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業績好調のニトリが買っていた“お、ねだん以上”の物件

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 コラムニストでデイトレーダーの木村和久氏が、近頃気になるニュースをピックアップし独自の視点で読み解きます。今回は、着々と都心への出店を進めるニトリを分析。

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 最近、ニトリの中目黒店がオープンしたので、見に行きました。総合家具・雑貨販売のニトリは、スペースを取る家具の展示がメインゆえ、郊外店が主力でした。それが最近、銀座に出店し、今度は中目黒、年内には新宿にも出店する予定だそうです。『シン・ゴジラ』並みの首都圏侵攻は、いったい何を物語るのか…? まずは中目黒店の現場へ行ってみます。

  中目黒のニトリは、山手通りと駒沢通りが交差する角にあり、非常に交通の便がよろしい。しかも、元はブランド家具店があった場所で、高級品からカジュアルへと、時代の趨勢を感じます。広さは2フロアと、郊外店に比べれば小さいのですが、要所は抑えており、たくさんのお客さんで賑わってました。

 ニトリといったら、やはり10万円以下で買えるソファセットが人気ですが、何セットも展示してあり、しかも貧乏臭くない。別にこれでいいじゃんと思えます。お約束の小物類も充実しており、190円の木製ハンガーの出来栄えは出色です。これを大量に買って、300円ぐらいで卸しても、誰か買いそうですからね。

 以前から家具業界は、高級品とお値ごろ品の、両極端なマーケットと言われてましたが、このところ高級品業界が値崩れし始めてます。お家騒動のあった大塚家具は、騒動が収まっても売り上げが伸びず、とうとう中古販売も始めたとか。そもそも家具って、全部高級品で揃えるのは、限られた人だけができる夢物語で、子供部屋はニトリでいいとか、寝室は誰も見ないから安くしようと、使い分けをします。だから皆さん、どこかしらでニトリなどのカジュアル家具のお世話になっているのが、本当のところでしょう。中目黒の出店も、都心部のお客さんが、近所にニトリがないと嘆いているから要望に応えたそうで、今後、ますます都市型店舗が増えると思えます。

 そんな快進撃を続けるニトリですが、実はびっくりするような買い物を、数年前にしていました。功なりを遂げた企業が、繁栄の証として象徴的な買収をするのはよくあることです。よくあるのは、プロ野球の球団経営でしょうか。近年では楽天の参入やDeNAの買収が話題となりました。ニトリも時価総額1兆2000億円の大企業ですから、球団買収など朝飯前でしょう。でも、それをやらない。代わりに、非常に趣味のいい物件を購入したのです。

 2010年に、ニトリは京都の南禅寺界隈別荘群のひとつ、「對龍山荘」を購入しました。南禅寺界隈別荘群というのは、明治の元勲・山形有朋が別荘を建てたのを機に旧財閥や野村證券(碧雲荘)、松下電器(真々庵)などのオーナーが別荘を建て、15軒ほどの別荘が集まり、知る人ぞ知るの世界となっております。

 時は流れて、オーナーも代わり、別荘を維持するのが難しくなった企業も現れました。実はニトリも、維持に困り果てた前の企業から、打診されての買収でした。最近の南禅寺界隈の別荘は、外国企業や宗教法人が買収して方向性が見えなくなりつつあります。そんな矢先、日本を代表する企業がホワイトナイトを買って出たという見方が、正しいかも知れません。

 じゃ具体的に南禅寺界隈別荘群は、いくらぐらいするのか? 以前5000坪ほどの敷地の別荘がオークションにかけられたときは、売り出し価格が80億円でした。実際の売買価格なら100億円はいってるでしょう。對龍山荘は1800坪ながら、作庭家・七代目小川治兵衛の傑作と言われてますから、数十億円は下らないでしょう。

 これをプロ野球球団の買収と比べてみるとどうでしょうか。DeNAの買収のときは、100億円弱と言われてますが、ほかに年間の球場使用料やら、球団維持費、選手・スタッフの給料などがばかになりません。観客動員でペイできるかは手腕次第ですし、そもそも、毎年ペナントレースを戦うわけで、弱かったらボロクソの世界。宣伝になるのか、逆宣伝になるのか、未知数です。

 一方、南禅寺界隈の別荘は、買えば後は年間2億~3億円の維持費のみ。文化財になっている建物も多く、所有者は管理・維持に努めねばなりません。ニトリの場合は、会社の保養施設として、ホームページに載せてますから、社員は一定の手続きをとれば、見学できるというもの。実に羨ましいですな。

 企業としては、京都文化のパトロンになり、野村や松下と並ぶことができたわけですから、格はかなり上がったと思えます。まさに“お、ねだん以上”の買い物をしたのじゃないでしょうか。


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