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もっと増やしたい! ねこ先生が提案する「猫」と暮らせる賃貸住宅

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日本ペットフード協会の調査によれば、日本で飼育されている犬猫の数は約2000万頭にものぼる。しかし、『SUUMO賃貸』 で物件を探しても「ペット相談可」は1割もないというのが現状だ。なかでも実は「猫」がNGとされているところも多い。こんな状況を打開すべく、自ら大家となって「猫と幸せに暮らせる賃貸住宅」をつくり、現在もその拡充につとめている、“ねこ先生”こと株式会社クラシヲの杉浦雅弘さんにお話をうかがった。

誰もつくらないなら自分でやるしかない、自ら大家となって「猫共生アパート」をつくる

――杉浦さんは、なぜ「猫と幸せに暮らせる賃貸住宅」をつくったのですか?

私は27年間、不動産業に携わってきて、そのなかでも「賃貸管理業」が長く、多くの入居者・大家さんたちと接してきました。20数年前といいますと、ほとんどの賃貸物件は「ペットNG」です。しかし実際にはこっそり飼われる方も多くいました。犬を飼われる方は、鳴き声や散歩などで犬の存在を隠すのは難しく、近隣の方から連絡をいただくことが多かったのですが、逆に猫については、全然気づかれず、退去のときにはじめて分かるということもたびたびありました。

実際、何年も猫を飼っているのに周囲の方々に気づかれないということは、近隣には迷惑をかけていないのだし、飼ってもいいことにしたらどうか? なんて個人的には思っていたのですが、不動産業界や大家さんからは、猫というのは「爪とぎ」「におい」などの問題から、NGとされることがほとんどでした。

私は小さいころから実家で犬も猫も飼っていたので、どちらも大好きなのですが、特に猫に関しては、業界でタブー視され、飼いたい人が飼えない現実を目の当たりにしてきて、ずっと何とかしたいと思っていました。また、「飼いたい」というニーズが一定数あるということは、ビジネスとしても十分やっていけるだろうという目論見もありました。

大家さん方には折にふれて、「猫共生アパート」を建てたらどうかと提案していたのですが、実例もほとんどないなかで、快い返事はもらえませんでした。そこで、「もうこれは自分でやるしかない」と思いはじめたころ、たまたま築19年のアパート1棟が取り壊されるという情報を知り、自らその物件を購入・リフォームし、「猫専用共生型賃貸住宅」(商品ブランド名は”necoto”)の第1号をつくることにしたのです。勤めていた会社もやめて自分で会社を設立しました。今から3年前のことです。

【画像1】千葉県市川市の猫専用共生型賃貸住宅”necoto(ネコト)”の第1号。築19年のときに購入し、内装のみならず、外装や外構も一新した。築20年以上たつとは思えないきれいさ。12戸中9戸の方が猫を飼っている、20・30・40代の方がお住まいの1Kロフト付(画像提供/株式会社クラシヲ)

猫が住みやすい仕様にするだけでなく、トラブルを未然に防ぐルールづくりも重要

――”necoto”の特徴はどういった点ですか? 現在、何戸くらいの物件があるのですか?

猫共生アパートの企画を考えていた6年前には、世の中に参考になる情報があまりありませんでした。そこで、猫の特性について学び、自分なりにガイドラインをつくってきました。現在では以下の5つを基本仕様としています。また入居者の方には、「完全室内飼い」「不妊・去勢手術」を前提でお願いしています。

●猫専用共生型賃貸住宅“necoto”の5つの基本仕様

1.キャットウォーク:壁を補強して棚などを取り付け

2.トイレ置き場:猫専用トイレの場所をつくる

3.脱走防止対策:破れにくい網戸を採用、爪を立てても破れにくく、脱走防止として有用

4.傷防止床材:ざらつきがあってすべりにくく、かつ耐久性もある床材を採用

5.爪とぎ対応壁クロス:壁で爪とぎしても傷がつきにくいクロスを採用

【画像2】左からキャットウォーク、脱走防止対策、爪とぎ対応壁クロス(画像提供/株式会社クラシヲ)

いずれの仕様も、比較的安価に対応できるようにしています。あまり高額だと大家さんもしり込みしてしまい、こういった物件が増えていきません。大切なのは、猫の特性をよく考え、猫が暮らしやすいかどうかという視点で材料を選ぶことだと思います。また、ルールを定め入居者のみなさんに守ってもらうことも徹底しています。

【画像3】飼養ルールを文書にして定め、ルールを守ってもらうとともに、飼養する個体の登録手続きの書類、誓約書なども整備している。飼養規則には、例えば「廊下・エレベーターなどの共用部分に連れ出す際には必ず抱きかかえるかゲージ等に入れること」など、かなり具体的なルールが定められている(画像提供/株式会社クラシヲ)

現在、”necoto”は約50戸に増え、建築中のものも合わせると計130戸になります。最近は大手のハウスメーカーと組んで丸ごと一棟“necoto”仕様で新築で建てることも増えてきました。部屋の対応は1戸からでもできますが、やはりアパート全体が「猫専用」だと、より入居者の方に喜んでいただけます。

集合住宅でペットを飼っている方々は、ペットに関するクレームを言われることも多く、かなり気を使いながら、また肩身の狭い思いをして飼っている人も多くいます。アパート一棟が「猫専用」となると、入居者は基本的に猫が好きな人、しかもベテランもいれば、初めて飼うという方もいて、そんな人たちが交流することもできます。「猫」というコンセプト賃貸であり、コミュニティも育める物件になるのです。

「ペット可」ではなく「ペット共生」へ。いかに「歓迎」の気持ちをこめるか

――講演などで「ペット可」ではダメ! ということをおっしゃっていますが、「ペット可」と「ペット共生」にはどんな違いがあるのでしょうか? また「ペット共生」というのはどういうことなのでしょうか?

「ペット可」という賃貸物件は全体の1割にも満たないのですが、実はその1割未満の「ペット可」でさえも実態はさまざまです。犬はいいけど猫はダメというところ、空き室にするよりはいいからととりあえずペット可としているところ、飼育ルールが整備されていないところなど……。

一方、「ペット共生型」物件とは、ペットを「許可」するというスタンスではなく、ペットを「歓迎」する気持ちがあり、ペットの暮らしやすさを考えた仕様になっていることや、みんなが気持ちよく暮らせるようルールが整えられているなど、人もペットも快適に暮らせる住まいのことをさす、と私は考えています。

残念ながら、現状では、賃貸住宅において、ペットを飼育したい人が心から住みやすいと思える物件は本当に少ないでしょう。

【画像4】杉浦さんが考える「ペット可」物件と「ペット共生型」物件の違い(資料提供/株式会社クラシヲ)

飼いたい人のニーズにまだ応えきれていないほど、日本の賃貸住宅の「ペット共生型」物件は少ない。その中でも、犬と猫どちらも約1000万頭いる割に、賃貸住宅ではずっと猫が虐げられてきました。いまこういった取り組みを始めて、少しずつ応援してくれる人たちも増えてきています。これからも情報発信やコンサルティングとして活動を続けていきたいと思っています。

そう、ねこ先生は語ってくれました。

――取材を終えて

SUUMOジャーナルでは、昨年秋に「猫と暮らす住まいの理想と現実」という5回の連載で、いかに不動産業界の中で猫が誤解され、嫌われてきたかという内容を取り上げ、多くの反響をいただきました。また、「猫付きシェアハウス」「猫付きシェアオフィス」「猫専用アパート」など、新しい猫歓迎の賃貸物件ができるたびに取材をし情報発信してきました。しかし、言い換えれば、取材する価値があるくらい、猫歓迎の賃貸物件はまだまだ少ないということです。杉浦さんは、猫と暮らす賃貸需要はブームやトレンドではなく、猫がこの世にいる限り続くキラーコンセプトになりうる、といいます。

もちろん犬専用も必要でしょうし、動物が苦手という方のための賃貸物件があってもいいと思います。さまざまな人が住む賃貸の集合住宅においては、ペットについての考え方・スタンスは、今後より明確にしたほうが、入居者みんなにとって幸せになるでしょう。●取材協力

・株式会社クラシヲ
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/09/117854_main.jpg
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