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50年前、楳図かずお作マンガ「ウルトラマン」とテレビ「ウルトラマン」の間でおきたドタバタの戦略劇

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今年、TV放送から50週年を迎えた「ウルトラマン」。それを記念してイベントやいろいろな出版物もリリースされ盛り上がっている。自分も、シリーズのレオまでなら怪獣は大体分かるほどまあまあのファンである。

 

そんな中、私の友達の小学2年の息子が「ウルトラマンを見て泣いた」と言う。

 

何を見たの?「さらばウルトラマン」?「小さな英雄」?「故郷は地球」?

 

どれも違った。

 

それがDVDではなくマンガだという。7月に発売されたコミカライズ「ウルトラマン 完全版Ⅰ」(復刻ドットコム)。9月までに「完全版Ⅱ」も発売される予定で待ち遠しいファンも多いとのこと。

ルトラマン完全版I
Fujisan.co.jpより

 

作者は、なんと楳図かずおだ。「おろち」「恐怖」などのホラーマンガで知られる巨匠が、昔ウルトラマンを描いていたとは知らなかった。それを子どもが、読んでいる途中で「怖い」といって泣き出し拒絶した。わかる気がする。

 

そこで自分も読んでみたのだが、内容も画のタッチもエグくてテレビとは違った。

 

マンガだからこそ心に刺さる

テレビのウルトラマンしか知らなかったので比較してしまうけれど…いや比較というより別物なのである。テレビのほうがカッコいい、でもマンガのほうがストーリーも濃く、更に楳図ホラーワールドに惹き込まれるのでドキドキして心に刺さるのだ。

 

第1話は「バルタン星人の巻」

コミックの表紙に描かれているように奇怪なセミのバケモノ。洋服を着たバルタン星人の一コマは強烈だ。鳴き声はテレビの「フォッフォッフォッフォッ~!」じゃなくて「ケケケ!」「フハハハ!」と不気味に笑う。

 

人間の姿をした無数のバルタン星人が人に襲いかかるシーンは恐怖で、食料としてガソリンを飲み、人を狙う血走る眼、空を飛ぶ姿は羽を広げたセミそのもので気持ち悪い。

 

一方、ウルトラマンはカッコいいと思う。ただ、カラータイマーの音が「カキッ!カキッ!」と警告音みたいのが妙だった。

ある意味マンガ版を先に読んだ後にテレビで実写版を見ると物足りないかもしれないとさえ思った。

なぜ楳図かずおがウルトラマンを?


DIME(ダイム) 2014-09-16 発売号
Fujisan.co.jpより

 

マンガ復刻版には楳図氏のインタビューが載っている。

なぜ依頼があったのか?には、当時少女マンガ誌を経て少年マンガ誌に進出したばかりで、既にホラーマンガにも定評があったため「妖怪も怪獣も同じ」ということでの起用だったのでは? と話している。

 

マンガとテレビがかなり違う点について

 

最初に見せられたVTRにあるという。

編集者に連れられてTBSテレビの試写室でパイロット版というのか、短い映像を見せられたそう。それ以外は、ウルトラマンとバルタン星人の立ち姿の設定を渡されて、これでお願いします。と言われたそうだ。つまりバルタン星人の声など、自分なりの解釈で描いた作品だった。おそらくかなり苦労したと思う。

 

__ と、単純にマンガの紹介で終わってしまうコラムではつまらないので、なにか面白いことはないかといろいろ調べたら、ちょっと興味深い出来事にぶつかった。それは1966年(昭和41年)7月10日まで遡る。

 

マンガとテレビを同日リンクさせる“予定”だった

ウルトラマンの第1話テレビオンエアは1966年7月17日。

マンガ第1話が掲載された週刊少年マガジンの発売は同年7月10日、マンガが先行しているのである。マンガで読んだ世界観を一週間想像させて期待させて、テレビで実写版を大公開する戦術…と、誰しも思うだろう。でも予定は違ったのだ。

 

テレビ「ウルトラマン」第1話は本来7月10日放送予定だった。そう、マンガ新連載の発売日とテレビ新番組放送日を同日にしようとしていたのだ。なかなかニクイ戦略だ。

ところが!

撮影の進行が遅れ、それをカバーすべく予定を変更。

 

7月10日は「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」という公開収録番組を急遽放送することにする。なんと東京杉並公会堂で観客を集め、舞台に怪獣やウルトラマンが登場するという、デパートの屋上でやるような「ウルトラマンショー」を放送したのだ。しかも収録はオンエア前日の7月9日。シナリオは急遽作成、リハーサルはNG連発。不安なまま録画公開収録はスタートする。

 

1966年7月10日放送「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」

 

某動画サイトでチェックしてみた。

映像は白黒。チビッ子で満員の会場。舞台の幕が上がるとステージにモンスター博士という謎の人物が登場してウルトラQからウルトラマンに変わって来週から放送開始と説明、「前夜祭開幕~!」と宣言。

 

♪「き~たぞわれら~のウルトラマン」、OP曲を男性コーラス隊が生歌披露。

その後、ステージにはレッドキング、アントラー、バルタン星人などが出てきてステージ上を暴れまわる。出動要請を受けた科学特捜隊の隊員たちが客席の奥から登場、隊員と怪獣が戦うのである。そう、人と怪獣の身の丈が同じなのだ。いいのかそれで?!(笑)

 

いよいよウルトラマンが登場するのだが、

MC「みんなでウルトラマンを呼ぼう! せーの!」

 

チビッ子「ウルトラマ~ン!」

 

というお決まりの演出などなく、また特に派手な音楽も効果音の演出もなく、突然セット2階の扉が開き「誰?」って感じでウルトラマンが画面に登場するのだ!(笑) 

おそらくこの瞬間が、永きに渡り日本のスーパーヒーローに君臨する「ウルトラマン」のテレビファーストシーンだったに違いない。

会場のチビっ子達もあっけにとられた感じで盛り上がらなかった。そもそもその日に初めてマンガで姿が公になったのだし、実物を間近で見るのすら会場の観客が初めてなのだから、そうなっちゃいますよね?って感じだ。

 

リハーサルが固まってなかったせいか、演者がみんな同時にゴッチャゴチャ動いて戦うので見せ場も分からず。ウルトラマンは転けそうになるわ、ガラモンの頭が外れそうになって人の頭が見えるわ、舞台はバッタバタ。

 

これでは放送に耐えられないと思ったのか、突然画面は特撮映像に切り替わり、巨大なウルトラマンと怪獣ネロンガの闘いシーンに。スペシウム光線でネロンガを倒す。

 

今はウルトラマンがどんな作品か誰もが認識しているが、その日発売された楳図かずおのマンガを読んでいようがいまいが、世界観がムチャクチャでワケが分からなかったであろうと推測する。

 

映像が再び公開収録のステージに切り替わるとハヤタ隊員が登場、そして隊員全員が自己紹介。最後は客席にいた円谷社長が呼び込まれ、来週からの「ウルトラマン」をお楽しみに!ってな挨拶があって幕が降り番組は終了する。

 

放送直後には、次回予告として第1話「ウルトラ作戦第一号」の映像が流れる。

 

チビっ子諸君、ガッカリしなかったか?

特に、特撮はアニメと違って“実写”なのだから、“もしかしたらウルトラマンって本当にいる?!”という子どもの夢を壊さないようにするのが大切なんじゃないかと思う。ところがこの番組はその夢を本作前から覆し、「造り物だよ、ショーだよ」とひけらかした。僕が幼少期にコレを観たらかなりガッカリしたと思う。

 

なぜマンガの最初はバルタン星人?

テレビ第1話は「ウルトラ作戦第一号」、宇宙怪獣ベムラーを追って地球にやってきたウルトラマンがハヤタを死なせてしまい、その体を借りる形で地上に降りるという流れ。

 

実は第2話がバルタン星人の登場する「侵略者を撃て」だ。マンガではそんな序章部分を無死している。

 

しかし、敵キャラとしてトップクラスの人気となるバルタン星人をマンガで最初に描いたのは当たる予感があったのか?と感心する。

 

7月10日は「ウルトラマンの日」

出典:http://m-78.jp/710/

 

 

楳図かずおのマンガ「ウルトラマン」をきっかけに、昔を調べてみると面白かった。とっくに過ぎたが7月10日は「ウルトラマン誕生」のテレビオンエア日を記念して「ウルトラマンの日」に制定しているそうだ。

 

今年は50週年を記念して杉並公会堂でイベントが行われ大盛況だった。

 

ただ、その同じ日、マンガでもウルトラマンが初公開された事実も合わせて知ってほしいと思う。

 

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