緊急時に人の命を救う「救急救命士」ってどんな資格?

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緊急時に人の命を救う「救急救命士」ってどんな資格?

ますます需要が増えている国家資格

 

近年、日本では、大地震をはじめ自然災害が起こる頻度が高くなっている。災害現場では訓練を積んだ専門家の力が必要で、なかでも「救急救命士」は医師に代わって直接患者の命を救うことができる国家資格として、需要が高まっている。

 

救急救命士は、たいていは地方公務員として全国の消防署に就職。要請に従い救急車に同乗し、けが人や病人を病院まで搬送する間に、病院にいる医師と連携をとりながら救急救命の処置を行う。

 

資格を取得するには

 

資格を取得するには、①大学や専門学校で学び卒業と同時に国家試験を受ける場合と、②救急隊員として働いている途中で専門の養成所に派遣され国家試験を受ける場合とがある。

 

どのルートもそれぞれ利点があり、この①の中でも、専門学校は最短2年で資格を取得でき、早々に現場で働けるというメリットがある。

 

対して、大学は数こそあまり多くはないが、一般教養を含め、幅広く知識を学べるという点が特徴。また多様な実習があり、医学的知識などの座学に関しても時間をかけて取り組めるなど、4年制ならではのメリットがある。救急救命士の資格を取得しておきながら、消防署勤務ではなく教員になったり、医療機関や一般企業などに就職するなど、就職先の幅はより広がる。

 

 

受験資格が得られる大学の一つが、国士舘大学の体育学部スポーツ医科学科だ。東京消防庁のOBが多く教鞭をとっており、現場を見てきた者が心構えなどをしっかり教え込むという。

 

同大学の齊藤英一准教授も東京消防庁のOBで、東日本大震災における福島の原発事故の現場など第一線で活躍してきた。福島原発では、齊藤先生が実際にけが人に接することはなかったが、目に見えない、においもない放射能の恐怖に怯えながら、何日間もひたすら待機し続けたそうだ。今回は、現場に精通した齊藤先生に救急救命士の仕事についてお話をうかがった。

 

自然災害や事故よりも、病気などでの出動が多い

 

 

119番による救急車の要請の60%以上が病気によるもの。そのほか、高齢者がつまずいて転んだ場合なども多く、ニュースなどでよく目にする交通事故、山岳事故、工場での事故、自然災害などの対応は、数としてはそれほど多くありません」

 

私たちが想像するより地道な仕事なのだという。

 

「具体的な救急救命士の仕事は、気道の確保や気管挿管(チューブを挿すこと)、心臓マッサージの処置などで、現場は違っても同じことを繰り返すことがほとんど。

 

けれども、こういう仕事の中で学ぶことが本当に多いんです。例えば、『おじいさん』『おばあさん』などとは呼ばずに名前で呼んでコミュニケーションを取ることがいかに大切か、パニックを起こしている人を不安にさせない対応とはどういうことか。もちろん医学的に正しい知識も必要。情報共有に基づいた、チームワークも欠かせません。

 

毎回、毎回出動するたびになにか反省点があり、チーム全員でそれを振り返って次に生かしていく。その積み重ねがあってこそ、大きな災害現場でも迅速に対応できる力が蓄えられます」

 

 

困って助けを求めている人にとっては、119番は一生に一度か二度の大ごとで、苦しさや痛みに耐え切れず救急車を呼んだのだ。そのことを忘れてはいけないという。大学や専門学校では、医学理論、救急医学はもちろん、高齢者や子ども、新生児への対応なども実践的に学ぶ。

 

「人の役に立ちたい」から一歩踏み込んで進路を考えよう

 

 

現場は海であったり山であったり、また狭い住宅であったりして、教室での実習のようにスムーズにことは運ばない。

 

例えば、記憶に新しいバスの転落事故。足場の悪い斜面でどうやって大勢の人の救命をするか。住宅の2階から狭い階段を通って、どうやってけが人や病人を運び出し、救急車へ収容するか。こういった場合でも落ち着いていつもどおりの処置ができるか…。

 

大学や専門学校では、実際の救急車や医療器具などを使って、時には教室を出て授業を行う。これらは現場での仕事にも直結する学びだ。学校により、実習内容や場所はさまざまで、同大学では屋外での実習や、資格とは直接関係ないレスキュー隊OBによる救助実習の授業があるという。

 

 

実習経験が多ければ多いほど、落ち着いて正確な行動ができ、「命を救う」という最も大切な職務に近づける。「どんな救急救命士になりたいか?」「この資格をどんな職場で生かしたいのか?」という自分なりのポイントをもっておくと、学校選びがスムーズになるという。

 

では、救急救命士の資格を取得して厳しい現場で働くには、どのような心構えが必要なのだろうか。

 

「多くの学生が人の役に立ちたいと言って入学してきますが、人の役に立つ仕事はほかにもたくさんあります。

 

もう一歩踏み込んで、なぜ救急救命士を目指すのか考えてください。かっこいいでもいい、あこがれでもいい、何か自分の心に感じるものを探してください。

 

それをもっていると、学校生活での勉強が有意義なものになります。救急救命士として働くと、『1分1秒でも早くやれた!』『やるべきことがやれた!』ということがうれしくて日々やりがいを感じられます。

 

それが明日へのモチベーションになります。そして、当たり前のことですが、命が助かった方からありがとうと言われることのよろこびは何にも代えがたいものです」

 

 

なお、救急救命士の資格は消防署に勤務してから取得する場合もあると前述したが、最近は、最初から資格取得予定者(資格試験は3月なので就職が先に決まってからの試験となる)を採用する場合が増えているそうだ。

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