海外から理解されにくい日本の伝統色〜白黒はっきりしない文化がここにも!〜
日本の色彩は、海外のそれより淡く優しい色合い。名称にも風情を感じます。なかでも英語で説明しにくい日本ならではの伝統色を、名前の由来とともに5種類挙げてみました。
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浅葱色(あさぎいろ)
(C) colordic.org
青とも緑ともつかない、浅葱色。薄い葱(ねぎ)の葉のような色をしているので、こう呼ばれます。日本をはじめアジアで食べられている葱(Welsh onion)は、西洋の葱(LeekやGreen onion)と種類が異なります。ですから「葱の葉の色」と説明しても、西洋の人たちの頭に浮かぶのは少し違う色かもしれません。
こちらは日本の葱(Welsh onion)。
こちらが西洋の葱(右上がLeek、真ん中がGreen onion。左下に見えるのは、同じ葱属であるニンニクですね)。
浅葱色は、新選組の袴の色としても知られています。もとは切腹する武士が来ていた裃(かみしも)の色。また田舎侍の着物裏の色でもありました。
鴇色(ときいろ)
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見るだけで気持ちが華やぐような、優しい薄紅。鴇色はその名のとおり、日本を象徴する鳥である鴇(とき)の羽の色に由来します。今では日本で見ることさえ難しくなってしまった鳥の羽の色を、英語で表現するのは至難の業でしょう。
鴇は桃花鳥とも呼ばれます。その名を冠した鴇色は、まさに桃の花のような美しさ。「桃の花の色」と説明すれば、わかってもらえるでしょうか。
また鴇色は、乙女色(おとめいろ)と呼ばれることもあります。そういえば、乙女の紅潮した柔らかなほっぺたを想起させる色合いです。江戸時代から、若い女性が好んで使っていた色でした。
団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
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やや明るく温かみのあるこの茶色は、団十郎茶と呼ばれます。歌舞伎役者の市川団十郎が代々用いた、成田屋の色。ベンガラと柿渋で染められており、江戸時代に流行しました。
同じく歌舞伎役者が好んで使っていた色に、芝翫茶(しかんちゃ)があります。
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三代目中村歌右衛門が使っていた色で、歌右衛門の俳名が「芝翫」であることが名前の由来です。
団十郎茶よりも全体的に薄い色合いですが、どちらもひとくくりにすれば「茶色」。それでも微妙な違いにこだわり、色を使い分けていた歌舞伎役者たちや江戸の人々の色彩感覚に驚かされます。各色の違いを英語で表現するのは、なんとも難しいのではないでしょうか。
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照柿(てりがき)
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鮮やかな橙色は、熟しきった柿の皮の色。非常に日本らしい色だといえます。柿は日本が原産で、KAKIという名前と共に日本からヨーロッパ、アメリカ大陸へ渡ったといわれているからです。
柿といえばPersimmonだと授業で習った方もいるかもしれませんが、Persimmonは厳密には違う種類の果物です。
KAKIはシーズンになればアメリカのスーパーマーケットや市場で簡単に見つけることができますが、その多くはやや固めのシャキシャキしたもの。追熟が進んだ照柿の色には、なかなかお目にかかれません。
照柿色に熟した柿も美味しいものですけどね。
卯の花色(うのはないろ)
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旧暦4月頃に咲き、「卯月」の名前の由来になった卯の花。平安の昔から日本に生息するこの花は、他の土地ではなかなか見ることができません。したがって説明するのも難しいでしょう。
卯の花色は、「真っ白」であることを形容するのにも使われます。真っ白といっても、卯の花色は実際には青みがかっています。わずかに青色を足すことによって白よりも白く見せる平安時代の人々の感性に、賛辞を送りたくなります。卯の花の季節は初夏。夏に似合う、涼しげな白です。
日本の伝統色を眺めると、薄墨がかかったような中間色が多いことに気づきます。まるで、白黒はっきりつけずに白も黒もよしとする、穏やかな日本人のようではないでしょうか。
いつまでも大切にしたい、優しい色の数々です。
[原色大辞典]
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