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信頼を失う「置き去り会話」にご用心!

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【「わからない人」にしているのは誰?】

「わかりません」と答える人は、
本当にわからない人なのかしら?

それとも
本人を交えずに周りで会話をしておきながら
突然、「~ですよね?」と話をふって
本人が「わかりません」と答えているのかしら?

後者なら、わたしたちにやれることがあるはず。

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「聞いてもきちんと答えられないから」

「記憶障害や理解力の低下があるので、本人にたずねてもきちんと答えられないから、家族に聞くようにしています」

わたしが出会ったそのケアマネジャーは、「よく眠れていますか?」ということさえ、本人ではなく家族に聞くようにしていました。そのため、訪問時のやりとりの大半は家族としていたようです。そして、本人の意向を確認する時だけ、本人に問いかけていたそうです。

「デイサービスも休まずに参加され、ご家族も少しは息抜きができるようになりましたか? それは良かったですね。これからも引き続き参加してもらえたらいいですね。ご本人も休まずに参加しているから、楽しんでいるのでしょうね。」と家族に伝えた後で、「ね? 楽しいんですよね?」と本人に確認するという具合に…。

いきなり会話をふられても…

それまで奥様と向き合って会話していたのに、最後になって、突然、本人に目線を向けて、「これまでの会話、聞こえていたでしょ?」という前提のもと、本人を会話に巻き込んでいました。それはまるで、「わたし、ケアマネジャーとして、あなたの意向を確認しましたよ」といわんばかりの、まるでアリバイ作りのような会話です。

そんな突然の質問に、それまでの会話に耳を傾けていなかった本人は、「ん?えぇ、まぁ…」とぼんやり答えるのが精一杯。これで、「やっぱり会話が理解できないんだ」というケアマネジャーの確信はゆるぎないものになってしまっていたのです。

「置き去り会話」していませんか?

本人を会話に交えずに、ないがしろにした会話を想像することは、難しくないでしょう(自分がされたという経験がある方もいるでしょうし、目撃したことがあるという方もいるかもしれません)。わたしは、これを「置き去り会話」と呼んでいます。

本人の意向や病状、介護者の体調や都合、介護上の注意事項、経済事情など、いくつもの要素を考慮に入れながら、これからの暮らしについて考える必要がある時には、その会話の内容は複雑になりがちです。本人が話についていけなくなることもあるでしょう。そのため、家族と介護スタッフの会話が増えることは自然なことです。

ただ、「置き去り会話」の問題点は2点あります。

初めに「本人に聞く」ということをしていない

そもそも、本人のことなので、答えられるかどうかではなく、本人に聞くということがマナーです。そして、複雑な会話なのであれば、本人がわかるように、質問の言葉を選び、伝えたいことをわかりやすくするために、イラストや写真などを用意するなどの「工夫」をこらすことが求められます。「置き去り会話」は、こうしたマナーや工夫を放棄して、こちら側の課題を棚上げにしているから問題なのです。

本人に断りなく、周囲の人との会話に移っている

仮に、本人に直接聞くことをしていたとしても、問題となるのは、何の断りもなく、周囲の人との会話に移っているということです。ひと言、「では、ご家族のご意見もうかがいますね」「職員の方にもお聞きしていいですか?」と断ることで、あなたをないがしろにしているわけではなく、尊重していますよというメッセージにもなります。改めて本人に意向確認する際にも、「もう一度、お話をおうかがいしていいですか?」と断り、意向を確認したい内容を説明する会話をきちんと行えるようになるでしょう。

「わたしは信頼されていない」「子ども扱いされている」「バカにされている」「無視されている」…置き去り会話は、信頼を損ねることはあっても、信頼を深めることには一切つながりません。また、それを見ている周囲の人(家族や関係者)からも、信頼を失いかねないことを肝に銘じなければなりません。

おわりに

この点をフィードバックしたケアマネジャーが、後日、本人と会話をしたら、すべての質問に自分の言葉で答えられたそうです。ケアマネジャーは、「こんなに会話ができると思っていませんでした」と言っていました。

ちなみに、わたしは置き去り会話の場面に遭遇したら、いま周囲の人が会話していることを、置き去りにされている本人に投げかけ、その会話に本人を巻き込むようにしています。主役はいつも本人であることを忘れず、皆さんも置き去り会話に遭遇したら、このコラムのことを思い出してくださいね。

この記事を書いた人

裵 鎬洙

アプロクリエイト代表
認知症介護コーチ&講師
コミュニケーショントレーニングネットワーク講師
介護支援専門員実務研修講師
介護支援専門員専門研修講師
介護職員初任者研修講師

【略歴】
 関西学院大学卒業後、訪問入浴介護サービスを手がける民間会社に入社。その
後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどで相談業務に従事。コミュ
ニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチング/コミュニケー
ションのトレーニングに参加し、専門職のあり方が利用者にどれほど影響するか
を実感。
 現場での臨機応変な対応につながるコミュニケーションセンスやケアの観点を
一人でも多くの人に届けるべく、研修・セッション・執筆等を行っている。介護
福祉士・介護支援専門員・主任介護支援専門員。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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