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連載旅小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第6話/恋に落ちたのは・・・

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私はニューヨークなんか、興味がなかった。

自ら選んだ旅ではなく、友人の鈴子に誘われて来たニューヨーク。でも、ここで私の人生は動き始めた。実生活が、小説よりも非日常の街。なりたい自分になれる街。人が出会い、そしてまた別れていく街。

日本へ帰国まで、あと1週間。まだ帰りたくない気持ちになっていたの。

私の名前は、白雪ひとみ(しらゆきひとみ)。通称「ヒメ」。

もう一度会いたい


(C) Hideyuki Tatebayashi

ニューヨークの地下鉄では色々なことが起こった。「ココ二、スワリマセンカ?」と私に声をかけた日系2世の彼は、交通事故で亡くなった私の彼にそっくりだった。

あれは、非現実的なこの街が見せた、幻だったのかしら。それでも、もういちど会いたい。

私からデートに誘ってみた


(C) Hideyuki Tatebayashi

ニューヨークは広いようでいて狭いのかもしれない。その彼と、ソーホーでばったり巡り合うなんて。

「ハーイ、マタアイマシタネ」

そう、あれから私の目はどこへ行っても彼をずっと探していた。その思いが通じたかのよう。この偶然を逃す手はない。よかったら、お茶でも飲みませんか? と誘ったのは、私の方だった。自分から男性を誘うなんて、私自身がビックリ。

「イイデスネ。チカクニ、スキナレストランガアリマス」


(C) Hideyuki Tatebayashi

そして連れて来てもらったのが、グリニッジビレッジにある”Fish”というレストラン。

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(C) Hideyuki Tatebayashi

カジュアルな、シーフードのレストラン。肩の凝らないお店。ワイン1杯+牡蠣またはクラム(はまぐり)6個で10ドルのセットがウリと聞いて、私も彼と同じものをオーダー。

シーフードもワインも大好きだけど、今は食べ物より、彼が気になる。だって、彼は似ているの。私の交通事故で亡くなった彼に。

顔がそっくりというわけではない。背格好? 雰囲気? 声ではないと思う。面影がなんとなく似ている。

私の目は彼に釘付けになっていた。

ニューヨークの書斎 ニューヨーク公共図書館


(C) Hideyuki Tatebayashi

ニューヨークに来てから、定期的に通っている場所は、ニューヨーク公共図書館(New York Public Library)。週に3回は来ているかしら。

ここは、フリーWiFiでパスワードもいらないし、クーラーが効いていて涼しいし、ニューヨークの書斎というところね。この図書館は建築物としても美しいし、気持ちが落ち着く。日本から持ってきたノートブックを開いていると、アメリカの大学生になったような気分。日本人の大学生が、ここへ通うためにアメリカの大学生になりたいと言うのを聞いたことがある。

ノートブックの画面を眺めながら考えていたのは、昨日のこと。

「ライゲツ、ニホンへイキマス。トウキョウデアイマショウ」

日本でも彼に会えるなんて。休暇で母方の祖母の家を尋ねるらしいの。何たる偶然。何たるラッキー。私は、彼自身に惹かれているのかしら? それとも、死んだ彼に似ていることに惹かれているのかしら?

ぼんやりと思いを巡らせながら、ノートブックをたたんで読書室を出ると、「白雪さん」と日本語で声をかけられた。ニューヨークでは、鈴子夫婦以外には、日本人の知り合いはいないのに?

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恋をするほど美しい。休憩にもぴったりな「NYパブリック・ライブラリー」
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思いがけない人


(C) Hideyuki Tatebayashi

なんとその人は、希望退職した会社で取引先だった、営業担当の吉田氏。そもそも彼の会社がライバル会社と吸収合併してしまったので、私の所属部署がなくなってしまったの。彼とは5年以上も仕事での付き合いがあった。会社の急なバタバタでご挨拶も出来なかったんだっけ。それにしても、なんでここに?

「白雪さんが会社を辞められたと伺って、驚いて」

まさか、私が会社を辞めたから、ニューヨークまで追っかけてきたというの? それにしても、どうして私の居所がわかったのかしら?

「実は山口さん(鈴子の配偶者)は大学の先輩でして、仕事の話をしていて偶然白雪さんとお知り合いだと知っていたのです。今回会社を退職されたと聞いて、山口先輩に連絡を取りました。そうしたら、ニューヨークにいると伺って、急遽夏休みを取り渡米したのです。白雪さんの居場所は、奥様の鈴子さんがご存じでした」

えーっ、そうなの?

あなたを見ていた


(C) Hideyuki Tatebayashi

図書館の外に出ると、もう日は暮れていた。吉田氏と私は肩を並べて歩き出したの。

「担当が白雪さんで、A社に伺うのが楽しみでした。発注はいつも間違いないし、目立たないけど男性社員のサポートも行き届いていた。部署では女性社員が白雪さんおひとりで、女性の派遣社員をよくまとめていらした。私の会社にも女性派遣社員が多かったので、まとめるのが難しいのは知っているのです」

吉田氏がそんなところまで見ていたなんて、ビックリだわ。

「あなたを見ていました。仕事ぶりを。そして人柄を。口に出せないまま、いきなり会社の組織編成があって状況が変わってしまった。でも、白雪さんとそんな別れ方をするのは嫌だったのです」

私に好意を抱いているとは知らなかったわ。

「白雪さんは何かを胸に秘めていらして、でも胸の奥にしまったまま、口には出さない人だろうと。それが何かも気になっていました。私が力になれるかどうか」

無口だった吉田氏が心情を吐露するのに、私は驚いていた。そして、誰かがちゃんと私を見ていて、理解してくれていたことが嬉しかった。

「私も実は会社を辞めました。そして兼ねてから継ぐ予定の家業を引き継ぐことになったのです。その会社で、白雪さんに手助けして欲しくて、お願いにあがったのです」

私が吉田氏の会社で働く?

「考えてみてくれませんか」

人生は小説よりも奇なり


(C) Hideyuki Tatebayashi

鈴子と私は、トップオブザロック(TOP OF THE ROCK)で、夕陽が落ちるのを眺めていた。

「へええ、ヒメってば、モテモテじゃないの」
鈴子は他人事だと思って、面白がっている。

「ヒメの人生が動き出したわね。ニューヨークに来て良かったでしょ?」
確かにね。ニューヨークで起こった出来事は、まるで小説みたいだった。

「あと2日で日本へ帰るのね。これからどうするつもり? 日系2世の彼と吉田氏は?」
それは心の動く方に、考えよう。

この夜景を見に、また帰ってくる


(C) Hideyuki Tatebayashi

陽が沈み、いよいよショーの幕開けだ。マンハッタンの夜景は、壮絶なまでの光の渦。東京で見る夜景とは違う、多分どこの国とも違うこの夜景。ニューヨークに集まった人々のエネルギーが昇華して、この街を輝かせているかのよう。

恋愛も、仕事も、まだいろいろ可能性がありそう。だって、まだ32歳だもの。

私はニューヨークなんか、興味がなかった。でも、私はニューヨークと恋に落ちたの。きっとまた、この街に帰ってくるだろう。

連載旅小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」は今回が最終回となります。ご愛読頂き、御礼申し上げます。

[All photos by Hideyuki Tatebayashi]

※無断で画像を転載・使用することを固くお断りします。Do not use images without permission.

(注)この物語は、フィクションです。

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