これぞTHE日本のカレー! 味もパッケージも懐かしい「オリエンタルカレー」を知ってるか【名古屋】
子どもからお年寄りまでみんな大好きなカレー。街に出れば、インドカレーやタイカレー、欧風カレーなど多種多様なカレーが楽しめるが、やはり家で食べるカレーに勝るものはない。
そこで味の決め手となるのは、カレールー。どこの家庭の「ウチはこれでないとダメ」というこだわりがあると思う。生まれも育ちも名古屋の私はコレ!
それがオリエンタルの「即席カレー」である。
▲「即席カレー」151円 ※公式HPオンラインショッピングの価格
えっ、知らないって!? 名古屋では定番中の定番なんだけどなぁ……。
オリエンタルの歴史については後でじっくりと説明するとして、この「即席カレー」は、多くのメーカーが採用している固形タイプではなく粉末タイプなのが最大の特徴なのだ。
日本の本格的ルータイプ、インスタントカレーの元祖
ってことで、もっとこのカレーについて知りたくて、愛知県稲沢市にある株式会社オリエンタルへ話をうかがいに行ってきた。
ご対応くださったのは、株式会社オリエンタルの参与で、長年にわたって研究開発室で新商品の企画・開発に携わってきた山内正雄さん。
最近のカレールーは調味料脂肪分が多いのですが、オリエンタル「即席カレー」は粉末ですから、控えめになります。だから肉や魚介、野菜などカレーに入れる具材によって味が大きく左右されます。そこにカレーが家庭の味といわれる所以があると思います。(山内さん)
「即席カレー」が発売されたのは、終戦直後の昭和20年11月。にもかかわらず、レシピや味は当時とほとんど変わっていないという。つまり、辛さや香りのバランスなどカレールーとして完成されていたということだ。
戦前からカレーライスは洋風料理として人気でしたが、家庭で作る際に炒めた小麦粉にカレー粉を混ぜなければならず、これが手間のかかる作業だったんです。戦後、弊社の創業者である星野益一郎は、カレーが家庭料理として普及しつつあることに着目し、もっと簡単に作ることができれば売れると考えました。そこで考案したのが、小麦粉にバターや牛脂を混ぜて焼き、カレー粉と調味料まで入った本格的なカレールー。日本のインスタントカレールーの原点はこのときに完成した、弊社の「即席カレー」です。(山内さん)
▲ 創業者・星野益一郎氏(写真提供:株式会社オリエンタル)
しかし、当時は庶民にとって、カレーは高嶺の花どころか、食べたことさえない人も多かった。そこで星野益一郎氏は自らリヤカーに商品を積んで、街へ出て販売した。
昭和28年にはそんな地道な販促活動が実り、知名度が上がると「オリエンタルカレーの唄」を作り、4トントラックを改造した宣伝カーで仙台から沖縄まで全国行脚をした。
▲宣伝カーによるPR(写真提供:株式会社オリエンタル)
私の出身は滋賀県の田舎町ですが、そこにも宣伝カーが来ましてね。母親が「即席カレー」を買ってくれて、生まれて初めてカレーを食べました。6歳のときです。しかし「即席カレー」は1袋で5人前なんですね。私は10人家族でしたから、倍に薄めなければなりません。カレー風味の野菜水煮のようなものでした。肉は高価でしたから代わりにサバ缶を入れていました。それでも美味しかった! 今でも食べたときの感動ははっきりと覚えています。(山内さん)
今のように甘口や辛口、中辛といったものもなく、辛いのが苦手な人にはトマトをふんだんに使用した「即席ハヤシドビー」、すなわちインスタントハヤシを用意していた。
▲「即席ハヤシドビー」151円
余談だが、私の両親はこれをお湯で溶いて、とんかつにかけて食べていた。デミグラスソースと同じだから、そりゃ旨いに決まっている。
レトロなパッケージと家庭の味わい
さて、ここからはオリエンタルの商品を紹介しよう。まずは、「即席カレー」に次ぐ人気を博しているのが昭和37年に発売された「オリエンタル・マースカレー」。
▲「マースカレー」(130g)216円
カレールーとは別に添えられている特製マースチャツネを入れてじっくり煮込むと味に深みが出る。こちらも「即席カレー」と同様に家庭の味にこだわったやさしい味わい。レトロなパッケージデザインも◎。
▲左「マースカレー レトルト版」、右「マースカレー 辛口 レトルト版」各248円
どこか懐かしい味の「マースカレー レトルト版」。ノーマルのほか辛口も用意。
こちらは「マースハヤシ レトルト版」。ハヤシにもマースチャツネがじっくりと煮込まれている。
▲「マースハヤシ レトルト版」248円
厳選した香辛料を用いて、牛肉や野菜、果物を調理して十分に煮込んだ「濃縮生乃カレー」。肉や野菜を加えれば、カレー専門店にも負けない本格的な味になる。こちらは商品名の通り、濃縮タイプ。1袋で2~3皿分作ることができるのでかなりお得。
▲「濃縮生乃カレー」388円
当時「濃縮生乃カレー」はテレビCMで大々的にPRしていて、私もよく覚えている。「よそ様とちょっと違う手作りの味」というフレーズが印象的。
この「よそ様」とは、「よその家」を指すが、実は違う意味も込められている。
当時、レトルトカレーは便利な反面、味が今ひとつといわれていました。それを覆そうと作ったのが、この「濃縮生乃カレー」です。(山内さん)
つまり「よそ様」とは「ほかのメーカー」という意味でもあるのだ。ここにオリエンタルの、老舗カレーメーカーとしての自信と誇りがうかがえる。
オリエンタルのテレビCMでほかに私が印象に残っているのは、トロピカルフルーツのジュース、「グァバ」。昭和50年代には、オリエンタルは飲料業界にも進出していて、缶コーヒーやコーラ(!)もあった。
▲「グァバ」(6本入り)822円
当時、小学生だった私はCMを見ても「グァバ」の味を想像することができなかった。実際に飲んでみると、かなり甘ったるかったのを覚えている。残念ながら飲料からは撤退したが、この「グァバ」だけは今も作り続けている。
本格インドカレーをレトルトで再現
今でこそ、レトルトカレーは多種多様な種類があり、辛さや味はかなり細分化されている。どんなマニアにも対応していると言っても過言ではない。
オリエンタルは30年以上も前にかなりマニアックな商品を生み出している。山内さんが開発を手がけた「男乃カレー」がそれだ。
▲左/「男乃カレー ビーフ」、右/「男乃カレー チキン」各486円
本格的なインドカレーをレトルトで一般家庭の食卓に届ける、というのがコンセプトでした。しかし、インドカレーの生命である香辛料がレトルトの殺菌によって味や風味が大きく変化してしまうのです。試行錯誤を重ねて、香辛料の香味を油に移すことで解決しました。(山内さん)
どの程度日本人の味覚に合わせるかも熟慮に熟慮を重ねた。結果、日本人向けに一切アレンジせず、とことん本場の味を追求することにした。
また「男乃カレー」というインパクト十分のネーミングもかなり難航したという。
有力候補が挙がらないまま議論が続き、疲れきっていたときに誰かが冗談で「このカレーは女性や子どもには用がない。辛口が好みの男性だけに食べてもらえばいいのだから、“男のカレー”」と、言ったんです。それがそのまま商品名になりました。(山内さん)
▲山内さんの技術者魂を引き継いだ研究開発室のメンバー。左から中島唯さん、北嶋正治さん、篠田江美さん
これまで慣れ親しんだカレーとはまったく違うため、発売当初は「辛すぎる!」というクレームが数多く寄せられた。その反面「今までにない味でとても感動した」「こんなカレーがレトルトで食べられるのはうれしい」という支持する意見も多かった。しかし「男乃カレー」が発売されてから2年後に激辛ブームが到来すると、辛さに対するクレームがピタッと止んだという。
今ではエスニック料理のレトルト食品が沢山ありますから、「男乃カレー」は逆に「辛さが足りない」というご意見をいただきます(笑)。新商品の開発は、時代と環境とタイミングだと思います。(山内さん)
一昨年、彼らが試行錯誤を繰り返しながら、満を持して発売したのが「香り薫るカレールウ」。これまでオリエンタルがこだわり続けてきた家庭の味ではなく、高級レストランで食べるカレーのようなコクや旨み、香りを見事に再現している。
▲「香り薫るカレールゥ」410円
「今スグ食べたい」なら直営店へ!
オリエンタルの商品は東海地方のスーパーや百貨店、公式ホームページでも購入できる。「ルーから作るのが面倒くさい」という方は、中部国際空港(セントレア)や名神高速道路養老SA下りに直営店があるのでご安心を。
「オリエンタルキッチン セントレア店」では、知多半島産のあいち知多牛や知多豚、元気卵、豊田市旭地区産のお米、ミネアサヒなど地元の食材をふんだんに使ったメニューがズラリ。
カレーソースは玉ネギと赤ワイン、生クリームを使用したオリジナル。ノーマルとスパイシーの2種類から選べるほか、小麦粉を極限まで焙煎した濃厚で深いコクが楽しめるデミハヤシも用意している。
▲「知多豚の手打ちカツカレー」1,500円
前にも書いたが、オリエンタルが一般家庭にインスタントカレーを普及させた原点は宣伝カーによる販促活動である。現在は宣伝カーこそ使っていないが、今でも関東のスーパーや百貨店を中心にキャンペーン活動を展開していて、詳細はオリエンタルのFacebookページでチェックできる。
関東で商品を見かけたら、即ゲットだ!
お店情報
オリエンタルキッチン セントレア店
住所:愛知県常滑市セントレア1-1 中部国際空港セントレア4階ちょうちん横丁内
電話番号:0569-38-1720
営業時間:8:00~21:00
定休日:無休
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
オリエンタルカレー公式ホームページ
【公式HP】http://www.oriental-curry.co.jp/ 【通販サイト】http://www.oriental-shop.jp/ 【Facebook】https://www.facebook.com/orientalcurry/
書いた人:永谷正樹
名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。
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