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食べログ「3.0リセット」騒動の何が問題なのか

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 評価点を巡る「食べログ」騒動について、食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が振り返る

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 ソーシャルメディアで喧伝される論の真贋の判断は難しい。真偽の定かでない話ですぐ揺れる。「賛成」「反対」で意見が乱暴に集約されがちな築地市場の移転(延期)問題もそうだし、先日の「食べログ」の「評価リセット問題」もそうだ。

 ことの発端は、9月6日の夕方、とある飲食店のオーナーが〈全店の食べログスコアがいきなり3.0にリセット。そこに担当営業から連絡が来て「食べログのネット予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とします」と。〉など評価が恣意的に操作されているのではないかと疑う投稿をTwitterに書き込んだこと。その他の飲食店関係者からも同様の書き込みがなされ、翌9月7日、食べログを運営するカカクコムの株価が一時10%以上、下落する事態となった。

 実際、件の書き込みがなされた段階でいくつかの店の評価点を見たところ、確かにこの日、スコアは動いていた。ざっくり分類すると客単価が万単位という一部の高級店(かつ高評価店)の評価が上がり、客単価数千円という大衆的な業態の店舗では下がる傾向が伺えた。3点台後半のスコアから0.5近くポイントを落とした飲食店もあり、個人的には少し極端な調整にも思えるほど一部の店のスコアが動いている。

「3.0リセット」問題についても、3.2以下の書き込み数の少ない店舗が3.0になるなどのケースは確かにあったようで、そのタイミングで「弊社の有料サービスを使わないと、不利になる」というような営業電話がかかってきたら怒りを覚えるのも無理からぬ話だ。

 もっとも詳細は公開されていないものの、そもそも食べログの評価点は「影響力の大きいレビュアー」×「書き込み件数」をベースとして算出されている。今回のアルゴリズム変更は上記の評価ベースに加えて、業態等に応じた評価点の見直しがあり、結果として大きくスコアが動いたという程度の説明はできたはずだ。

 だが今回、カカクコムはそうした説明をしなかった。直後のプレスリリースでは、〈今後、ネット予約可能なお店は、検索結果の広告枠において優先表示される仕組みに10月から変更予定です。現在エリア限定で店舗様へのご案内を行っておりますが、順次、全国への展開を図って参ります〉という新たな広告商品の告知を行い、さらには太字&下線つきで〈なお、自然検索で表示される点数及びランキングにおきましては、オンライン予約機能の利用是非に一切関係なく、これまでと同様ユーザーの評価を基礎に算出、表示をしております。〉とだけ記載した。

 早速、Twitterでは〈プレスリリースなのに、太字や下線〉というツッコミが入っていたが、それよりも決定的にマズイのが「検索結果の広告枠」である。9月8日付「ITmediaニュース」は以下のように報じている。

〈同社は「標準」の検索結果について「広告枠」と説明しているが、「標準」の検索結果画面には「広告」などとは書かれていない。同社に対し、「標準検索は広告だと分かるような表示を検討しないのか」とたずねたところ、「今すぐに変更する予定はないが、表記などについて検討していく」と答えた〉

 だが、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)はネイティブアドについて、「広告枠内に[広告]、[PR]、[AD] 等の表記を必ず⾏う」と明確なガイドラインを設けている。

「ネイティブアド」とは「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」を指す。食べログの検索結果に「広告枠」が含まれるなら、まさしくそれはネイティブアドであり、そこには当然のように[広告]と明記する必要があるはずだ。

 このガイドラインが策定されたのは2015年の3月。いわゆる「ステマ」騒動などもあり、前年、2014年の8月に発足した「ネイティブアド研究会」が会を重ね、半年以上かけて策定されたものだ。現在のWebにおける記事広告やPR記事は、ほぼこのガイドラインに沿った形で運用されている。

 そういった事実をネット界隈で、「広告」や「PR」絡みの業務に携わる人が知らないわけがない。「インターネットメディア事業」が基幹事業である以上、「広告枠」に「広告」タグがないのはユーザーに対する背信行為であり、「ランキングを操作している」という印象を持たれても抗弁しづらい仕組みとなってしまっている。

「食べログ」「ぐるなび」「Retty」「ホットペッパー」などの飲食店検索サービスやアプリには、事業者ごとに特徴があるが、そもそもグルメ系の口コミサイトといえば、2000年代前半には「東京グルメ」というWebサービスがあった。少数精鋭版食べログといった趣で、情報の信頼度は高かったが、「食べログ」に飲み込まれるようにそのポジションを失い、事業譲渡を繰り返すことになってしまう。

 栄枯盛衰は世の習い。生き残るサービスに共通するのは、「ユーザーのニーズをすくい取っている」こと。ブレることなく、提供するサービスを最適化していく。その姿勢が簡単そうでありながら、実はとても難しいことは飲食店の店主もよくご存じのはずだ。ベンチマークは意外に身近なところにあったりするのかもしれない。

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