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「勝てる戦い」はどこにある!?『確率思考の戦略論』が、これほど注目されているワケ

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丸善、そして、ジュンク堂。この2つは、ビジネスパーソンや各分野の専門家を主な利用者とする書店グループです。その購買データの分析により、ビジネスパーソンにとって「いま注目の本」がわかります。今回は、6月の「マーケティング・宣伝」分野に絞り、売れ筋のランキングとトレンドを読み取ってみました。

注目したのは、6月2日に発売されたのち、6月のランキングで堂々の1位をかざったジャンプアップ本『確率思考の戦略論』です。副題が「USJでも実証された数学マーケティングの力」と書かれているように、USJをV字回復させたマーケティング本部長が記した本書。なんと、2位以下の本よりも倍以上売れており、いま大注目の一冊です。

この「マーケティング・宣伝」分野は、2月から5月の4ヵ月間、『佐藤オオキのスピード仕事術』がずっと1位に君臨していた分野です。なかなか次なるヒット本が現れない中、ついに登場したヒット作品がこの『確率思考の戦略論』だという訳で、期待感も高まります。

いったいどうしてこれほど人気を博しているのか。同書の読みどころを、探ってみました。

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

作者:森岡 毅・今西 聖貴

出版社:KADOKAWA/角川書店

その前に、まずは6月のランキング・トップ10をご紹介。長く売れている本はお馴染みの顔ぶれですが、いくつかランクインしてきた本も気になります。

丸善・ジュンク堂 「マーケティング・宣伝」書籍ランキング 2016年6月


稀代のマーケターとアナリストが、タッグを組んで描いた戦略。及び、そのノウハウ

さて、冒頭でも少し記しましたが、『確率思考の戦略論』は、USJをV字回復させた立役者(マーケティング本部長)が記した本です。実際に数字を見てみるとそのスゴさが分かります。

2010年に730万人だったUSJの年間来場者数が、この著者が転職してきた後、2015年度には1,390万人にまで増えています。つまり、5年間で毎年100万人以上集客を増やし続け、たった5年間で来場者数を倍増させた計算になるわけです。しかもそれが偶然ではなく、計算の上だったというのですから、そのノウハウは気になってしまうでしょう。

しかし本当に計算の上だったのでしょうか?偶然の事象を普遍的なように語る本もありますので、まずは著者のプロフィールを調べてみました。

本書は著者が2人いますが、USJのマーケティング本部長であるのは森岡毅氏です。この方は、96年にP&Gへ入社してから2010年にUSJへ移るまで、約15年間、消費財マーケティングの最前線にいつづけた生粋のマーケター。P&Gといえば、知る人ぞ知る、世界的にトップクラスのマーケティング部隊を持つ外資系企業です。その最前線にいつづけたわけですから、これは再現可能なノウハウをもっている可能性はとても高い。実際にUSJで成果を出したわけですから、記されたノウハウの再現性は折り紙つきだといえるでしょう。

もう1人の著者は、森岡氏が全幅の信頼を寄せるアナリスト・今西聖貴氏です。本書の内容にもありますが、総額450億円もの投資を行い「挑戦」を試みた森岡さんは、その成否の確率を導き出すにあたって、アナリスト・今西氏の元を訪れたといいます。彼もまたP&Gの世界本社で20年以上にわたって需要予測モデルの開発を指揮し、世界中のエリートが集まるP&Gの研究機関の中でも、異彩を放っていたという人物です。

この2人が、確率・統計を駆使して、「成功確率を高める戦略」を描いた。そしてその戦略が結実し、前述のようなV字成長に結びつく。そのノウハウを本書に記した、という訳なので、どうやら本当に、再現性の高い有用な内容のように思えます。

年間100万人以上、集客を増やし続けた「戦略」の本質とは。その答えは「確率」にある

ではいったい、どんな内容が書かれた本なのでしょうか。ここではいくつか、特徴的な記述を抜き出してみました。

森岡さんは、USJが成功した理由として、「勝てる戦いを探した」だけだと語っています。「彼を知り己を知れば 百戦殆うからず」という孫子の故事のように、勝てる確率の低い戦いはできるだけ避けて、勝てる確率の高い戦いを選ぶことが大切だというのです。

そしてこの「勝てる戦いを探す」ために、確率を調べ、確率を操作することが大切だと続けます。「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率はある程度まで操作することができる」と述べる森岡さんは、今西さんというパートナーとともに、確率を操っていきます。

ここで興味深いのは、森岡さんと今西さんが、「ビジネスの局面には本質的に共通している『法則』がある」と言っていることです。つまり、再現可能なノウハウがあるといっているのです。「法則」には、数学的に証明できていることや、数式で導き出される有力な仮説など、すでにわかっていることがたくさんあると言います。そのため、導かれた結論であるそれらの法則を理解しているだけで、成功確率が高い戦略をつくれるようになるのです

一例として、消費者の「プレファレンス」が市場構造を決定させる、という法則を示します。「プレファレンス」とは、ブランドに対する消費者の相対的な好意度(好み)のこと。これは主に、ブランド・エクイティ、価格、製品パフォーマンスの3つによって決まります。

では、プレファレンスが高いものが高頻度で購買されるとしたとき、企業はどうしたらいいのか。当然、プレファレンスを高めるために、経営資源を投下するべきです。すると、アイデアがいかにプレファレンスを高めるかという「確率」、プレファレンスの高まりがどのくらい購買を動かすのかという「確率」を導けば、経営資源を投下するべき対象が明確になるでしょう

本書では、このプロセスを、具体的な数式の使い方も交えながら示していきます。きわめて実践的な記述が、そこにはあるのです。

身に着けるのは、戦略的な考え方か。発想法か、マーケティング論か

実は著者・森岡毅氏は、過去に2冊、USJの躍進の裏側を記した本をすでに出しています。

1冊目は2014年2月に発売された『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか』という本。内容は、USJのドラマチックなV字回復の軌跡をたどりながら、「アイデア発想の技術」を学ぶことができるというものでした。この内容がすばらしく、それまでは一般的にはまだ無名だった森岡さんでしたが、一躍、注目の人となっていきます。同年9月には、NHKプロフェッショナルに出演もしたため、さらに本が注目されたのでした。

そして、2016年4月に2冊目の本『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』が発売されます。この本はUSJ成功の裏側を「マーケティング」に絞って記述しなおした本でした。

続く3冊目として、今度は「数学・統計」を裏づけとしたマーケティング、さらに「戦略」を描く本として出版されたのが、今回紹介した『確率思考の戦略論』です。

このように見てみると、『確率思考の戦略論』は、USJのV字成長の裏にあった、より“本質的”な戦略論と、具体的な数字の扱い方を記した本であることが、改めて分かります。実践的なノウハウを求めている人には、本書だけで充分な学びがあると思うのですが、多様な視点から1つの事象を見てみるためには、前著2冊を合わせて読んでみるのもおもしろそうです。

丸善、そして、ジュンク堂の「マーケティング・宣伝」分野における「売れ筋ランキング」から、今回は『確率思考の戦略論』に注目し、その売れ筋理由を掘り下げてみました。

最後になりますが、私がひそかに注目していることは、この本に描かれた取り組みが「現在進行形である」という点です。USJの成長と、そのために打ち出される数々の施策は、当然ながら今もこれからも続いています。すると、これから打ち出されるUSJの施策の裏にも、この本に描かれたような分析や、戦略が、あるのでしょう。その戦略を自分なりに推測し、また成否の確率を導いてみることは、とてもおもしろそうだと思っています。

文:hontoビジネス書分析チーム

本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

協力:honto

読みたい本に必ず出会える。読みたい本を読みたい形で読める。

「honto」は書店と本の通販サイト電子書籍ストアがひとつになって生まれた

まったく新しい本のサービスです

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