方が活躍していますか?

高橋:ブラウザベースのソーシャルゲームはWebアプリなので、Webがわかっている人はもちろん強いですね。また、トラフィックが莫大になる中で、サーバーをいかに捌くかというノウハウも強く求められていますね。

増井:CMとかもバンバン打っているので、相当巨大なトラフィックになっているのでは?

芦原:その通りです。月ごとのPV数が約300億にのぼりますね。例えば、国内で80%のシェアを占める大手ポータルサイトの スマホ版が約200億PV/月なので、それを超えた膨大なトラフィックが生まれていることがわかると思います。

きゃんち:すごい数字ですね…!そんなサービスを運営していく中で、Cygameではどんなエンジニアが必要とされているんですか?

芦原:「大きなシステムを捌きたい」という人はぜひCygamesに興味を持ってほしいですね。これだけの規模のゲーム開発は、ほかでは経験できないと思います。

また、Cygamesは「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンとして掲げていますので、技術面だけではなく「より良いゲームを作りたい」「ユーザーのみなさんに心から楽しんでほしい」という想いのある方と、ぜひ一緒に仕事をしたいですね。

高橋:技術面では、サーバーの負荷についても考えられる人が活躍していますね。大規模なシステムの負荷対策に携わっていた方は、ノウハウを活かせると思いますよ。

増井:大規模なサーバーやデータなど、Cygamesでしか挑戦できないゲーム開発がいろいろありそうですね。

きゃんち:今日は貴重なお話をうかがえて楽しかったです。ありがとうございました。

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(執筆:はたけあゆみ 撮影:刑部友康)

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